「前菜のメゼはトルコのパン、エキメッキと一緒にどうぞ」とエリフさん
イズミルのメニューは家庭でもよく作られるフムス(ひよこ豆のペースト)から、専用の大きなグリルで作るケバブ(肉を串に刺して焼いたもの)まで幅広い。
「トルコ料理が初めてなら、まずメゼ(前菜)の盛り合わせから食べてみてください。メゼにはトルコの野菜料理のエッセンスが詰まっています」。豆やトマト、ピーマン、ナスなどを刻んでトルコのスパイスやヨーグルトであえたディップで、豆の優しい甘み、スパイスの辛みや酸味など、いろいろな味を楽しめる。エキメッキという香ばしい自家製のパンに付けて食べるのがエリフさんのおすすめだ。
チョバン・サラタス(数種の野菜をトルコのスパイスであえたサラダ)やギュヌン・チョルバス(野菜ベースのスープ)など野菜メインのメニューも多く、一皿ごとのバラエティ豊かな味わいに驚かされる。
イズミルで使われる肉は、ラム、ビーフ、チキンの3種類。それぞれに合うトルコ産のスパイスを使ったケバブ(串焼き)は看板メニューだ。ピラフと焼きトマト、タマネギサラダと共に提供される。
おすすめはイスケンデル・ケバブ。牛の薄切り肉を何百枚も串に刺して大きな筒にし、炙り焼きにしたドネル・ケバブをパンの上にのせ、ヨーグルトとトマトソースをかけた味わい豊かな一皿だ。「トルコでは昔からヨーグルトを料理によく使います。ヨーグルトという言葉は古代トルコ語のヨウルトが語源とも言われているんですよ」とエリフさん。
ピザのルーツと言われるピデは、クリスピーな薄いピザ風のもの、野菜や肉を入れて舟形に焼いたり、巻いて揚げたりしたものと味も形もいろいろ。熱いうちにパリパリの食感を味わいたい。
タワ(フライパン)や鉄鍋、オーブンなどを使った温かい料理も多く、メイン料理を選ぶのに迷うのも楽しい。
イズミルという店名はトルコの街からとった。「オリーブオイルが有名なところです。エーゲ海沿いなので魚もおいしいですよ」。
お店を始めたきっかけは、友人に「あなたの料理がいつも食べられるように」と勧められたから。お店を阿佐谷にしたのは偶然だそう。物件を一目見てすっかり気に入り、すぐにトルコからタイルを取り寄せたり、調理器具を入れたりして店を作り上げた。
「阿佐谷は落ち着いていていいと思います。いい人たちがとても多い。近所付き合いが好きだから、毎日近隣のお店におはよう、お疲れさまとあいさつをしたり、今日は気分はどうですか?と話しかけたりします。阿佐谷で好きな場所は商店街。大好きです」と明るく話すエリフさんは、まるで世話好きな下町のお母さんのよう。アットホームな雰囲気の中で味わうトルコ料理はことさらに絶品だ。