
東高円寺駅から徒歩約9分、数十種類の銘酒がそろう手打そば店
そばは一日に複数回打ち、常に風味の良い状態で提供している。そば粉は北海道産を主体に、粗挽き(あらびき)を加えた独自配合。十割ではなく二八(にはち)を基本とするのは、冷たいそばにも温かいそばにも合わせやすく、のど越しの良さを重視しているためだ。さらに、打つ・ゆでる・締めるすべての工程で、専用のろ過設備で整えた水を用いるなど、見えない部分にも手間を惜しまない。
一方で、小幡代表は「こだわりがないのが僕のこだわり」と語る。特定の方向性に偏ることなく、多くの人がおいしいと感じられる一杯を目指しているという。小幡代表の言葉を借りると、「10人中6人がおいしいと評価するそば」。誰もが自然に受け入れられる味わいを大切にする姿勢がうかがえる。
同店を象徴する料理の一つが「黒豚の蕎麦しゃぶ」だ。親戚の紹介で出合った料理をヒントに、そばを組み合わせたメニューに仕上げた。だしにくぐらせた黒豚は脂の甘みが引き立ち、さっぱりとしたつけ汁とよく合う。締めにそばを味わうことで、そば店ならではの楽しみ方ができる。
黒豚は鹿児島の業者から直接仕入れている。馬刺しも会津の業者から取り寄せており、いずれも小幡代表が現地に足を運び、人とのつながりの中で選び抜いた食材だ。「まん月」の料理は、素材の良さはもちろん、生産者との信頼関係にも支えられている。
店内には常時、数十種類の銘酒をとりそろえる。単に種類の多さを追求するのではなく、蔵元を訪ね、現地の環境や造り手の思いに触れたうえで、納得できる酒を選んでいる。また、「利き酒会」の開催や継続的な交流を通じて、蔵元との関係も築いてきた。取り扱う酒は、蔵元や産地の背景とともに紹介しており、利き酒師の提案を通じてそれぞれの個性も伝えている。
現在では和田で唯一のそば店として営業を続けており、「日本酒のおいしいそば店がある」と地域に親しまれている。小幡代表は、「“まん月”があるからここに住みたいと言われる店でありたい」と話す。地域の日常に根付き、自然に選ばれる存在であり続けることが、同店の目指す姿だ。