サミット株式会社

家庭内の全てがそろう店、サミットストア

2016(平成28)年3月、サミットストア西永福店が改装を終えてリニューアルオープンした。新装なった店内で目をひくのは、肉や魚などを加工・調理する「キッチンコーナー」だ。大きく張られたガラス越しにきびきびとした作業風景が見え、売り場に並ぶ豊富な手作り惣菜(そうざい)に買い物客の手が伸びる。
その西永福店から程近い場所に、サミットストアを運営するサミット株式会社(以下、サミット)の本部がある。1963(昭和38)年の設立以降、本部は渋谷にあったが、9年後に西永福店が開店すると同時に店舗ビルの上階に移転した。「そのころの本部と西永福店は浜田山4丁目にありました。樺島病院の前です。」と話すのは、今回取材に答えてくれた広報室マネジャーの中村聖氏。「病院近くのスーパーなら、普通はお見舞い用のフルーツの盛り合わせなどを扱うのでしょうが、当時の西永福店はそれをしなかった。特別な物ではなく、食料品や菓子、洗剤やトイレットペーパーなどの生活用品といった、家庭内の全てがそろうのがサミットストアの特徴なのです。」
現在、サミットストアは首都圏に113店舗を展開。杉並区には、1989(平成元)年に現在の場所へ移転した西永福店のほか、久我山店、和泉店、妙法寺前店、高井戸東店、成田東店、井荻駅前店、善福寺店の計8店舗がある(取材時現在)。いずれも住宅地に近く、そこから徒歩や自転車で10分程度で行ける便利な店ばかりだ。

西永福店のベーカリーコーナー。450度の専用オーブンで焼くピッツァは、リニューアル開店初日に約200枚売れたという

西永福店のベーカリーコーナー。450度の専用オーブンで焼くピッツァは、リニューアル開店初日に約200枚売れたという

前途多難な草創期と改革後の躍進

サミットの前身は株式会社京浜商会である。1963(昭和38)年に、住友商事と当時アメリカで最大規模のスーパーマーケットチェーンであったセーフウェイ社との業務提携により、世田谷区野沢に1号店が誕生。だが、成功とはいえなかった。1960年代前半の日本には、今では当たり前のセルフサービスシステムや整然とした売り場レイアウトがなじまなかったのだ。セーフウェイ社との業務提携契約は1年で解消になり、新たに住友商事の100%出資で経営が始まる。1967(昭和42)年、社名を株式会社サミットストアに変更(※1)。住友商事の海外電報に使用していた「SUMIT」に「M」の1字を加えた「SUMMIT」を社名とした。「SUMMIT」は、英語で「頂上」を意味する。
創業以来、業績が振るわなかったサミットが初めて年間損益で黒字を計上したのは1972(昭和47)年。後に社長となる荒井伸也氏ら新経営陣による作業や管理、運営方法などの見直しの成果であった。5年後には第40店目にして初の大型店舗、サミットストア五反野店が開店。食料品に加え、本格的な衣料品の販売や家庭用品の充実、屋上には地域の人々のいこいの場を設けるなど、新しいアイデアが盛り込まれた。この店舗の成功を機にサミットは躍進する。
ちなみに、荒井元社長のサミット改革をもとに『小説スーパーマーケット』が書かれ、1996(平成8)年公開の映画「スーパーの女」(※2)の題材になっている。中村氏によると、「荒井は理論家で、業界の有名人でした。伊丹(いたみ)監督から映画の構想を相談された伊丹プロダクションの社長(愛媛でスーパーを経営)が、“すごい博識な方がいる”と荒井を紹介したのですよ。」とのこと。映画の舞台になったのは、杉並区の旧堀ノ内店である(※3)。

※1 1988(昭和63)年に、現在のサミット株式会社に改称
※2 映画「スーパーの女」:脚本・監督、伊丹十三。主演、 宮本信子。参考文献『小説スーパーマーケット』安土敏(本名・荒井伸也)著
※3 撮影は旧堀ノ内店。外観は中野区の江原町店

旧西永福店。かつては若葉のシンボルマークではなく、青いひし形マークであった(写真提供:サミット株式会社)

旧西永福店。かつては若葉のシンボルマークではなく、青いひし形マークであった(写真提供:サミット株式会社)

映画「スーパーの女」の撮影風景(写真提供:サミット株式会社)

映画「スーパーの女」の撮影風景(写真提供:サミット株式会社)

効率化による新鮮な食品提供

サミットストアと他のスーパーマーケットとの違いについて、中村氏に伺った。「サミットには本部と店舗に上下関係がありません。作曲家が作曲し、演奏者が演奏するように、それぞれに役割がある。サミットではこうした分業の考え方を、本部の“作”に対し、店舗の“演”と表現しています。」本部と店舗が対等であるだけでなく、社員間を役職名で呼ぶこともしないという。「私も社長の田尻一を“田尻さん”と呼んでいますよ。」
また、店舗の作業をL.S.P(※4)という科学的管理に基づいた手法で運営しているのもサミット独自の取り組みである。具体的には、“さしみの原料を切り身にする→トレーに入れてつまを添える→値付けをして売り場に出す”といった作業時間をストップウォッチで計り、どれくらいの人員と時間が必要かを調べているそうだ。「これにより効率的な作業と人員配置が可能になります。販売業にありがちな、気合いと根性で乗り切るようなことはしていません。」
店舗のバックヤード(作業場)が広いのもサミットストアの特徴である。生鮮食品を店内加工しているので、商品の売れ行きに応じて生産量を調整できる無駄のないシステムだ。「例えば、他社は加工センターで調理された魚惣菜などをメインに販売していますが、サミットでは焼き魚も鮮魚売り場の魚を店内で焼いているのでジューシーですよ。商品ラベルの製造場所欄にサミットの店舗名が書かれているのが目印です。」

※4 L.S.P:レイバー・スケジューリング・プログラム。作業を1つ1つ明確にして、作業量と作業時間を数値として捉えて管理・運営する方法

「お米の袋に持ち手が付いているのも、サミットの工夫の1つです。」と笑顔で語る、広報室マネジャーの中村聖氏

「お米の袋に持ち手が付いているのも、サミットの工夫の1つです。」と笑顔で語る、広報室マネジャーの中村聖氏

サミットのバックヤードは店舗の35~40%を占める。その分売り場面積は減るが、新鮮で安全な食品提供にひと役買っている

サミットのバックヤードは店舗の35~40%を占める。その分売り場面積は減るが、新鮮で安全な食品提供にひと役買っている

サミットのおすすめとこだわり

惣菜のニーズは近年特に増加傾向にあるという。「会社帰りの独身の方がビールと一緒に購入されるほか、子供が巣立って夫婦二人暮らしになった年配の方にも需要があります。手軽に食べられるカットフルーツも、2011(平成23)年に成城店に専用コーナーを設けて以来、ご好評をいただいています。」リニューアルした西永福店も、「フレッシュサラダ&カットフルーツ」売り場が明るく拡大された。また、試食コーナー「おためし下さい」も新設。瓶詰や缶詰など、味が想像しにくい商品をちょこっとつまんで確認できるのがうれしい。
献立に困ったときに役立つのが、映像でおすすめ商品を教えてくれる「サミットビジョン」だ。2002(平成14)年から始めたサービスで、店内に設置したモニターを使い、バイヤーなどの商品担当がその日の情報をわかりやすく伝えている。また、商品に付いている「バイヤーこだわりの逸品」タグも献立選びの参考になる。中村氏も、精肉売り場のラム肉を前にして「ニュージーランド産のラム肉は食用に飼育されているので臭みがないですよ。」とアピール。自社のこだわり商品に対する強い自信がうかがえた。
鶏肉やブロック肉は、ゴミを減らしたい顧客のニーズに応えてノントレー方式で販売している。「普通の包装より手間はかかりますが、環境問題を考えて鶏肉の95%はこの方法にしています。」
このほか、サミットの環境への取り組みは、店内の廃棄物のリサイクルや、一部店舗での太陽光発電の採用、山梨県の丹波山(たばやま)村での森林整備活動などにも表れている。

6つの商品を週替わりで試食できる「おためし下さい」コーナー

6つの商品を週替わりで試食できる「おためし下さい」コーナー

「バイヤーこだわりの逸品」タグの付いたラム肉

「バイヤーこだわりの逸品」タグの付いたラム肉

ノントレー包装機。普通にパックするより作業時間が余計にかかる

ノントレー包装機。普通にパックするより作業時間が余計にかかる

街で一番愛される店を目指して

サミットは杉並区内の小中学校の授業もサポートしている。小学3年生の社会科では「スーパーマーケット調べ」で、バックヤード見学や大型冷凍庫内のマイナス50度体験などに協力。中学2年生の職場体験では、5日間にわたり、青果の品出しやレジの操作体験などを行っている。
また地域貢献活動として、本部近くにある大宮八幡宮で、毎年12月に大宮八幡宮杉並花笠(はながさ)祭りを開催。参道に協力店の屋台が並び、社員や地元商店会による花笠踊りパレードが行われ、毎回多くの見物客でにぎわう。「地方の商店街がシャッター通りになったり後継者選びに苦労している話を良く耳にします。お祭りはそのような商店街の人たちに支えられているのに、このままではなくなってしまいかねない。サミットでも何か食に関する企画をしようと思い立ったときに、懇意にしている山形のスーパーから、名物の芋煮を教えてもらいました。」大宮八幡宮杉並花笠祭りでチャリティで振る舞われる芋煮は、毎年大行列ができるほど人気だ。祭りで得た募金は杉並区社会福祉協議会に寄付している。

2013(平成25)年に創業50周年を迎え、記念式典において「街で一番愛される店」というテーマを掲げたサミット。「嘘の無い仕事」の経営理念に従い、田尻社長をはじめ本部と店舗が一丸となって、愛される店づくりに邁進(まいしん)している。

小学生の「スーパーマーケット調べ」(写真提供:サミット株式会社)

小学生の「スーパーマーケット調べ」(写真提供:サミット株式会社)

1990(平成2)年、第1回 大宮八幡宮杉並花笠祭りの様子(写真提供:サミット株式会社)

1990(平成2)年、第1回 大宮八幡宮杉並花笠祭りの様子(写真提供:サミット株式会社)

DATA

  • 住所:杉並区永福3-57-14
  • 電話:03-3318-5000(代表)
  • 最寄駅: 西永福(京王井の頭線) 
  • 公式ホームページ:http://www.summitstore.co.jp/
  • 出典・参考文献:

    『サミット株式会社年代記』サミット株式会社
    『サミットの創業時代 流通業界黎明の時代』サミット株式会社
    『サミットストーリー 街で一番愛される店をめざして』サミット株式会社
    『小説スーパーマーケット』安土敏(講談社)
    『日本スーパーマーケット原論―本物のスーパーマーケットとは何か』安土敏(ダイヤモンド社)

  • 取材:西永福丸
  • 撮影:西永福丸
    写真提供:サミット株式会社
  • 掲載日:2016年06月13日