授業の中ではグループごとに作成したデザインの本格的なプレゼンテーションを行い、選出されたものが企業や施設で実際に使用されることも多い。こうした就職後にも役立つ実践的な授業を通し、学生はスキルを磨き上げている。
アート・デザイン表現学科ヒーリング表現領域の授業では、2022(令和4)年、練馬区の順天堂大学小児病棟の壁画を制作。「アートの力で心を癒すことが目的です。手術室に向かう途中に、ベッドから壁画を見て安心感を与えることを想像したり、リハビリの時に”あの鹿さんの絵まで歩いてみよう!”と子供の原動力になったりすることを想定して制作しています」と、保高准教授は話す。常に見る人、手に取る人の心情やその先の動きを想像してものづくりをしていくことが大切なのだという。
2023年度から新企画「女子美クリエイティブ・ラボラトリー」が本格始動する。「女子美が誕生したきっかけとして、女性は良妻賢母になるべきだというイメージからの解放も理由の一つとしてありましたが、時代の変遷とともに多様性やジェンダー論の理解が進む中、改めて女子美の社会的な役割を探していこう、という企画です」と、ヒーリング表現領域の西田助教は話す。この企画の先駆けとして2022(令和4)年9月から東高円寺にギャラリーを構え、学生の作品を展示し、女子美が探求する自己実現の姿を地域社会に発信している。
また、2012(平成24)年に「学生デザインルーム」と称するデザイン事務所を大学内に立ち上げ、所属する学生たちがプロのデザイナーから指導を受けながら「仕事」を請け負っている。2007(平成19)年には、杉並区とデザインに関する個別協定を締結。食品ロスのポスターなど、区からの依頼による周知ポスターのデザインも手掛けている。
▼関連情報
女子美クリエイティブラボラトリー企画(外部リンク)
【女子美術大学】学生デザインルーム 活動紹介について(外部リンク)
杉並区>女子美術大学との連携・協働(外部リンク)
2021(令和3)年度の短期大学部の進路決定率は94.5%、大学では86.1%と例年高い実績を上げている。学生たちは、女子美出身の著名な先輩を手本にしたり、仲間と切磋琢磨(せっさたくま)したりすることで、夢をかなえている。職種は、デザイナー職のほか、クリエーティブ系総合職などに進む学生が多い。女子美出身で広報担当の平岡さんは「OGとのつながりが強いので、頻繁に先輩の活躍に触れることができ、就職に役立ちます。また、多分野を横断したデザインの学びは、あらゆる仕事に応用できるんです」と、母校の魅力を語る。
女子美術大学の建学の精神
芸術による女性の自立、女性の社会的地位の向上、専門の技術家・美術教師の養成
主な地域活動(杉並キャンパス)
・杉並区と区内高等機関との連携協働推進協議会への出席、杉並区マイバッグ推進連絡会への出席、区の依頼によるポスター制作など
・区と杉並5大学の情報誌「すぎ☆キャン!」を発行
・杉並区社会教育委員、杉並区文化・芸術振興審議会委員に教員を派遣
・東高円寺の「女子美クリエイティブ・ラボラトリー」で企画展を開催
イベント情報 杉並キャンパス
例年3月に卒業制作展を開催
不定期でオープンキャンパス開催
※詳細は公式ホームページ参照
著名な卒業生
大学(芸術学部):山口裕子(ハローキティ3代目デザイナー)、吉田ユニ(アートディレクター)、江口夏実(漫画家)、青木明子(ファッションデザイナー)、G3井田(漫画家)
短期大学部:コンドウアキ(キャラクターデザイナー)、なかやみわ(絵本作家)、桑島十和子(美術監督)、小松美羽(現代アーティスト)
学生数
全学部合計:3,090名
▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 文化・雑学>杉並のアートスポット>女子美術大学ガレリアニケ
女子美術大学歴史資料室(外部リンク)
※1 横井玉子:明治時代の教育者。男女平等への強い思いを持ち、東京美術学校(現東京藝術大学)の藤田文蔵らと共に女子美術大学を創設した
※2 東京五美術大学:東京にある私立の美術大学の総称。武蔵野美術大学・多摩美術大学・東京造形大学・日本大学芸術学部・女子美術大学
※3 杉並キャンパスのほか相模原キャンパス(神奈川県)がある
※4 アート・デザイン表現学科は、メディア表現領域、ヒーリング表現領域、ファッションテキスタイル表現領域、アートプロデュース表現領域の4つの分野に分かれている