タロー軒

タロー軒は24時間営業、年中無休。いつでも食べに行けるのがうれしい

タロー軒は24時間営業、年中無休。いつでも食べに行けるのがうれしい

洋食の元コックが作る昔懐かしいラーメン

高南通りに「高円寺ラーメン タロー軒」の黄色いのれんがはためく。いつ店の前を通っても誰かしらラーメンをすすっている風景が見られる。
1978(昭和53)年7月のオープン以来、提供するラーメンは醤油のみ。豚肉・豚骨をメインに、鶏ガラ、昆布、煮干し、しいたけ、野菜で作ったスープで、醤油だれを割る。麺は中細のストレート。やわらかい⾷感で、豚と野菜の甘みが溶け込んだスープとよく絡み、するするっと腹に収まる。昔懐かしい味わいのシンプルなラーメンだが、ボリューム満点で、一般的な店の麺が120~150gなのに対しタロー軒は160g。スープでほろほろになるまで煮込んだチャーシュー2枚、ワカメ、メンマ、ネギの小口切りに白髪ネギと、具もたっぷりのっている。「うちのお客様は男が多いから、ボリュームを出さないと」と、店主の荒木覚(あらき さとる)さんは言う。

ラーメン/700円/麺160g。ストレートの中細麺は、店主の荒木さんがスープに合わせてよりすぐったもの

ラーメン/700円/麺160g。ストレートの中細麺は、店主の荒木さんがスープに合わせてよりすぐったもの

人懐こい笑顔の荒木さんは72歳。ラーメン店での修業はせずに自分の味を作り上げた

人懐こい笑顔の荒木さんは72歳。ラーメン店での修業はせずに自分の味を作り上げた

ラーメンが満たすのは空腹だけではない

荒木さんはタロー軒を経営する「有限会社あら喜や」の代表取締役で、スタッフや常連からは「社長」と呼ばれている。18歳から洋食店のコックをしてたが、ファミレスが台頭した昭和45~50年頃、手軽に食べられる料理の時代が来ると考え、ラーメン店を始める決意をした。
26歳でコックを辞めたあと、1976(昭和51)年、西武新宿線野方駅近くの環七沿いにタロー軒1号店をオープン(※)。夜間に走るタクシーの目に入りやすいよう24時間営業とした。目論見(もくろみ)は当たり、オープン初日からタクシードライバーを中心に多くの客が詰めかけたという。
盛況な折に2号店の出店を考えていると、常連から「いい場所があるよ」と情報をもらった。それが現在のタロー軒だ。場所柄サラリーマンや学生が酒の締めに訪れ、ラーメンブームになると遠方からフリークも来た。常連には俳優やお笑い系の芸能人なども少なくないそうだ。
1年24時間休みはない。3交代制で営業しているが、荒木さんが一番きつい深夜2時~朝10時を担当する。「大変かとよく聞かれるけど、働き続けていれば認知症にもならない」と荒木さんは笑う。常連いわく「社長の作るラーメンが一番うまい」そうだ。
ラーメンを作りながら、客にポンポンと声をかける荒木さん。「ごちそうさま」に「ありがとう」が続く、ラーメンを通じた温かい心の交流を感じた。

※1号店は現在は閉店

ラーメン調理中。あらかじめ切り分けたチャーシューをスープの大鍋にさっと浸し、温めてから麺にのせる

ラーメン調理中。あらかじめ切り分けたチャーシューをスープの大鍋にさっと浸し、温めてから麺にのせる

カウンターの上のメニューを見て注文すれば、自分好みの味にカスタマイズできる

カウンターの上のメニューを見て注文すれば、自分好みの味にカスタマイズできる

店舗情報

【こだわり】
男性客が多いので、味とボリュームを重視して作り上げたラーメン

・他のラーメン:「チャーシューメン」「ワカメラーメン」「ネギラーメン」「メンマラーメン」「つけ麺」
・メニュー:ライス、ライス(小)/トッピング:ワカメ、ネギ、メンマ、ゆで卵/大盛(240g)
・ラーメン専門店
・立ち食いカウンター約7席、テーブル席4人掛け2卓
・子供可
・1978(昭和53)年7月開業

洋食屋の元コックの腕が冴える「カレーライス」(560円)。ラーメンスープを使い、うま味を出している。「ラーメン・半カレーセット」(900円)の注文も多い

洋食屋の元コックの腕が冴える「カレーライス」(560円)。ラーメンスープを使い、うま味を出している。「ラーメン・半カレーセット」(900円)の注文も多い

カレー用の福神漬けは取り放題。立ち食いカウンターのほかにテーブル席もある

カレー用の福神漬けは取り放題。立ち食いカウンターのほかにテーブル席もある

DATA

  • 住所:杉並区高円寺南2-16-13
  • 電話:03-3312-8634
  • 最寄駅: 新高円寺(東京メトロ丸ノ内線) 
  • 休業:無し
  • 補足:24時間営業
  • 取材:小泊あけみ
  • 撮影:小泊あけみ、TFF
    取材日:2020年07月03日
  • 掲載日:2020年08月24日