街の磨き方・生かし方

杉並といえばラーメンでしょ

(松原)荻窪は、やはりラーメンの歴史がそこにあって一つの資産と言えるでしょう。1931(昭和6)年に「春木家本店」が開業して荻窪のラーメン文化が始まるのですが、戦後、その親戚である「春木屋」と人気を二分したのが「丸福」です。実は私、「丸福」について親戚である阿佐谷の喫茶店主から聞き取りをしていて、現存する荻窪・西荻窪だけでなく、日大二高通りや阿佐谷にも「丸福」があったことなど、杉並のラーメン史上、非常に興味深い事実を知りました。いずれ発表しようかと思いますので、楽しみにしていてください。


春木家本店。戦前から続く伝統の味を今も提供している

(中島)東京ラーメンのルーツが荻窪にあると知ったのは、上京してからです。学生の頃によく食べていたのは、こってり味の京都ラーメン。その中でも真っ黒な濃い口しょうゆ味のスープや濃厚ポタージュのような白湯(パイタン)スープが好きなのですが、「春木家」の中華そばは透き通ったスープでありながら、コクが深いのに驚きました。とてもシンプルですが、その中にうま味があるというのでしょうか。荻窪ラーメンは、メディアに頻繁に取り上げられてきましたが、それでもブームに流されずにきたことがポイントのように思います。

(松原)おいしいラーメン店の味は、地域の文化遺産と言っていいんじゃないかな。2015(平成27)年の夏、南阿佐谷の名店「蓬莱軒」(※7)が閉店したのはショックでした。名物だったきくらげ麺、もやしそばも絶品でしたが、特に私が好きだったのは味噌ラーメン。唐辛子の入れ方が絶妙でした。メニューがたくさんある「ザ・街の中華屋」とでも言うべき店にもかかわらず、全てのメニューにオリジナルの工夫があり、かつ完成されていて実にクリエイティブだった。「蓬莱軒」のレシピを阿佐谷の食文化遺産として、区役所のレストランででも復刻してくれないかなあ。ラーメンに限らず街には街のソウルフードがありますから、それは文化として引き継いでいきたいですよね。

※7 「蓬莱軒」:南阿佐谷で56年続いた中華の名店。2015(平成27)年8月、惜しまれながら閉店した

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