杉並の震災対策

進む首都直下地震への対策

2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災は、8年が過ぎた今も記憶に残る大災害だ。その後も、2016(平成28)年4月の熊本地震や、2018(平成30)年6月の大阪府北部を震源とした地震など、さまざまな震災が日本各地を襲った。いつ起こるか予測できない地震に対し、日頃の備えが重要である。今後30年以内に約70%の高い確率で発生すると予測される首都直下地震対策などについて、危機管理室防災課に話を伺った。

想定される杉並の地震被害

「東京都は、東日本大震災の翌年の2012(平成24)年に、『首都直下地震等による東京の被害想定報告書』を発行しました。杉並区も他の自治体に先駆けて杉並区版の地震被害想定を実施し、2017(平成29)年に、地盤データなどを基に震度予測と建物被害のシミュレーション結果をまとめ、翌年には避難者やライフライン被害などのシミュレーション結果を発表し、印刷物として『地震被害シミュレーション』を発行しました。各データは、起こりうる首都直下地震の中で最も区への被害が大きいとされる東京湾北部地震を想定しています。地震規模はマグニチュード7.3、区内の震度は6弱~6強と考えられます」と防災課は話す。
『地震被害シミュレーション 結果報告概要版』にある「首都直下地震震度予測図」を見ると、区の東側が震度6強の強い揺れと表示されている。これは、想定震源地である東京湾北部に近いことなどが原因だそうだ。一定の条件の下での具体的な被害としては、区内の建物のうち5棟に1棟が焼失、建物の倒壊や火災による死者が541人、区の東側で多くの避難者が出ることが予測されている。
また、2018(平成30)年発行の『地震被害シミュレーション 結果報告概要版(避難者予測・ライフライン被害編)』では、「停電率」「ガス供給停止率」「断水率」など、生活に必要なライフラインへの影響を地図上で見ることができる。

▼関連情報
地震被害シミュレーション(地震被害想定)(外部リンク)

『地震被害シミュレーション』。左から『結果報告概要版』『結果報告概要版(避難者予測・ライフライン被害編)』。いずれも、区役所・区民事務所などで無料で入手できる

『地震被害シミュレーション』。左から『結果報告概要版』『結果報告概要版(避難者予測・ライフライン被害編)』。いずれも、区役所・区民事務所などで無料で入手できる

『地震被害シミュレーション 結果報告概要版』に掲載されている「首都直下地震震度予測図」

『地震被害シミュレーション 結果報告概要版』に掲載されている「首都直下地震震度予測図」

電気火災を防ぐ、感震ブレーカー

地震が原因で起こる二次災害の一つに火災がある。防災課は、「阪神・淡路大震災や東日本大震災でも、火災は地震発生直後にもありましたが、一度停電になった後、電気の送電が復旧した時に起こる通電火災も多く発生しました。区や都はその減災対策として、建物の耐震・不燃化や、細い道路(狭あい道路)の拡幅などに取り組んでいますが、整備に時間がかかります。そこで、区では2016(平成28)年度から各家庭に感震ブレーカーの設置をお願いしています」と話す。
感震ブレーカーは、家庭のブレーカー(分電盤)に取り付ける装置で、震度5強~6弱以上の地震を感知すると自動的にブレーカーを落とし、電気の供給を遮断する。例えば、地震発生時に電気ストーブなど火災の原因になる器具を使っていた場合、送電が止まることで自動的に電源が切れる。また、地震で家具などが転倒し、電気コードや電気器具が破損した場合にも、停電の復旧時にコードがショートして火災が起こることも防げる。「地震は必ずしも自宅にいる時に発生するとは限りません。また、震災後に避難し、自宅を留守にするケースも考えられます。感震ブレーカーを設置していれば、自宅にいなくても出火が防げますので、ぜひ設置を検討していただきたいです。地域で設置してもらえると近隣からの延焼も防ぐことができ、有効です」
区では2020(令和2)年3月31日(予定)まで、延焼被害の拡大が特に懸念される地域や、高齢者のみの家庭などに対し、感震ブレーカーの設置支援を行っている。

▼関連情報
感震ブレーカー設置支援事業(31年4月1日)(外部リンク)

簡易型感震ブレーカー。内部にある銀色の玉が地震の揺れを感知して、ブレーカーを落とす

簡易型感震ブレーカー。内部にある銀色の玉が地震の揺れを感知して、ブレーカーを落とす

感震ブレーカー設置支援事業のパンフレット。中身を見ると対象地域がわかる

感震ブレーカー設置支援事業のパンフレット。中身を見ると対象地域がわかる

在宅避難のすすめ

シミュレーションから想定される区内の避難者数は10万人を超える。区立小中学校などに開設される震災救援所などで、この人数を収容する備えはあるそうだ。「区民の皆さんには在宅避難のための準備も進めていただければと思います。避難所生活は決して快適なものではなく、プライバシーの保護が行き届かない部分も出てくると思われます。在宅避難でも震災救援所で食料や生活物資のほか、被災者支援に関する情報などを受けられますので、住み慣れた環境で避難生活を送れるような備えをお願いしたいです」
もしもの場合に在宅避難ができるように、感震ブレーカーの設置、家の耐震・耐火化、家具の転倒や物の落下防止、食料や生活物資の備蓄など、できるところから準備をしておきたい。

▼関連情報
家庭での震災対策(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 特集>災害・防災>入手したい杉並の防災情報

『地震被害シミュレーション 結果報告概要版(避難者予測・ライフライン被害編)』に掲載されている「避難者予測図」。冬の18時に風速8m/秒の場合、約10万人の避難者が出ると予測

『地震被害シミュレーション 結果報告概要版(避難者予測・ライフライン被害編)』に掲載されている「避難者予測図」。冬の18時に風速8m/秒の場合、約10万人の避難者が出ると予測

区で備蓄している食品の一つ。お湯を用意すれば、食器不要で温かい味噌汁が飲める

区で備蓄している食品の一つ。お湯を用意すれば、食器不要で温かい味噌汁が飲める

DATA

  • 取材:雪ノ上ケイ子
  • 撮影:雪ノ上ケイ子
  • 掲載日:2019年10月21日