近衞文麿内閣関係者が語る 諸家追憶談

編集:杉並区教育委員会

吉田茂、東久邇宮稔彦王(ひがしくにのみやなるひこおう)など首相経験者や、近衞内閣関係者20人以上の証言など、近衞文麿を追憶した資料を翻刻した書籍。これらの資料はこれまで国会図書館で目録のマイクロフィルムが公開されていたが、初めて活字化して出版された。
近衞文麿は、1937(昭和12)年から1941(昭和16)年にかけて3度総理大臣を務めた政治家である。第一次内閣期に日中戦争(支那事変)が勃発してからは、戦時下の日本の舵取りをしたが、敗戦後、戦犯に指名され自決した。
本書からは、組閣や諸外国との交渉など当時の政治的な動きと合わせ、その時々の近衞の姿が読み取れる。「回顧すれば、私の眼に映じたる公は何人も知るごとく極めて聡明であり理知的であった。それでいて感情の冷かな人ではなかった」(高田保馬)、「私は公のこの真面目な態度にとうゝほれ込んで、それ以来親しくつき合うようになった」(酒井鎬次)等々、印象についての証言もあり、人物像を知る貴重な手掛かりになるだろう。

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伊沢多喜男の証言に出てくる近衞 着用の袴(杉並区教育委員会所蔵)

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杉並区教育委員会インタビュー

かつて「荻外荘(てきがいそう)」にあった資料を公益財団法人陽明文庫と共同で調査する中、近衞文麿を追憶した資料をまとめ、本書を刊行しました。翻刻した資料は近衞伝記編纂(へんさん)のため、戦後まもなく近衞と近しい人物に行われた取材を書き起こしたもので、活字化して刊行するのは初めてのことです。
多くの方に手に取っていただけるよう、証言者のプロフィールや関係用語一覧を付け、読みやすいよう新書版にしました。
当時の政治・外交の動向が近衞を中心として語られており、近代政治史などに興味がある方にもお勧めです。
また、本書の売り上げは「荻外荘」の復原整備に活用されます。

おすすめポイント

近衞は第一次内閣期から自決に至るまで、荻窪にあった「荻外荘」で過ごしている。ここを舞台に、第二次内閣の基本方針を話し合った「荻窪会談」など、重要な会議も数多く行われた。
本書は冒頭で「荻外荘」について解説。創建から現在杉並区が取り組む復原整備までの沿革と、同邸宅と関わりのある近衞、入澤達吉(大正天皇の侍医)、伊東忠太(建築家)が紹介されている。

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復原整備を行い、公園として2024年度に公開予定 

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DATA

  • 取材:西永福丸
  • 掲載日:2022年02月07日