【下高井戸】

甲州街道沿いに広がる庶民的な街

下高井戸

下高井戸

SHIMOTAKAIDO

江戸時代に建立された永昌寺(えいしょうじ)の庚申塔と地蔵塔

杉並区の南側に位置し、「しもたか」の愛称で呼ばれる下高井戸。駅は世田谷区にあり、新宿に約10分でアクセスできる京王線と、下高井戸-三軒茶屋間を走る2両編成の路面電車・東急世田谷線が乗り入れている。また、南北バス「すぎ丸」(さくら路線)が下高井戸-浜田山間を走っており、区内の南北移動に利用できる。
駅周辺には、住民だけではなく、近隣の高校や大学に通う学生でにぎわう商店街が広がる。商店街の周囲は甲州街道まで住宅地が広がり、その北側には緑地や公園、寺院が集まる静かな通りがある。エリアによって特色が感じられる街である。

玉川上水永泉寺緑地

自然豊かな「玉川上水永泉寺緑地」。南側には甲州街道と首都高速道路が通る

寺が並ぶ通りには上部が首都高速道路の永福パーキングエリアとなっている建物もある

歴史が感じられる落ち着いた通り

甲州街道から一本北にある約300mの静かな通りには、梵鐘(ぼんしょう)が目を引く永昌寺をはじめ、栖岸院、法照寺、浄見寺、善照寺、託法寺の計6つの寺が並んでいる。また、通りを隔て、永昌寺の西には龍泉寺、託法寺の東には真教寺、築地本願寺和田堀廟所(びょうしょ)が続く。その一部は、1923(大正12)年の関東大震災後に移転してきた寺である。江戸時代に建立された永昌寺の庚申塔と地蔵塔、鎌倉時代後期作の栖岸院の聖観世音菩薩(ぼさつ 杉並区指定文化財)など、見どころも多く、歴史に思いを馳(は)せながら散策するのもおすすめだ。

寺が連なる通りと甲州街道の間には「玉川上水永泉寺緑地」がある。玉川上水の暗渠(あんきょ)の上に作られた公園で、空を覆うほど豊かに木々が茂り、隣に首都高速道路が走っているとは思えないほど落ち着いた憩いの場となっている。

寺が立ち並ぶ落ち着いた通り

ビーチバレーができる永福体育館

神田川に程近い住宅地に、都内でも珍しい屋外ビーチコートを有する永福体育館がある。コートの砂は、風が吹いても飛散しにくいオーストラリアから輸入したホワイトサンド。その他、多様なスポーツに対応できる体育館や小体育室、トレーニングルームを完備。スポーツ大会をはじめ、親子で楽しめる教室やイベントなどを開催している。

照明設備もあるホワイトサンドの屋外ビーチコート

地域密着型の商店街がイベントを盛り上げる

例年3月に「しもたか大さくら祭り」、8月に「しもたかサマーフェスティバル」、10月に「しもたか音楽祭」、12月に「箱根駅伝順位当てクイズ」と、商店街主催のイベントが年4回行われる。以前は通りを利用して阿波おどりが開催されていたが、現在は駅の駐車場で盆踊りや縁日が開かれる「しもたかサマーフェスティバル」が下高井戸の夏の風物詩となっている。
9月には神輿(みこし)や山車が練り歩く菅原神社の例大祭も開催される。

春の恒例イベント「しもたか大さくら祭り」(写真提供:下高井戸商店街)

1981(昭和56)年8月の阿波おどりの様子(写真提供:伊藤昭久さん)

駅を中心に広がる下高井戸商店街

駅を中心とした路地一帯に、個人商店からチェーン店まで多くの店が軒を連ねる。下高井戸商店街振興組合によると、関東大震災を機に下高井戸に多くの人が移り住み、駅前に生鮮品の市場ができたことが始まりだそうだ。1956(昭和31)年には商店街の象徴ともいえる下高井戸駅前市場が建設された。現在では、杉並区と世田谷区が一体となり、区の垣根を超えてにぎわっている。
「商店街の駅」こと「しもたかステーション」では、常駐するスタッフが店の紹介や荷物の預かり等、快適に買い物ができるようサポートしてくれる。買い物途中の休憩所として気軽に立ち寄れる場所だ。

北口れんが通り

駅から北側に延びる「北口れんが通り」

【豆知識】

「下高井戸」駅ではない時代が6年あった

1913(大正2)年4月に開業した京王線下高井戸駅は、1937(昭和12)年、日本大学予科文科世田谷校舎(現日本大学文理学部)ができた翌年3月に「日大前」に改称された。しかし、1944(昭和19)年6月、再び「下高井戸」に戻る。京王電鉄によると、「東急世田谷線と京王線の2路線の駅が合併したことにより、東急世田谷線の駅名“下高井戸”に合わせて戻されたのではないか」といわれている。

DATA

下高井戸・年齢別人口

年齢別人口

下高井戸・産業の事業所数

産業の事業所数

  • 取材:わいじ
  • 撮影:わいじ、丸川英明
  • 掲載日:2021年06月00日