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最上嗣生さん

最上さんのお気に入りの店「この一杯のために。」で話を伺った

最上さんのお気に入りの店「この一杯のために。」で話を伺った

声優・最上嗣生さんの、高円寺でのもう一つの顔

アニメやゲーム、海外映画の吹き替えなど、声優として幅広く活躍する最上嗣生(もがみ つぐお)さん。硬派な役からコミカルなキャラクターまで多彩に演じ分け、2026(令和8)年には「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」の島二郎役も話題になった。
その一方で、高円寺にあるスパイスと創作料理の酒場「この一杯のために。」(以下、「この一」)で、年に1回アルバイトをしているという、意外な一面もある。
堂々としたバリトンボイスから貫禄のある印象を受けるが、最上さん自身は「結構明るいと思うんです」と屈託なく笑う。その言葉通り、楽しいエピソードを交えながら、声優の仕事や地元・高円寺での日々について語ってくれた。

ゲームと酒、杉並を愛する、声優・最上嗣生さん

ゲームと酒、杉並を愛する、声優・最上嗣生さん

姉の一言から始まった、声優への道

出身は埼玉県です。小中学校では野球をやっていて、高校は弓道部でした。その頃から、「ドラゴンクエスト」などのゲームや、『ドラゴンボール』などの漫画も好きでした。
声優を目指したきっかけは、小学生の頃、姉に「なれるんじゃないか」と言われたことです。それで、その気になった感じですね。まだその苦労を知らないで、気づいた時には後戻りできなくなっていた。
19歳の時に高田馬場にあった声優学校に入学し、その後、賢プロダクションの養成所を経て、所属しました。
声優の仕事をいただけるようになったので、埼玉から東京に出てきました。中高生の頃に古着にはまっていて、よく高円寺に来ていたんですよ。「住むなら高円寺」と決めていました。以来、20数年くらい高円寺で過ごしています。

高円寺マシタにて。活気ある街の雰囲気が、気さくな最上さんによく似合う

高円寺マシタにて。活気ある街の雰囲気が、気さくな最上さんによく似合う

心に残る声優の仕事

事務所の前会長の内海賢二さんの代表作の一つに「北斗の拳」ラオウ役があるので、自分でもいつか北斗四兄弟の誰かを演じたいと思っていました。アニメ「北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-」のトキ役をいただけた時に前会長のお墓に報告に行ったこともあり、とても心に残っています。
「ちいかわ」は、もともと作品が好きで読んでいました。島二郎役に選ばれた決め手の一つは、僕が「日本酒舐郎」というアカウント名でXをやっていたからといわれています。いろんなことがかみ合って、すごくすてきな役をいただいたんだなと思っています。
自分の声をいい声だとは、あんまり思わないですよね。嫌いとかではなくて、普通に「これが自分の声だろうな」と受け入れています。歌は得意じゃないんですよ。映画「ちいかわ」の収録で一緒に歌を録ったのが島袋美由利さん(シーサー役)で、歌う順番を譲ったものの彼女がすごくうまくて、先に歌っておけばよかったと思いました。

「映画「21ジャンプストリート」の吹き替えは、ノリが合ってやりやすかったです」

「映画「21ジャンプストリート」の吹き替えは、ノリが合ってやりやすかったです」

趣味のカメラ

趣味は、ゲームとお酒。あとはカメラが好きです。デジタルでも撮るし、フィルムでも撮る。フィルムカメラは30台くらいあります。今日は、コレクションのごくごく一部、ライカのM4、フォクトレンダーのスパーブ、ウェルタのスーパーフェクタなどを持ってきました。
4年ほど前に、ある日突然「カメラだな」って思ったんですよ。僕はお酒を飲むのも好きで、飲んでいる時に「これを被写体に写真を撮れば、なんかお得じゃない?」って気がして。そこで、急にカメラを買ってきて写真を撮ってみたら、今度はオールドレンズに興味が出てきて。それで撮っていたら、今度は古いカメラに興味が出てきて。古いカメラをいじっていると、昔の人のクラフトマンシップをすごく感じます。

一台一台にこだわりと愛着が詰まった、カメラコレクション

一台一台にこだわりと愛着が詰まった、カメラコレクション

最上さんが杉並区立蚕糸の森公園で撮影した花の写真(写真提供:最上嗣生さん)

最上さんが杉並区立蚕糸の森公園で撮影した花の写真(写真提供:最上嗣生さん)

「この一」で、年1回のアルバイト

声優の仕事だけで、早々に一応食べていくのは大丈夫、という感じになったのですが、社会経験が不足していると思って。友人の店の「この一」で、「東京高円寺阿波おどりの日に、ちょっと働きたいんです」とお願いして、2023(令和5)年から毎年バイトをしています。
知り合いが結構会いに来てくれるんですよ。僕のことを知っている人なら、お酒を作って僕がミスしても優しくしてくれるじゃないですか(笑)。それに、「バイトしてます」っていうとファンの方も来てくださって。
阿波おどりは、昔から大好きなイベントです。高円寺かいわいで何回か引っ越したんですけれど、前に住んでいたところはベランダから踊りが見えたんですよ。

▼関連情報
この一杯のために。(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のイベント・芸能>8月 東京高円寺阿波おどり

「この一」でのアルバイトの様子(写真提供:最上嗣生さん)

「この一」でのアルバイトの様子(写真提供:最上嗣生さん)

杉並の街と飲み屋

杉並は、各駅で毛色がだいぶ違いますよね。
阿佐谷七夕まつりも見に行きます。開催時期が旧暦の七夕だから、7月の七夕とちょっと違ってなんか得した気分があります。あとは阿佐谷ジャズストリート。ジャズ自体に詳しいわけではないんですけど、つねに「阿佐谷、おしゃれだな」と思っています。
西荻は今、飲み屋の勢いがすごいですよね。新しいお店がいっぱいあるし、「戎(えびす)」とか昔ながらのお店もあるじゃないですか。
高円寺かいわいでは、とにかくいろんなところで飲みます。もちろん「この一」でも飲みますし。あとは、80代の大将がやっている「陣兵衛」という魚料理のお店があって、そこのご夫婦を僕は「高円寺の父と母」と呼んでいます。

取材に協力してくれた「この一」のオーナーと共に

取材に協力してくれた「この一」のオーナーと共に

高円寺シンドローム

飲む時には、鍵とか携帯とかを忘れないように、全部ネックストラップにまとめて身に付けているんです。
で、「このシステムいいよ」って、試しに友だちにかけてあげたら、酔った友だちがそのまま全部持って帰っちゃって。家にも入れず連絡も取れずで困った時に、「いつも行っている飲み屋に行けば、彼の知り合いがいるかも」と思って向かったら、案の定いて。なんとか連絡を取って事なきを得ました。こういう、酒のミスも何もかもを受け止めてくれる高円寺が、僕は大好きです。
とある方が、「高円寺は、飲み屋に行ったら誰か知り合いがいるので、結婚しなくても楽しく過ごせる」と言っていましたが、僕もそれはとてもよく分かります。「高円寺シンドローム」です(笑)。

気の置けない友人とのひとときも、最上さんはフィルムに収めている(写真提供:最上嗣生さん)

気の置けない友人とのひとときも、最上さんはフィルムに収めている(写真提供:最上嗣生さん)

これからのこと

目標は、ずっと健康でいること。
仕事では、どんな役でも一つの出会いだと思っています。役をいただくということは、一人の人を預かること。その出会いが楽しくて、声優を続けているところもあります。役者さんや制作に関わる人たちとの出会いも含めて、今後も大切にしていきたいですね。
これからも杉並に骨をうずめるつもりです。杉並は人も優しいし、活気があるようでいて、なんかちょっと牧歌的。一度足を踏み入れたら抜け出すのに苦労するような、居心地の良さがあるのかもしれません。僕もずっと杉並を愛しています。見かけたら、そっと見守ってくださるか、そっと声をかけてください。ヤバそうだったら、「ん?今じゃないな」とスルーしてください(笑)。

店おすすめの「スパイス飯」を、なみすけと一緒にパクパク。「第13回 カレーなる戦い in 杉並」のグルメランキングで優勝したメニュー

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取材を終えて

大切なカメラのコレクションを持参してくれた最上さん。各カメラの特徴を語るイケボを間近で耳にし、まるでナレーションを独り占めしているような気分を味わえた。これからもさまざまな役を通して、最上さんのすてきな声を聞くのが楽しみだ。杉並区のキャラクター・なみきおじさん役も、ぴったりなのでは?

インタビューの途中、カメラの話でカメラマンと盛り上がる一幕も

インタビューの途中、カメラの話でカメラマンと盛り上がる一幕も

最上嗣生 プロフィール

埼玉県出身。
勝田声優学院、賢プロダクションスクールデュオを経て賢プロダクションに所属する。
学生時代は野球部、弓道部に在籍していた。
趣味はゲームとお酒。
代表作は「ゲーム・オブ・スローンズ(サムウェル・ターリー他)」「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」(島二郎)「北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-」(トキ)など。

DATA

  • 取材:西永福丸
  • 撮影:笠峰新志
    取材日:2026年09月16日
  • 掲載日:2026年10月07日