杉並の色んな人とで出会う

(2)剣道を通じて、礼儀作法を伝えたい−中村和己さん


子どもたちに礼儀や作法を伝えたい

中村和己さん

中村和己さんのプロフィール
1953年杉並区本天沼生まれ。剣道家の祖父、父を持ち、幼いころから剣道を通して礼節を教えられる。中央大学卒業後、大手印刷会社勤務。現在は団体の運営、青少年育成にあたっている。


礼節を伝えて70年余「大義塾」代表 中村和己さん

稽古はじめ中村さんから子どもたちへ

子どもたちに礼儀・作法を教えたい。この思いが剣道を70年余り普及させ続ける力の源になっている。ここまでの道のりは代々伝え継がれたものと、それを支える人々の協力があってこそ。最近は、子どもたちの参加が少なくなってはいるが、現在も週2〜3回の練習は続いている。
子どもたちへの剣道の指導は「お願いします」で始まり、「ありがとうございました」の挨拶で終わる。その後、指導にあたった大人たちの稽古が始まる。どんなに便利で進化した生活環境になっても、『ありがとう』の心は忘れてはならないもの。剣道を通じて、これからも礼節を伝え続けていきたい。


剣道との出会いから思うこと

一人ひとりがあいさつ

昭和12年、天沼に初代塾長が大義塾を開設したことから、自然と剣道の道に入っていった。第二次世界大戦の戦前、戦後と、剣道に対する見方もいろいろあったようだ。子どもの頃、稽古はつらいものだったが、長い間の稽古を通して得たものは計り知れない。現在は、幼稚園児から高校生まで稽古に通う約70〜80名の子どもたちと、大人80名ほどを合わせ、会員数は160人前後。未来を担う子どもたちに「礼儀を重んじ人の道を大切にする心」を引き継がせる、引き継いでもらうことが自分の使命だと思うようになった。普段の稽古は土曜・日曜が主であるが、希望すれば火曜・水曜の稽古もある。
剣道は武道。技術だけでなく礼儀作法、忍耐力などの精神力を重んじる。指導者としては、試合よりも礼儀作法の基本を身につけさせたいが、子どもは試合で負けると悔しくて泣く。そこでおのずと「勝つ指導」にも力が入れるようになる。子どもたちへの指導方法については、会議を開いて最善であるように検討を重ねているが、試合が近づくと当然、会議の回数も多くなる。


どのように子どもたちに伝えていったらいいのだろうか

稽古には、1人で来る子ども、親と一緒に来る子どもと様々。「こんにちは」などの挨拶は子どもたち自ら当たり前のように出てくるし、誰に言われなくても、脱いだ靴はきちんと揃えてある。
子どもの稽古は、まずランニングから。入塾したばかりの小さな子どもたちも、先生たちと一緒に体育館を走り、体操。それが終わると体育館に正座をして、当番の子どもが「先生方に礼」と声を出す。次は発声練習。「メン、メン、メン」と大きな声が体育館にこだまする。続いて竹刀の振り方、足の運び等々。体が十分にほぐれたところでグループに別れて、大人の指導者がつく。ここからの稽古は体固め、面のうち方、こての打ち方と基本動作が中心となる。子どもたちの熱心な稽古で、体育館が次第に熱気に包まれてくる。
稽古が終わると子どもたちは一人ずつ指導者の前に座り「ありがとうございました」と挨拶。指導者から、「ここを直すといいよ」といった一言が伝えられ、一人ひとりを丁寧にみていく。稽古は素足で行う。当然、冬は寒くて冷たく、夏は、ただでさえ暑いうえに、防具や剣道着を身につけているためかなり暑い。現代の冷暖房に慣れている子どもたちには過酷な状態だ。
稽古を重ね、強くなる前に辞めてしまわないように、教え方にもメリハリをつける工夫をしている。また、日頃の稽古の成果をみるために、多くの大会に参加するようにしている。その一つが武道館で行われる「全日本少年武道練成大会」。この大会には、毎年2グループを出場させている。稽古で養ってきた成果がおおいに発揮できる場だ。出場する選手は大義塾の代表の気持ちを持って戦う。指導者もこの大会でベストな状態になっていくように指導をもっていく。頭の中は常に、少しでも多くの子どもたちが剣道を続けていけるようにと、試行錯誤を重ねている。毎回練習場となる体育館の場所取りから練習の見守り、裏方の仕事をこなす方々と一緒にこの地に根を張っていきたい。


剣道を見える形に「太郎杯」

中村太郎杯争奪剣道大会

もうひとつの大会、中村太郎杯争奪剣道大会は、第二代塾長中村太郎氏の名前から付けられた。残念ながら若くして亡くなった太郎先生が、輝かしい活躍をされたことから塾生は「太郎杯」を目指して切磋琢磨している。大義塾の本支部の塾生が一緒になって行う、年に一度の大会。会場は杉並区内の体育館である。静まりかえった体育館に「メーン」という声や、竹刀を打つ音が響き渡る。勝敗は相手の呼吸を読むことで決まる。試合は塾生の家族はもちろん、卒業生や友達など関係者の応援で盛り上がる。審判は先生方が順番で務める。子どもたちは剣道の心を学ぶと同時に、剣道大会への参加意欲も増してくる。そして試合では、子どもたちが少しでも満足出来るような結果を経験させてあげたい。指導者の会議では、子どもたちの様子や自分たちの経験を基に考え、指導の計画を立てる。中村太郎杯争奪剣道大会は日ごろの成果を見るために、大人にとっても子どもにとっても良い機会の場だ。


会員との絆を大切に

冒頭でも書いたが、杉並で剣道の道場を構え、先代からすでに70年あまり。多くの指導者に育ててもらいながら、地域に根付いた剣道をこれからも大切にしていきたい。子どものときに短い期間でも剣道と礼儀作法に触れていれば、大人になって稽古を再開したときでもスムーズに始められるという。夏は富士学園(山梨県南都留郡)で合宿を行う。1日2回の稽古(大人は3回)をしながら、数日を皆で共に過ごすことで縦の関係も学べる。毎年年末の懇親会は、会場探しが大変なくらいOBやOGの参加があり、大いににぎわう。このことからも、中村和己さんをはじめとする大義塾が愛されていることがうかがえる。
稽古会場は、沓掛小学校体育館、妙正寺体育館、中瀬中学校体育館などで行っている。

土曜:子ども 17:30〜19:30/大人19:30〜21:00
日曜:子ども 9:30〜11:30/大人11:30〜13:00
ほか火曜・水曜の稽古もあり。
詳しい問い合わせは中村まで。TEL:03-3399-3863

−取材・撮影 堀 礼子(取材・2010年5月8日 掲載・2010年7月8日)−


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