
ミントグリーンが目を引く、かわいらしい外観
新高円寺と東高円寺の中ほど、杉並区梅里の住宅街にある「和菓子 わび」は、店主のわびさんが一人で製造から販売までを担う小さな和菓子店だ。
2025(令和7)年にリニューアルした店舗の外観は、まるで洋菓子店のよう。「いかにも”和菓子店”という趣にはしたくなくて…。コージーコーナーさんや不二家さんのように、誰でも入りやすい店を目指しました」とわびさんは話す。
徒歩や自転車で訪れた人たちが、ショーケースに並ぶ8種類ほどの「今日のお菓子」を眺め、和菓子を買わない日でもわびさんに声をかけていく。イートインスペースでは、小さなベンチを譲り合って使う姿も見られる。そんな光景から、地域で愛されている店であることが伝わってくる。
わびさんは高校生のときに、スイスへ1年間留学した。現地の友人に日本の菓子を振る舞おうとしたものの、「みたらし団子のタレがうまく作れなかったんですよ。私、日本人なのに日本のお菓子作れないんだって思って。クッキーやケーキはどこの国にもあるけど、和菓子は日本独自のもの。和菓子が作れれば、それを売ってきっとどこでも生きていける、じゃあ和菓子職人になるー!と思いました」と振り返る。
大学卒業後は、練馬の和菓子店で7年ほど修業し、どら焼きやわらび餅などを作る技術を習得。その後も千葉で上生菓子、浅草で干菓子(ひがし)づくりを学んだ。
2019(令和元)年に独立し、家族が梅里に所有していた物件で店を始めた。「いろいろな和菓子を学んできたので、こういうものが欲しいというリクエストには可能な限り応えます。製造から販売まで一人でやっているからこその強みですね」
「わび」には親子連れの来店も多い。店内には、子供たちが好きそうなわらび餅や見た目もかわいい和菓子が、手頃な価格で並んでいる。「ちびっこたちがおやつに食べたいときに、親が買っていいよと言える値段にしています。気軽にちょこちょこ買えないと、和菓子文化は廃れてしまう」
また、地域からの依頼で、上生菓子を作る子供向けワークショップの講師を務めることもある。「和菓子を知っていると、子供たちも旬や季節の行事に自然と触れられるんです。5月なら柏餅やバラの上生菓子があるんだよって。さらに、自分で作ってみる機会があると、ますます親しみを持ってもらえると考えています」
近年は、11月に杉並区立桃井原っぱ公園で開催される「すぎなみフェスタ」内の「すぎなみパン祭り・スイーツフェア」にも出店している。
「店として“これがおすすめ”という商品はありません。それはお客さんが決めてくれればいいことだと思っています。材料にはこだわりがありますが、おうちで作ろうと思えば作れるものばかりです」とわびさん。実直に昔ながらの製法で作っているという。
定番のわらび餅や懐かしさを感じるみたらし団子、シンプルな味わいの季節の上生菓子のほか、夏にはかき氷も登場する。手作りの抹茶シロップはほろ苦さがしっかり残り、和菓子にも使われるあんのトッピングは粒あんとこしあんから選べる。自家製のいちごやレモンソースがたっぷりかかった「本気のかき氷」を毎年楽しみにしている人も多い。季節限定のひなあられやお月見団子なども人気商品だ。