堀之内妙法寺

新高円寺駅から徒歩約13分、東高円寺駅から徒歩約15分

新高円寺駅から徒歩約13分、東高円寺駅から徒歩約15分

江戸時代からにぎわう「やくよけおそっさま」

堀之内妙法寺(ほりのうちみょうほうじ、以下、妙法寺)は、江戸時代から参詣者でにぎわい、「堀之内のおそっさま」の名で親しまれている。
「おそっさま」(お祖師さま)とは日蓮大聖人(にちれんだいしょうにん)を指す。元和(1615-1623)の頃は真言宗の尼寺だったが、日蓮宗に改宗し、寺号を妙法寺とした。元禄時代に身延山久遠寺の直末(※1)となり、目黒碑文谷の法華寺より祖師像が移されると、災難除けに霊験あらたかと人々の信仰を集めたという。妙法寺参詣道も整備され、「東の浅草寺、西の妙法寺」といわれる江戸の名所となった。慌て者が粗忽(そこつ)を治すために願掛けに行く古典落語「堀之内」の舞台でもある。
現在も厄除けをはじめ、家内安全・病気平癒・事業繁栄などを願う人々に高い人気を誇る。

東京都指定有形文化財の仁王門(山門)

東京都指定有形文化財の仁王門(山門)

「堀の内祖師堂開帳之図 明治廿九年三月十六日寫」(出典:『小金井名所図会』、提供:TFF)

「堀の内祖師堂開帳之図 明治廿九年三月十六日寫」(出典:『小金井名所図会』、提供:TFF)

文化財の宝庫。祖師堂、仁王門、鉄門

妙法寺で一番大きなお堂は、東京都指定有形文化財の祖師堂である。日蓮大聖人42歳の厄年にちなんで42本のケヤキの丸柱が使われており、緞帳(どんちょう)の奥に祖師像が奉安されている。祖師堂正面の躍動感ある龍の彫刻は、初代・波の伊八(※2)の作品である。
1787年に再建した仁王門は、華麗な彫刻の施された二層造り。左右の迫力ある仁王像は、徳川四代将軍・家綱が日吉山王社に寄進したもので、1868(明治元)年に妙法寺に移された。
国指定重要文化財の鉄門は、1878(明治11)年にジョサイア・コンドル博士(※3)の設計により作られた。文明開化の時代の和洋折衷様式の端正な門で、美しい色彩の鳳凰(ほうおう)が目を引く。鉄門の先にある大玄関は、特別行事の時に使う正式な玄関である。

動き出しそうな祖師堂の龍の彫刻。波の伊八の作品

動き出しそうな祖師堂の龍の彫刻。波の伊八の作品

鉄門の門柱には、身延山久遠寺第74世法主の筆跡による漢詩が彫られている

鉄門の門柱には、身延山久遠寺第74世法主の筆跡による漢詩が彫られている

祖師堂、御成の間、日朝堂などの中を見学できる

妙法寺は、事前に問い合わせをすれば、祖師堂、御成の間(おなりのま)、日朝堂(にっちょうどう)などの内部の見学が可能だ。各堂は渡り廊下でつながっており、移動の途中で鉄門を裏側から眺めたり、庭園を観賞したりもできる(堂内の写真撮影は不可)。
祖師堂内は、金箔(きんぱく)で覆われた天井や壁、豪華な彫り物、四天王の像など見どころが多い。御成の間は、徳川将軍家が鷹(たか)狩りの時に休憩した部屋で、床の間や天井などに描かれた狩野派の水墨画が圧巻だ。
境内の奥にある日朝堂は、眼病を患うほど勉学に励んだという日朝上人を奉り、「学問と眼病平癒」の信仰を集めている。妙法寺の3種類ある御朱印の一つが、「日朝堂」の御朱印である(※4)。
よく手入れされた庭園には、織部型燈籠が置かれている。戦国時代に活躍した古田織部の創案とされ、丸く左右に張り出した部分が十字架のように見えることから「キリシタン燈籠」とも呼ばれる。

屋根付きの渡り廊下を通って各堂を回ることができる

屋根付きの渡り廊下を通って各堂を回ることができる

庭園にある貴重な織部型燈籠(キリシタン燈籠)

庭園にある貴重な織部型燈籠(キリシタン燈籠)

四季折々の楽しみ方

妙法寺は東京のハナショウブの名所の一つにもなっている。見ハナショウブとアジサイに「梅雨の季節もいいものだな」と思わせてくれる。
春は由緒ある建物とソメイヨシノの共演が楽しめ、秋の紅葉も風情があり、四季を通してさまざまな景色を堪能できる。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 特集>お花見ポイント>堀之内妙法寺

境内を彩るハナショウブ

境内を彩るハナショウブ

アジサイ(撮影日:2019年6月5日)

アジサイ(撮影日:2019年6月5日)

除夜の鐘をつくことができる

1725(享保10)年に鋳造された梵鐘には「鐘の音は妙法の声、鐘をつけば仏とひとつになる。」という意味の文字が刻印されている。

鐘つき参加方法(2023年12月-2024年1月版))
大晦日の16時30分に一度閉門し、23時30分に開門し整理券100枚を配布する。除夜の鐘つきは元旦0時に始まる。打ち止めは1時頃となる。

梵鐘

梵鐘

除夜の鐘つきの風景

除夜の鐘つきの風景

お正月のイベント

正月三が日は、通常毎月23日しか開いていない二十三夜堂が開けられる。堂内には、財運の石「なで石」があり、手で触るとご利益があるといわれている。なかには財布で「なで石」をこする人もいる。

※1 直末(じきまつ):総本山直属の末寺のこと
※2 武志伊八郎信由(たけしいはちろうのぶよし)、通称・波の伊八(なみのいはち)。房総を中心に5代にわたって活躍した宮彫り師一族の初代。寺社の欄間などにその技を残している。特に初代は天才的な作風で広く知られた
※3 ジョサイア・コンドル博士:日本の建築学会の恩師といわれる、明治時代に活躍したイギリス人。鹿鳴館・ニコライ堂などを設計した
※4 妙法寺の御朱印は「除厄祖師」「日朝堂」と、二十三夜堂が開帳する毎月23日にいただける「二十三夜堂」がある

正月の風景(撮影:2023年1月1日)

正月の風景(撮影:2023年1月1日)

御朱印の一つ「除厄祖師」

御朱印の一つ「除厄祖師」

DATA

  • 住所:杉並区堀ノ内3-48-8
  • 最寄駅: 新高円寺(東京メトロ丸ノ内線) 
  • 公式ホームページ(外部リンク):http://www.yakuyoke.or.jp/
  • 出典・参考文献:

    「杉並区史跡散歩地図」杉並区教育委員会
    「すぎなみ景観ある区マップ 和田・堀ノ内編」杉並区都市整備部みどり公園課 
    『すぎなみの地域史Ⅰ 和田堀』杉並区立郷土博物館 
    『江戸近郊道しるべ』村尾嘉陵(平凡社)
    『杉並風土記 下巻』森泰樹(杉並郷土史会)
    「霊宝開帳と妙法寺の文化財展」杉並区立郷土博物館
    『小金井名所図会 風俗画報第三百三十七号臨時増刊』橋本繁・山下重民(東陽堂支店)

  • 取材:赤荻千恵子、知佐しよみ
  • 撮影:赤荻千恵子、水野二千翔、TFF
    取材日:2022年11月01日
  • 掲載日:2008年01月01日
  • 情報更新日:2023年12月06日

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