何度も足を運びたくなるレトロな雰囲気の「それいゆ」店内
オーナーの廣田さんは2代目だ。「初代オーナーは両親。父親はトロンボーン奏者で音楽好きでした。店内には大量のレコードがあり、いつもジャズが流れていました。私も小さい頃から店に出入りしていて、宿題も店でしていたくらいだったので、いつか店を継がなくてはと感じていました。アニメ制作会社に勤務していましたが、2010(平成22)年ごろから、従妹と一緒に店を切り盛りしています。母と叔母が海外旅行で購入してきたフランス人形なども大事に飾っており、これまで築いてきた店をそのまま受け継いでいきたいと考えています」と語る。
店のこだわりが感じられる、モーニングやランチ、ケーキの豊富なメニューも魅力の一つだ。
例えばモーニングセットは、「ふんわり厚焼きトーストセット」「朝の定番ベーコンエッグトーストセット」「とろーり練乳のミルクトーストセット」の3種類から選べる。ランチセットは、ナポリタン、カレーライス、チーズカレー、ピラフがあり、ピラフは日替わりのメニューだ。
コーヒーは、おいしい水を使い、1滴1滴、12時間かけて水出しコーヒーの器具で抽出している。香り高く、芳醇(ほうじゅん)ですっきりした風味だ。ブレンドコーヒー、カフェオレ、ウィンナコーヒーなどのほか、紅茶、レモネード、ココアなど飲み物もそろっている。ショーケースには、日によって異なるケーキが並ぶ。
「店で出している料理やケーキ、店の雰囲気もすごく特別ではないけれど“非日常”な場所の提供を意識しています。なるべく毎日開店していて、お客さまが“あれが食べたい!”と思ったら、すぐに食べてもらえる店にしていきたいです。店も住まいも杉並区ということもあり、顔見知りが多く、店の外から声をかけてくれる方もいるんですよ。近隣との関わりは絶えず感じていて大切に思っています」と廣田さんは話してくれた。
創業から毎日のように通ってくる客や、作家・芸術家など文化人の来店が多いことも特徴だ。大勢の来店客に対応できるように、2025(令和7)年は14名のスタッフが日々交代で働いている。「メニューなどSNSでの情報発信も今頑張っているところ」と廣田さん。受け継いだものを大切に守りながら、新しいことに取り組む「それいゆ」にこれからも足を運びたい。