数寄和

2022(令和4)年に開催された公募展「ギャラリーへ行こう2022」(写真提供:数寄和)

2022(令和4)年に開催された公募展「ギャラリーへ行こう2022」(写真提供:数寄和)

表具(※1)・額装の店が営む和のギャラリー

株式会社数寄和(すきわ)の代表・岸田さんは、元は京都の織物会社の役員だった。1997(平成9)年、「表具を産業として残すためには自分で活動するしかない」と、表具や額装、書画の修理を行う数寄和を創業。知人から「岸田さんには西荻窪が合うと思う」とすすめられたことをきっかけに、2006(平成18)年、西荻窪駅から徒歩7分ほどの現店舗に移転した。
店内では、「若い人たちに紙、絹、表具の重要性を知ってもらいたい」と、ギャラリーも運営。ガラス張りの入り口と天井高4.2mの空間が印象的だ。

数寄和のロゴは、サントリーのCMなどを多数手掛けた副田高行さんのデザイン

数寄和のロゴは、サントリーのCMなどを多数手掛けた副田高行さんのデザイン

若い制作者や作家の卵を応援

社名の由来は「和が数寄(好き)、和(日本の職人仕事)にこだわって守っていきたい」。ギャラリーも日本画の展示から始めた。現在は「見に来る人にもっと楽しんでもらいたい。日本の若い制作者を応援したい」と、日本画だけでなく、洋画から工芸作品まで幅広く展示している。
近所の「酒房高井」にも数寄和で購入した絵が飾られている。
2010(平成22)年からは毎年夏に、表具・額装の専門家であるスタッフが審査を行う、未発表作品の公募展「ギャラリーへ行こう」を開催。数寄和は貸しギャラリー営業を行っていないが、受賞作にはギャラリーでの個展開催の権利が贈られる。2022(令和4)年の同展では、幅広い年齢層の作家の卵たちによる、60点余りの油画、日本画、版画、土絵などが展示された。
開催イベントについては、公式ホームページや公式Twitter(ツイッター)に情報を掲載している。

ギャラリーの壁の奥にある倉庫には岸田さんが企画した特注の布や和紙などが多数用意されている

ギャラリーの壁の奥にある倉庫には岸田さんが企画した特注の布や和紙などが多数用意されている

布を合わせると絵の力がわかる

数寄和では、ギャラリーに展示された絵を購入できるだけでなく、専門知識を持ったスタッフと相談しながら作品に合う額をオーダーメイドできる。
また、手持ちの掛け軸の修復や、絵をインテリアに合うよう額装し直す相談も可能だ。岸田さんは「やさしい絵に柄や色、箔の強い裂(※2)は合わない。裂を合わせると絵の力がわかる」という。裂についてはニューヨークのメトロポリタンなどの美術館、芸術・美術大学からの相談も受けており、倉庫にはそのような依頼に応じてつくられた希少な手織り金襴緞子(きんらんどんす)などもある。
また、2017(平成29)年からは、支持体(※3)となる良質の和紙を作るため、仲間と埼玉県ときがわ町で和紙の原料となるコウゾを育てている。

※1 表具:裂(きれ)または紙を糊(のり)を用いて貼り合わせ、掛軸・額・屏風などを作ること
※2 裂(きれ):掛け軸や額の表装に使われる織物のこと
※3 支持体:絹やキャンバスや紙などの画材、絵が描かれるもののこと

ボストン美術館の依頼により見本として企画した裂

ボストン美術館の依頼により見本として企画した裂

DATA

  • 住所:杉並区西荻北3-42-17ツインハイツ1F
  • 電話:03-3390-1155
  • FAX:03-5311-7260
  • 最寄駅: 西荻窪(JR中央線/総武線) 
  • 営業時間:10:00-19:00
  • 休業:日曜(展覧会・イベントごとに異なる)
  • 公式ホームページ(外部リンク):https://sukiwa.net/
  • 出典・参考文献:

    東京表具経師内装文化協会 https://tokyo-hyougu.jp/explain.html

  • 取材:大伊那琉衣、おおたき(区民ライター講座実習記事)
  • 撮影:おおたき
    写真提供:数寄和
    取材日:2022年07月02日
  • 掲載日:2022年10月31日