
「当店自慢の熟成生本まぐろ丼」(2,800円)。熟成庫でうまみを凝縮
杉並区の永福町にあるみらい水産は、生本まぐろとワインの専門店。柵や刺身、弁当などを販売しているほか、イートインスペースで丼物、すし、創作料理などが食べられる。扱うのは、冷凍を一切していない鮮度を極めた生本まぐろのみ。三重県の伊勢湾で丹精込めて育てられた「みえまぐろ」をメインで扱っており、毎週さまざまな産地の天然本まぐろを豊洲で仕入れて提供している。
限定メニューの「天然生本まぐろ丼」は、鮮やかな赤い身がつやつやと輝き、見た目にも大ごちそう。頬張れば濃厚なうまみが口いっぱいに広がり、自然と笑顔になるほどのおいしさだ。
「当店自慢の熟成生本まぐろ丼」は、特別な熟成庫でむらなく仕上げた熟成まぐろがたっぷり。一番おいしい状態で提供しているそうで、深みが増した味わいに驚かされる。
オーナーの金宮ラザロさんはブルガリアで生まれ、13歳の時に両親と来日した。大学卒業後、ブルガリア料理レストランでのアルバイトを経て、2008(平成20)年にワインの輸入などを行うブライオンズ株式会社を設立。「もともと料理が好きで飲食店もやりたいと思っていました。そこで、2019(令和元)年に、神奈川県鎌倉市にある自宅近くの古民家で、民宿を兼ねたワインショップ・レストランをオープン。ブルガリアの食材を使ったハンバーガーの開発などをしていました」
ところが新型コロナウイルスの感染が拡大し、事業が窮地に陥る。「その頃、豊洲から独立した仲卸業の友人が、鎌倉の店でまぐろを扱ってみないかと声をかけてくれたんです。それが“みえまぐろ”との出合いで、食べてみたらめちゃめちゃおいしくて。早速、店で販売し、店内のレストランでも出したところ、大評判になりました」
「もっと多くの人に、このまぐろのおいしさを伝えたい。生産者の努力を応援したい」と思った金宮さんは、東京に生本まぐろ専門店を出すことを決心。2023(令和5)年、都心へのアクセスが良い永福町で開業した。「永福町は緑が多くて環境が良く、近くに大宮八幡宮というすばらしい神社もあり、気に入っています」。オープン当初は地域の方の来店が多かったが、現在はSNSなどで評判を知った近隣県からの客も増えているそうだ。
店名には、未来の子供たちにおいしいものを残していきたいという思いのほか、「近未来的な魚屋さん」というイメージも込めている。環境問題に積極的に取り組み、冷蔵ショーケースなどにはCO2排出量の少ない鉄素材を使用。また、フードロス対策のため、まぐろの皮を生かしたペットフードや、骨のだしでビールを作るなど、一匹丸ごと仕入れたまぐろを余すことなく活用している。
「おすすめは、初めての方ならば生本まぐろ。2回目以降は、他ではなかなか食べられない“熟成”もぜひ」と金宮さん。丼物やすしなどには、まぐろ本来の味を楽しめるよう、まろやかな醤油麹(しょうゆこうじ)と藻塩(もじお)を添えているのも特徴だ。
自家製まぐろ節などでスープから作る「まぐろまぜそば」や、さまざまな部位を使用した「極上国産本まぐろスパイスカレー」などの創作料理も人気だという。
ワインの輸入業の経験を生かし、ワインとまぐろのマリアージュ(組み合わせ)にも力を入れている。「まぐろにはロゼやオレンジワインが合いますね。“ワイン3種飲み比べセット”もあり、その日の仕入れや料理に合わせて選んでいます」
極上のまぐろを手頃な値段で提供できているのは、新宿や渋谷の繁華街でなく永福町という立地だからこそと金宮さんは言う。「今まで食べた中で一番おいしかったと喜んでもらえることがなによりうれしいです」