
老舗の日本茶専門店だが、開放的で入りやすい
阿佐谷パールセンター商店街の青梅街道側入り口から歩いて1分ほどの場所にある、東京繁田園茶舗(とうきょうはんだえんちゃほ)阿佐ヶ谷本店(以下、繁田園)。1815年に当時の繁田家当主が武蔵国(現埼玉県狭山市)に開いた茶園を祖業とし、1947(昭和22)年に開店した。
取り扱う茶葉は問屋任せにせず、全国の産地へ足を運んで直接仕入れており、生産者とは親子3世代の付き合いだという。
仕入れた茶葉は、青製煎茶製法(※)の発祥地とされる京都府綴喜郡宇治田原町へ運び、こちらも50年来提携している工場で最終仕上げを経てからブレンドし、繁田園ならではのオリジナルの味を出している。
現代表で自身も三代目となる繁田穣さんは、「生産者さんから直接仕入れた、安心安全で美味しいお茶を、適切な価格で提供しています」と話す。
店内には、かつて皇室に献上された品評会入賞茶から、日常用のものまで、50種類ほどの茶葉が並ぶ。種類が多く迷ってしまったら、まずは「ベストセラー3種セット」がおすすめだ。
一番人気の煎茶「千代の香り」は鹿児島県霧島市の茶葉をメインに、山間地域の茶葉をブレンドすることで、山の香りが感じられる看板商品。苦みや渋みが抑えられ、普段のお茶として飲みやすいのが深蒸し茶の「濃いみどり」。「はんだかおり No.1」は、自家焙煎のほうじ茶で、創業時の焙煎機が今も使われているという。
緑茶と同じ品種から作る和紅茶「長谷部さん家のさわやか紅茶」もオリジナル商品だ。狭山の生産者が一人で手作りする茶葉に、完熟越冬みかんを加えている。一般的な紅茶の強い香りとは異なる、素材のさわやかな香りと天然の優しい甘さを味わえる。
さらに自分好みの茶を見つけたいと思ったら、用意されている「お茶のしおり」が便利だ。茶の色や風味、香りなどが一覧になっていて、見比べながら選ぶのが楽しい。茶葉の分量や湯の温度、抽出時間など、入れ方も分かりやすく説明してある。
「世代を選ばすに楽しめるのが、日本茶の特徴。急須で茶を入れる機会が減り、ライフスタイルも変化する中で、工夫が必要だと思っています。ティーバッグも客層を広げるために始めましたが、そこは専門店なので品質は落とさないようにしています」と繁田さん。
夏は水出しや冷煎茶、冬なら抹茶に温かい牛乳を加えたラテ仕立て、といった飲み方も提案している。
また、2カ月ごとに季節のおすすめ茶が届く定期便もある。
地域や人とのつながりも大切にしており、近隣の飲食店や、荻外荘展示棟のカフェメニューにも、繁田園の茶が使われている。
「入り口としては抹茶かもしれませんが、日本茶文化を次の世代に伝えるためには、日本茶の幅広さや奥深さ、おいしさを世界の人にも知ってもらいたい」と、近年は国際的な展示会や食品コンテストなどにも出品。手応えを感じて、2026(令和8)年7月にはオーストラリアのシドニーに初の海外店をオープンした。
大変さや難しさに対する抵抗感は持たずに、まずやってみようという精神は、創業の頃から受け継がれていると感じるそうだ。
店頭で茶葉をほうじる良い香りに誘われて、自分好みの一杯を探しに訪れてみてはいかがだろうか。
▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並の景観を彩る建築物>荻外荘展示棟
※青製煎茶製法(あおせいせんちゃせいほう):宇治田原町で茶業を営んでいた、永谷宗円が江戸時代中頃に開発した緑茶の製法。それによって、色・味・香りに優れた緑茶を庶民でも楽しめるようになった
宇治田原町観光情報サイト https://ujitawara-kyoto.com/