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東京都立豊多摩高等学校

緑の多い校内。宮崎駿さんがよく授業を抜け出し木陰で読書をした逸話もある

緑の多い校内。宮崎駿さんがよく授業を抜け出し木陰で読書をした逸話もある

自由な校風が魅力の歴史ある学校

浜田山駅から徒歩約10分、閑静な住宅街に39,507㎡もの敷地を持つ東京都立豊多摩高等学校。都立高等学校普通科の中では2番目の広さだ。正門のイチョウは1955(昭和30)年に井の頭自然文化園から譲り受けた。
部活動は運動部が16、文化部が18、同好会が1つある。文武両道に力を入れており、部活動の参加率は100%を超え、水泳部と文芸部は全国レベル。校則も制服もない自由な校風でありながら、現役大学合格率約85%の進学校だ。
創立は1940(昭和15)年。東京府立第十三中学校として府立第一中学校(現東京都立日比谷高等学校)内に併設された。1942(昭和17)年、現在地に落成した新校舎に移転。1949(昭和24)年に豊多摩郡(※1)に由来する現在の校名に改名した。

校舎外観

校舎外観

全国レベルで活躍する文芸部の作品。昇降口付近で手に取ることができる

全国レベルで活躍する文芸部の作品。昇降口付近で手に取ることができる

大学受験は学力勝負!一般入試率約85%

東京都教育委員会の進学指導推進校に指定されており、国公立大学、早慶上理(※2)、GMARCH(※3)などの難関大学を受験する生徒が多い。生徒の約85%が一般入試で受験するため、指定校推薦の枠が余ることも少なくない。大学入学共通テストは3年生全員が受験する。
意欲的に学習する生徒が多く、自習室は毎日19時30分まで開放している。校内随所に自習スペースが設けられており、足りない時は教室を自習室として利用することが可能だ。
教員たちも常に授業の質を上げる努力を続けているのに加え、長期休みには各教科の講座を実施。複数の講座を受ける生徒もいるため、受講者数は全学年で延べ約6,000人に及ぶという。

進路指導室。PTAや先輩から寄贈された赤本は約4,000冊にのぼる

進路指導室。PTAや先輩から寄贈された赤本は約4,000冊にのぼる

自習室の様子。勉強に集中できる環境が整っている

自習室の様子。勉強に集中できる環境が整っている

学友会主体の学校行事

豊多摩高等学校で盛り上がる行事は、合唱コンクール、体育祭、記念祭(文化祭)だ。どれも学友会所属の実行委員が企画・運営など全てを執り行っている。例年6月に開催する合唱コンクールは、1952(昭和27)年に有志で発足してから受け継がれている伝統行事。1年生はそろいのTシャツ、2・3年生は衣装にも凝って、クラス全員が団結し混声四部合唱で競い合う。9月の記念祭では、各クラスや部活、有志団体が、演劇・模擬店・研究発表・ステージ発表などを実施。2023(令和5)年の来校者数は5,441人だった。同月に行われる体育祭では、縦割りで赤、青、黄、緑の4つの団に分かれ、競技を楽しむ。
栃倉校長は「本校は多様性を尊重する学校です。今しかできないことをのびのびと好きなようにやりなさい、という思いで楽しく見守っています」と笑顔で語った。

グラウンドは2面。ランニングコースやテニスコートも備わっている

グラウンドは2面。ランニングコースやテニスコートも備わっている

体育祭は記念祭の数日後に開催。生徒たちは多忙ながらも全力で楽しんでいる(写真提供:東京都立豊多摩高等学校)

体育祭は記念祭の数日後に開催。生徒たちは多忙ながらも全力で楽しんでいる(写真提供:東京都立豊多摩高等学校)

学校生活に欠かせない卒業生との関わり

豊多摩高等学校は、詩人の谷川俊太郎さん、アニメーション映画監督の宮崎駿さんなど著名人を多く輩出しており、卒業生が講演などで来校することも多い。部活動にも、顧問教諭や外部指導員のほかに、卒業生が生徒の指導や試合の応援に駆けつける。2016(平成28)年頃には、谷川さんが文芸部の指導に訪れることもあった。また、遅くまで自習する生徒のサポートのため、元教員の卒業生が毎日来校。定期テスト前には難関大学に進学した先輩たちがチューター(※4)として訪れ、指導を乞う在校生で会議室が満室になるという。
栃倉校長は「校内の植物は、長年近隣に住む元園芸部の先輩が毎週手入れしてくださっています。同窓会独自の奨学金制度も設立していただいており、たくさんの先輩たちが生徒の成長を見守り、応援してくださっているところも、本校の大きな魅力です」と話す。
1968(昭和43)年からは、卒業生の依頼で谷川さんが制作した詩「あなたに」を、卒業式で3年生全員が朗読している。在校生と卒業生とのさまざまな関わりを通し、強い母校愛が代々受け継がれている。

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 ゆかりの人々>著名人に聞く 私と杉並>谷川俊太郎さん
豊多摩リンクス(同窓会公式ホームページ)(外部リンク)

入り口のロビーには、部活動の歴代の部誌が展示されている

入り口のロビーには、部活動の歴代の部誌が展示されている

「学友会・級長・風紀委員(※5)」など旧式の呼称を使う伝統が今も残る(写真提供:東京都立豊多摩高等学校)

「学友会・級長・風紀委員(※5)」など旧式の呼称を使う伝統が今も残る(写真提供:東京都立豊多摩高等学校)

基本情報

栃倉校長からのメッセージ
本校の生徒には、常に以下の三つを大切にしてほしいと話しています。一つ目は、のびのびと大らかに生活してほしい。二つ目は、自ら動いて実行し、さまざまな事を学んで経験してほしい。三つ目は、勇気を持って高みを目指してほしい。多くの方々に本校の魅力を知っていただけたらうれしいです。

教育目標 
自主自律、文武両道、希望進路の実現

主な地域活動
・総合的な探究の時間に、NPO法人すぎなみ環境ネットワークの企画「善福寺川緑地清掃」に参加(例年)
・杉並区役所の「落ち葉感謝祭」展示パネルに「イチョウを宝にプロジェクト(※6)」で参加(2021年)
・校内の銀杏を回収し、近隣住民に配布(2021年)
・天文部と杉並区立浜田山小学校が連携し、月の観察会を実施(2024年実施予定)

イベント情報
・学校見学会:例年8月 
・記念祭(文化祭):例年9月 
・学校説明会:例年10月、11月、12月

著名な卒業生
谷川俊太郎(詩人)、宮崎駿(アニメーション映画監督)、イッセー尾形(俳優)、加藤みどり(声優「サザエさん」など)、佐藤卓(グラフィックデザイナー)

生徒数(2024年度)
3学年合計:934名

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 特集>杉並の地域活動>NPO法人すぎなみ環境ネットワーク

※1 豊多摩郡:現在の杉並区・中野区・渋谷区・新宿区の一部が含まれる地域。1896(明治29)年発足、1932(昭和7)年に全域が東京市に編入
※2 早慶上理:早稲田大学、慶応義塾大学、上智大学、東京理科大学
※3 GMARCH:学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学
※4 チューター:ティーチング・アシスタント。生徒の学習サポートや進路の助言などを行う人
※5 学友会・級長・風紀委員:学友会は現在の生徒会、級長は学級委員、風紀委員は生活委員のことを指す
※6 イチョウを宝にプロジェクト:イチョウ並木の銀杏拾いや落ち葉の堆肥化研究を通して環境問題を考える取り組み

「今後は、より地域との関わりや連携を増やしていく予定です」と語る栃倉校長

「今後は、より地域との関わりや連携を増やしていく予定です」と語る栃倉校長

イチョウ並木を清掃する生徒。「学校は縛りがなく、明るい雰囲気で楽しい」と話す

イチョウ並木を清掃する生徒。「学校は縛りがなく、明るい雰囲気で楽しい」と話す

DATA

  • 住所:杉並区成田西2-6-18
  • 電話:03-3393-1331
  • FAX:03-3398-3746
  • 公式ホームページ(外部リンク):https://www.metro.ed.jp/toyotama-h/
  • 出典・参考文献:

    東京都教育委員会ホームページ https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/ 

  • 取材:加藤智子
  • 撮影:加藤智子
    写真提供:東京都立豊多摩高等学校
    取材日:2024年08月20日
  • 掲載日:2024年09月30日