
「MOONLOOP CAFE」の外観。夕暮れ時に明かりがともる
富士見ヶ丘駅から徒歩約3分。「MOONLOOP CAFE」は、初めて訪れる人も、少し人見知りな人も、自然と会話に加われるような、にぎやかで温かい雰囲気に満ちている。
接客を担当するスタッフは、視覚に障害のある人たちだ。スタッフのいっしーさんは、この店で働くまで、視覚障害を理由にアルバイトを断られていたという。「それまで僕は、学校と家を往復する日常を繰り返していました。ここでいろいろな人と話をするようになって、"人のつながり"も広がっていきました。このカフェから、すべてが始まっていったんです」
このような「働きたい」という声に応えるために、2025(令和7)年2月、視覚障害のある大学生とない大学生が協力し合って立ち上げたのが「MOONLOOP CAFE」だ。毎週月曜日に営業している。
スタッフの接客は、視覚に障害があることを感じさせないほどスムーズで自然だ。ぶつからないように声を掛け合い、店内では右回りで動くなど、初めて来店する客も不安を感じないよう、練習を重ねて現在の形になったという。
また、目の不自由な客も利用できるよう、メニュー表は4種類ある(写真参照)。まず、どのメニュー表にするかを選ぶところから始まるのも、このカフェの特徴だ。
スタッフは積極的に客に声をかけ、できるだけ話しやすい雰囲気作りを心掛けている。なっちさんも、海外からの留学生が来店したり、客が偶然学校の後輩だったりと、思いがけない出会いが印象に残っていると話す。「普通のカフェだと、たまたま来たお客さんとゆっくり話したり、知らないお客さん同士で話したりすることはないと思うので、そういうところがこのカフェの良さだと思いますね」
このカフェでは、月の満ち欠けになぞらえた「本日の満ち欠けチャイ」が看板メニューになっている。その日のスタッフの見え方に合わせて、チャイの味が変わる仕組みだ。例えば、両目が不自由なスタッフが担当する日はスパイスが強めの「新月のチャイ」、片目が不自由なスタッフが担当する日はスパイスと甘みのバランスが良い「半月のチャイ」が提供される。チャイのほか、生チョコレートなどのデザートや、ホットサンドなどの食事も注文することができる。
現在、スタッフのうち視覚に障害のある人は4名に増えた。いっしーさんは、今よりもチャイの種類を増やせないかと考えている。「メニュー表と一緒で、見え方にもいろいろあります。雲がかかったような見え方とか、中心部だけ見えないとか。両目が見える場合(晴眼)は、”満月のチャイ”です」
見えないからと諦めるのではなく、「できることは何か」「工夫すればできるのではないか」と、自分自身で考えていける場所になってほしいと、いっしーさんは話す。
なっちさんは、客が気持ちよく来店できるよう、今後はカフェとしてのレベルをさらに高めていきたいと意気込む。「チャイがおいしいとか、2回目であれば私たちと話したことが印象に残っているとか。本来のカフェに求められていることのレベルを高くして、来ていただいた時に楽しい時間を過ごしていただくことが、とても大事だと思います」。毎月最終月曜日には、音楽のイベントなども開催され、盛況だという。
訪れる際は、公式ホームページからの予約がおすすめだ。これまで見えていなかった世界がどんどん広がっていく感覚を、ぜひ味わってみてほしい。