阿佐谷パールセンター商店街にある「たいやき ともえ庵」(以下、ともえ庵)は、客の列もメディアの注目も絶えない街の名物店として知られている。たい焼きがおいしいからなのはもちろんだが、実は店主による緻密な広報戦略のおかげでもある。その店主が、“現場発のPR(※)術”を明かした本。ともえ庵の取材件数は阿佐谷での開業以来200件を超え、人気テレビ番組や新聞、WEBニュースなどに多数登場している。この本には、お金も時間もかけずに、片手間に実践して効果のあったPR術が具体的に書かれている 。
本書では、ともえ庵がメディアで取り上げられるために実践してきた内容、取材対応の具体的な流れと注意点、記者の目に留まるための工夫や失敗談、炎上対策も交え分かりやすく解説されている。専門の知識がなくても、広告費をかけなくても、メディア側から取材に来てくれて店の良さを人々に広めてくれるとは、どのようなことか。例えば焼き上げから20分経ったたい焼きを再生させた「たいやきの開き」を発売した際には、SDGsの文脈の中でニュース番組等に何度も紹介された。「生ぶどうたいやき」の告知時には、印象に残る画像を作成したことが売り上げと取材依頼につながった。
小さな店には立地も重要で、ともえ庵の場合、店舗は中野駅前から2014(平成26)年阿佐谷パールセンター商店街に移転。「中野に比べ阿佐谷は街の規模は小さいが、地元客が多く、地域の中心商店街の力もあって注目を集めた」とある。
著者の辻井氏は、これまでも社会調査、リサーチをしてきた実績のもとに本を執筆している。今回の「片手間PR術」で5冊目だ。小さな飲食店を営む若い人から「どうしたらテレビに出られるんですか」と尋ねられたことがきっかけで、少しでも役に立ちたいという思いから、この本の執筆に至った。
「小さな店では、PR担当者を雇ったり、PR会社に依頼したりすることは不可能なので、店主が自分でできる範囲で、少しでもメディアに取り上げられる方法について書いてみました。テレビに出ると、”ともえ庵はテレビに出たんだよ”と地元の人達が自慢して、外の人々に紹介してくれるようになりました」と語ってくれた。
ともえ庵は、これからも辻井氏のPRによって、もっと広く知れ渡り、杉並区が誇れる店のひとつになるに違いない。
※PR:Public(公衆)Relations(関係)の略。企業や団体が社会や顧客との信頼関係を築くための活動を指す