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杉並区の学校給食

麦ごはん・ホキの麦みそ焼き・糸寒天のレモン酢かけ・野菜の煮物(写真提供:杉並区教育委員会)

麦ごはん・ホキの麦みそ焼き・糸寒天のレモン酢かけ・野菜の煮物(写真提供:杉並区教育委員会)

杉並区の学校給食の今

みなさんは学校給食にどんな思い出があるだろうか。人気の献立や苦手な食材、給食を囲んだクラスの様子、給食当番の出来事など。世代は違っても、子どもの頃に食べた給食には、誰もが思い入れがあるはずだ。
2020年代、給食費無償化や物価高騰、食物アレルギーへの対応など、学校給食を取り巻く状況は大きく変わりつつある。杉並区立小・中学校および特別支援学校(※)では、現在、どのような給食が提供されているのだろうか。杉並区教育委員会事務局学務課保健給食係・東澤(とさわ)さんと、杉並区立荻窪小学校の栄養教諭・田中さんに話を伺った。

杉並区の学校給食(イメージ)

杉並区の学校給食(イメージ)

学校給食の歴史と杉並区の特色

日本の学校給食は、1889(明治22)年に山形県の私立小学校で、貧困児童を対象に無料で昼食を提供したことが始まりとされている。
杉並区では、学校給食法が施行された1954(昭和29)年から、すべての区立小学校で完全給食(主食・おかず・牛乳)が始まった。現在は、全区立小・中学校および特別支援学校で自校調理方式による配食を行っている。
米飯給食は週4回以上実施され、残りの日はパンや麺類が提供されている。カレーは市販のルーを使わず、ゼリーやケーキなどのデザートもすべて手作りだ。子どもたちが苦手とすることの多い魚料理についても、各校が子どもたちの実態に合わせて味付けや調理方法を工夫している。
食器は、杉の木のイラストが描かれた強化磁器食器を使用。米飯給食では木製の箸を使っている。

明治22年の献立レプリカ(写真提供:公益財団法人 千葉県学校給食会)

明治22年の献立レプリカ(写真提供:公益財団法人 千葉県学校給食会)

杉並区の学校給食で使われている食器(写真提供:杉並区教育委員会)

杉並区の学校給食で使われている食器(写真提供:杉並区教育委員会)

標準献立をベースに各学校でアレンジ

杉並区では、教育委員会の栄養士と各学校の栄養士が協力し、月単位の標準献立を作成している。各学校では、この標準献立をベースに、学校行事や子どもたちの好み、食物アレルギーの状況など、それぞれの実情に合わせて献立を作っている。
食材は、区内の事業者を中心に学校ごとに購入している。安定した調達を確保できるよう、乾物店や青果店などは複数の事業者と契約している。

1カ月分の標準献立を作成する「標準献立作成会」の様子(写真提供:杉並区教育委員会)

1カ月分の標準献立を作成する「標準献立作成会」の様子(写真提供:杉並区教育委員会)

食べられるものを増やしていく、食育教材でもある給食

学校給食は教育活動の一環に位置付けられており、「学校給食の普及充実及び学校における食育の推進を図る」(学校給食法)ことを目的としている。
完食については、昔のように食べ終えるまで教室に残すような指導は行っていない。田中さんは、「先生によって多少の違いはありますが、共通して“苦手なものでも少し食べてみましょう”という方針です」と話す。
食を通じて地域を知る「郷土食」が提供される日もある。都民の日や給食週間(1月)には、東京都の郷土食である深川めしが登場。吉野汁(奈良県)やゼリーフライ(埼玉県)など全国各地の郷土食や、キョンダン(韓国)やチリコンカン(アメリカ)など海外の料理を取り入れる学校もある。
また、「行事食」として、鏡開きには「小豆白玉」、冬至の頃には「カボチャのそぼろあんかけ」などを提供。さらに、杉並区産の野菜を使用した「地元野菜デー」を年2回、国内産食材のみを使用した「国内産食材の日」を月2回設けている。

特別感のある「弁当給食」「リザーブ給食」

「リザーブ給食」や「弁当給食」など、普段とは異なる形式のイベント給食も年に数回実施している。
「リザーブ給食」は、献立の一部を子どもたち自身が選べる給食だ。例えば、主菜はハンバーグとチキンカツ、主食はパンと麺類、飲み物は数種類の中から事前に選択する。希望はアンケートで聞いており、「当日になって数が合わなくならないよう、しっかり記録し、その通りに渡します。みんな楽しみにしているので、違ってしまうと大変ですから」と田中さんは笑う。
「弁当給食」は、普段の食器ではなく弁当容器で提供する給食である。運動会などの学校行事に合わせたり、その日の時間割に応じて短時間で食べられる献立にしたりと、学校ごとに工夫している。
どちらの給食も特別感があり、子どもたちが食べることの楽しさをあらためて感じる機会となっている。

リザーブ給食の例。飲み物のほか、カレーのトッピングを2種から選べた(写真提供:荻窪小学校)

リザーブ給食の例。飲み物のほか、カレーのトッピングを2種から選べた(写真提供:荻窪小学校)

物価高騰対策とアレルギー対策

杉並区では2023(令和5)年10月から学校給食費無償化を実施している。近年の物価高騰に対し、杉並区教育委員会は毎年給食費を見直すとともに、田中さんは現場での対策の一例として次のように話す。
「淡色野菜であれば、旬の時期に安くなる野菜を使います。また、栄養価がほぼ同じであれば、より安い食材に置き換えることもあります。魚も値上がりしているので、例えばメヒカリのように比較的安価で食べやすい魚を取り入れるなど工夫しています。卵や魚も、1カ月に使うべき量が(学校給食摂取基準を基に)決まっているので、その範囲内で調整しています」
食物アレルギーへの対応も、近年の学校給食における重要な課題の一つだ。杉並区でも、文部科学省の「学校給食における食物アレルギー対応指針」に基づき、安全を最優先に調理している。さらに、アレルギー対応食は通常食と色の異なる食器を使用し、一目で区別できる仕様になっている。

令和8年度学校給食費(学校給食費・多様化給食費・特別支援学校給食費)(出典:杉並区ホームページ)

令和8年度学校給食費(学校給食費・多様化給食費・特別支援学校給食費)(出典:杉並区ホームページ)

アレルギー対応食専用食器

アレルギー対応食専用食器

<体験1>給食試食会で実際の給食を試食

保護者を対象としたものではあるが、給食試食会を開催している学校もある。給食について学び、実際に児童・生徒に提供される献立を試食するという内容だ。今回は、杉並区立杉並第三小学校の「給食体験会」(2026年6月16日実施)に参加した。
この日の献立は、きなこ揚げパン、コーン入り粉吹き芋、キャベツと肉団子のスープ煮、牛乳の4品。スープは鶏がらからだしを取り、肉団子もひき肉を丸めるところから手作り。パンは納品されたものを学校で揚げ、きなこをまぶしている。子どもたちに大人気だという揚げパンについては、「ツイスト状のパンを使用することで、きなこの付きを良くし、パンの底面から高温の油に入れることで油の吸収を抑えている」と栄養士から説明があった。
実際に試食すると、家庭料理に比べて全体的に薄味ながら、スープは鶏だしのうまみがしっかりと感じられ、揚げパンも油っこさがなく、食べやすい給食だった。

キャベツと肉団子のスープ煮は、肉団子も手作り

キャベツと肉団子のスープ煮は、肉団子も手作り

コーンで彩りと食感をプラスした、コーン入り粉吹き芋

コーンで彩りと食感をプラスした、コーン入り粉吹き芋

<体験2>子どもたちが食べているサラダを作ってみた

杉並区では、料理レシピ投稿・検索サイト「クックパッド」で学校給食レシピを公開している。東澤さんは、「クックパッドには、年に3回、2品以上のメニューを追加しています。給食で人気があり、家で作ってみようと思ってもらえるようなメニューを選んでいます。区民や全国の方々に、杉並区の学校給食を知っていただければうれしいです」と語る。
今回は、公開中のレシピから、サラダで一番人気の「サウピカンサラダ」を作ってみた。学校給食では食中毒防止のため、サラダに使用する野菜も加熱する。このサラダも、千切りにしたキャベツとニンジンをゆで、揚げたジャガイモをトッピングするのが特徴だ。実際に作ってみると、ゆでたことで野菜が食べやすく、飽きのこないやさしい味わいに仕上がった。
また、杉並区教育委員会では、2016(平成28)年に給食レシピ集『おうちで食べたい給食ごはん』を発行。おいしそうな料理の写真とともに、具体的な献立例も紹介されている。

▼関連情報
クックパッド>杉並区の給食(外部リンク)
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>読書のススメ>おうちで食べたい給食ごはん

完成した「サウピカンサラダ」。パリパリのジャガイモが食感のアクセント

完成した「サウピカンサラダ」。パリパリのジャガイモが食感のアクセント

『おうちで食べたい給食ごはん』監修:杉並区教育委員会(イースト・プレス)

『おうちで食べたい給食ごはん』監修:杉並区教育委員会(イースト・プレス)

家庭でも役立つ情報が満載「杉並区学校給食展示会」

給食に携わる方々が培ってきた知恵や工夫は、家庭の食生活でも参考になるものが多い。
栄養教諭・栄養士で構成する杉並区学校栄養士会は、学校給食向上のための研究を重ねており、その成果発表の場として2年に1度、一般向けに「杉並区学校給食展示会」を開催している。
展示内容は、食材と調理法の研究発表やイベント給食のレシピ紹介、アレルゲンフリーのレシピ開発など。噛む力や飲み込む力に合わせて食材の硬さや形を変える形態食の研究は離乳食や介護食にも応用でき、減塩の研究を実践すれば生活習慣病の予防にも役立つ。
手作りの展示物からは、子どもたちに給食を楽しんでもらいたいという栄養士会の思いが伝わってくる。学校給食をより身近に感じられる機会として、足を運んでみてはいかがだろうか。

給食を体感できるコーナーなど、毎回趣向を凝らした展示が行われている

給食を体感できるコーナーなど、毎回趣向を凝らした展示が行われている

「令和8年度杉並区学校給食展示会」のチラシ

「令和8年度杉並区学校給食展示会」のチラシ

未来に向けて

最後に、給食づくりに携わる二人に、子どもたちへのメッセージを伺った。
東澤さんは、「ご家庭でも給食の話題が上がるとうれしいです。“今日、何を食べたの?”というようなやり取りをきっかけに、食べ物への関心が広がっていくといいなと思っています」と話す。
田中さんは、「献立表を見て翌日のメニューを把握している子もいて、そういう様子から私たちも元気をもらっています。これからも給食を通して、食を楽しんでもらいたいです」と、学校に勤務する中で感じている思いを語ってくれた。
学校給食は、子どもたちの成長を支える昼食であると同時に、食べる楽しさや食への関心も育む大切な学びの場でもある。その一品一品には、栄養士や栄養教諭をはじめ、多くの人たちの創意工夫と、子どもたちへの思いが込められている。

※杉並区立小・中学校および特別支援学校:小学校40校、中学校23校、特別支援学校1校(小中一貫2校をそれぞれ含む)

栄養教諭・田中さん(写真左)、杉並区教育委員会・東澤さん

栄養教諭・田中さん(写真左)、杉並区教育委員会・東澤さん

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