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1.杉並アニメーションミュージアムの誕生

東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム

東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム

アニメのまち杉並

いまや日本の国民的文化であり、海外からも注目されるアニメ。その歴史は古く、東京・浅草で日本人による初のアニメ作品が発表されてから、2017(平成29)年で100周年を迎えた。これまで1万タイトル以上の作品が誕生しているが、杉並で「オバケのQ太郎」「巨人の星」「アタックNo.1」「ルパン三世」「エースをねらえ!」「機動戦士ガンダム」といったアニメ史に残る名作が作られていたことをご存じだろうか。
一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート2016」によると、2016(平成28)年現在、日本のアニメ制作会社は全国に622社あり、そのうち杉並区内には138社と全国で一番多く集積している。いわばアニメは杉並の地場産業なのだ。
杉並に初めてアニメ制作会社ができたのは1964(昭和39)年。以来、多くの人がアニメ制作に携わってきた。関係者へのインタビューを通し、杉並のアニメの歴史をひもといていく。

日本のアニメを知るならココ!

荻窪駅北口からバスと徒歩で約10分、荻窪八幡神社向かいの杉並会館内に日本で唯一、日本のアニメ全般を紹介する施設杉並アニメーションミュージアム(※1)がある。建物の入り口にはドラえもん、クレヨンしんちゃん、ガンダム、ガッチャマンなど、有名アニメキャラクターのレリーフが飾られ、来館者を迎えてくれる。
3階受付でひときわ目を引くのは、ミュージアム名物の「サイン柱」だ。来館したアニメ監督やアニメーター(※2)、漫画家のサインがびっしり書かれており、アニメファンならずとも必見だ。
見どころの一つ「日本のアニメの歴史」コーナーでは、日本のアニメが始まってから現在までを年表や画像・映像でわかりやすく紹介している。年表は年を重ねるごとにトピックが増えており、日本のアニメ市場が年々大きくなっていったことがよくわかる。どの年代の人も自分が子供の頃に見ていたアニメのタイトルを見つけ、懐かしい気持ちになるに違いない。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並の景観を彩る建築物>杉並会館

杉並アニメーションミュージアムの鈴木名誉館長(右)と事務局の藤田輝さん

杉並アニメーションミュージアムの鈴木名誉館長(右)と事務局の藤田輝さん

「日本のアニメの歴史」コーナー

「日本のアニメの歴史」コーナー

杉並アニメーションミュージアムから世界へアピール

1999(平成11)年、「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」が日本のアニメの全米興行収入1位を獲得。また、2001(平成13)年には宮崎駿(はやお)監督の「千と千尋の神隠し」がベルリン国際映画祭の最高賞である金熊賞を受賞するなど、海外で日本のアニメが評価されはじめ、国内でもアニメがサブカルチャーからメインカルチャーとして認められるようになった。これを受け、杉並区では区内にアニメ制作会社が多いことに注目。2005(平成17)年3月、日本のアニメのアーカイブ施設として、杉並をはじめ日本のアニメ産業全体の持続的発展を目指し、杉並アニメーションミュージアムが開館した。制作会社やキャラクターにとらわれない展示が可能となっているのは、日本動画協会が運営に関わっていることが大きい。
館長の鈴木伸一さん(※3)は同ミュージアムを通して、区をアニメでもっと盛り上げていきたいという。「作家やアニメ会社ごとのミュージアムは他にもありますが、行政機関がアニメを支援している良い例となっています。今後、国が大きなアニメ施設をつくるとしても、最初にできたのは杉並だと誇れる場所です。これからもアニメは日本の文化として発展していってもらいたいし、日本の頑張りを世界にアピールしたい。業界のためにも成功させたいですね。」

「もっと杉並アニメーションミュージアムと区民の皆さんとのつながりを深めていきたい」と語る鈴木名誉館長

「もっと杉並アニメーションミュージアムと区民の皆さんとのつながりを深めていきたい」と語る鈴木名誉館長

監督、作画監督、美術監督の作業机を再現した貴重なコーナー

監督、作画監督、美術監督の作業机を再現した貴重なコーナー

アニメ制作の大変さを実感するワークショップ

杉並アニメーションミュージアムでは歴史を学ぶだけでなく、アニメの制作工程の体験が可能だ。デジタルワークショップでは、パソコンで色塗りや編集などアニメのデジタル制作を、アフレコ(※4)体験コーナーでは声優に挑戦できる。中でも人気なのがパラパラアニメのワークショップ(※5)。描いた絵をi-padで撮影し、動画にして見ることができる。「20枚ほどの絵を一生懸命描くことによって、絵が動いたときのうれしさだけでなく、20枚も描いたのに2秒足らずの動きにしかならない、アニメ制作の大変さも実感してもらいたいと思っています。」と言うのは、事務局の藤田輝さん。「日本のアニメを紹介するといっても、多様な視点があるので全部を網羅するのは難しい。歴史やクリエイター、制作技術などの切り口でも語れると思いますが、ここでは、作品が完成するまでにどれだけの工程を経ているのかを知ってもらえたらと思います。」
さまざまな形でアニメを楽しめる東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがだろう。

どんな風に動いて見えるのか楽しみなパラパラアニメのワークショップ(写真提供:東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム)

どんな風に動いて見えるのか楽しみなパラパラアニメのワークショップ(写真提供:東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム)

書籍などの資料やクリエイターのインタビュー映像を閲覧できる「アニメライブラリー」※2021(令和3)年12月に内装リフォーム

書籍などの資料やクリエイターのインタビュー映像を閲覧できる「アニメライブラリー」※2021(令和3)年12月に内装リフォーム

東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム

・住所:杉並区上荻3-29-5 杉並会館3F
・TEL:03-3396-1510
・開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
・休館:月曜(祝日の場合は翌日休館)、12月28日-1月4日
・公式ホームページ:https://sam.or.jp/
・公式Twitter:https://twitter.com/suginami_sam

※本記事に登場する作品等著作物の著作権は、それぞれの制作会社に帰属しています。
※1 ネーミングライツの導入により、2018(平成30)年9月より、名称が「東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム」となった
※2 アニメーター:アニメーションになる絵を作成する「作画」作業のうち、「原画」と「動画」を担当するスタッフのこと。例えば1カットに10枚の絵が必要とされる場合、動きの基本となる数枚の絵が「原画」、原画と原画の間を埋める絵を「動画」という
※3 2021(令和3)年4月1日付で鈴木伸一さんは名誉館長に、新館長には吉田力雄さんが就任しました
※4 アフレコ:after recordingの略。映画やテレビドラマで、画面だけ先に撮影し、後から声や音を録音すること
※5 パラパラアニメのワークショップ:開館日の10:00~17:00の間、いつでも参加可能(他のイベント開催時に休止あり。要確認)。その他、「動画トレース体験」や「ねんどアニメワークショップ」など、特別ワークショップも随時開催

東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム外観

東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム外観

DATA

  • 最寄駅: 荻窪(JR中央線/総武線) 
  • 出典・参考文献:

    「アニメ産業レポート2016」一般社団法人日本動画協会
    「杉並アニメ物語」大地丙太郎監修(広報すぎなみ)
    『日本のアニメ全史』山口康男編著(TEN-BOOKS)
    『日本アニメーションの力 85年の歴史を貫く2つの軸』津堅信之(NTT出版)
    『アニメーション学入門』津堅信之(平凡社新書)

    協力:東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム

  • 取材:坂田、みやうちえいこ
  • 撮影:写影堂
    写真提供:東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム
  • 掲載日:2016年12月14日
  • 情報更新日:2024年04月03日