ふわふわの氷に、旬の果物や野菜、ナッツ、チーズ、コーンポタージュなど秀逸な食材のマリアージュ、素材の持ち味を生かした優しい甘さ、一瞬でとろけるほどよい冷たさ。そんなかき氷を提供するちっちゃなバル、ツキトクルミは阿佐谷の住宅地で昼営業している。
オーナーの松本さんは、本来辛党で甘味には関心がなかったが、以前勤めていた店でふわふわ食感のかき氷と出合い「何だ、これは!!」と衝撃を受け、かき氷の魅力に開眼。以来東京中、一部地方のかき氷を食べ歩き、学び、満を持して2022(令和4)年、阿佐谷でツキトクルミを開店した。店名は愛犬の名前や自分の家族に付けてみたい名前から発案。
「かき氷の人気店は住宅地で営業していることも多く、私も住宅地であってもお客さまにわざわざ足を運んでもらえるようなかき氷を提供したい」と松本さん。また「初めて来店される方は、事前にツキトクルミの場所やメニューをネットで調べてからお越しいただけることもあって提供までがスムーズなんですね」という。
阿佐谷には以前より友人が住んでいたり、先輩が飲み屋さんを経営したりとなじみのある街で、ここで物件を見つけた時はすぐに開業を決めた。店内はカウンター数席のみでバーのようなスタイルだが、明るいインテリアで軽やかな雰囲気だ。そしてカウンターの中にどんと鎮座するアイスシェーバーが印象的。盛夏にはドアの外に数人が並ぶこともある。
かき氷で何といっても大切なのは氷の状態だと松本さんは話す。硬過ぎず、柔らか過ぎず、氷のゆるみ(溶け)具合を見極め、最良の状態で削り始める。「タイミングを見逃すとゆるんでシャバシャバとしてしまいます、口当たりを考えると本当にこの削り始めが大事なんです」という。削られた直後はまるで針葉樹のような勢いのある氷が、あっという間に慣れた手つきできれいに丸められ、食材がこれでもかとトッピングされて完成する。
トッピングを考える時は、イタリアン料理なども参考にするという。日本人になじみのない食材の組み合わせにヒントを得て、氷との相性を試行し新しいメニューを完成させている。