白石義清さん

「Sound Studio DOM」があるビルの屋上に立つ白石義清さん

「Sound Studio DOM」があるビルの屋上に立つ白石義清さん

「高円寺スタドムのヨシキヨさん」

高円寺駅南口で長年、音楽スタジオを経営しながら、熱い思いで店と人をつないでいる立役者がいる。「Sound Studio DOM」(以下、DOM) の店長・白石義清(しらいし よしきよ)さんだ。高円寺で活動するバンドマンやライブハウス関係者の間で「スタドムのヨシキヨさん」といえば、ちょっとした有名人。世代、国籍、ジャンルを超えて音楽好きが集う高円寺で、DOMを拠点に街を盛り上げている。2020(令和2)年には、新型コロナウイルスの影響に苦しむ高円寺の街のにぎわいと店の存続を呼びかける「TO BE CONTINUED...KOENJI」プロジェクトを始動し、クラウドファンディング(以下、CF)を成功させた。現在は高円寺と生まれ故郷の山口県下関市の2カ所で活動しつつ、DOMを経営。ウェブサイトやSNSで発信しながら仲間と共に高円寺の活性に関わり続けている。

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Sound Studio DOM(外部リンク)

白石義清さん。DOM店内で撮影

白石義清さん。DOM店内で撮影

人を見ると親切にしたくなる

「生まれは下関ですが、小さい頃からずっと阿佐谷在住で高円寺は行動範囲内です」。高校卒業後の1997(平成9)年にDOMでアルバイトを始め、2005(平成17)年からオーナー店長になる。この20年余りでDOMを利用したミュージシャンは5万人以上。練習用のスタジオとして使われるほか、多い時で年間180回ものライブイベントが開かれてきた。
「自分で言うのもなんですが、困っている人を見ると親切にしたくなる性格」と笑う白石さん。高円寺に集まる若きバンドマンたちのお兄ちゃん的な存在でもある。インタビュー中も「ヨシキヨさん、お疲れっす!」と人懐っこくスタジオの常連客が集まってくる。DOMに集うのはミュージシャンだけではない。高円寺で活動するアーティストも広く受け入れてきた。壁には「街の画家」高橋洋平さん作の巨大なツルが描かれており、スタジオや店内のスペースを使って前衛美術家の作品展示が行われることもある。

白石さんを「頼れるお兄ちゃん」として慕うバンドマンたち

白石さんを「頼れるお兄ちゃん」として慕うバンドマンたち

アーティストの念形師家元・須永健太郎さんの作品

アーティストの念形師家元・須永健太郎さんの作品

外国人客への親切心から生まれた「夜の音楽マップ」

DOMには国内の音楽スタジオでは珍しくDJ機材常設の部屋があり、それを目当てに訪れる外国人利用者が多いそうだ。「新型コロナウイルスが流行する前、高円寺の街は外国からのお客さんでいっぱいでした。来日前にあらかじめDOMに利用の連絡をくれる人も多くて、海外から直接予約が入ったケースだけでもオーストラリア、フランス、フィンランド。それからラトビア、アルゼンチン…」と白石さんが挙げた国名はざっと10数か国。そんな外国人客のために「ライブをやっている店がわかる英語のマップがあったら親切なんじゃないか」と思い立ち、2019(令和元)年5月「高円寺夜の音楽マップ―World‘s End Garden」初版を発行した。最初は一人で周りの店を訪ねては掲載依頼をすることからスタート。高円寺在住のデザイナー・剱持武昭さんが快くデザインを引き受けてくれたという。現在4版まで発行を重ね掲載店舗数は74に及ぶ。
この取り組みはその後、地図の発行に加え、掲載店を周遊する音楽イベント「WEG MUSIC WEEK」を含むプロジェクトに発展。なお、マップはDOMや掲載店で無料配布されているほか、同プロジェクトの公式サイトでも閲覧できる。2020(令和2)年から運営に参加したグルメライター・シゲタツヨシさんの情報サイトとタイアップし、昼の高円寺情報の発信にも力を入れ始めた。

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World‘s End Garden(外部リンク)

「World‘s End Garden」初版~4版

「World‘s End Garden」初版~4版

CFの共同運営者、高円寺DJスクールなかねゆうすけさん。DOMでDJ教室も開催

CFの共同運営者、高円寺DJスクールなかねゆうすけさん。DOMでDJ教室も開催

高円寺を助けてください!#SAVE高円寺

そんなボランティアともいえる活動を「誰に頼まれた訳でもないんですが、“高円寺に来たけど、つまらなかったな”と思われたくない一心で続けています」と話す白石さん。新型コロナウイルスで街の活気が失われていく様を見ているのは耐えられなかった。「音楽イベントは中止になり閉店も増え、このままじゃ独特の文化を発信してきた高円寺の風景が消えてしまうかもと思いました」
そこで2020(令和2)年5月、24の店舗、アーティスト、エンジニアの協力で「TO BE CONTINUED...KOENJI」プロジェクトをスタート。「CFによる協力店舗の運営資金の調達」と「高円寺ならではの商品を販売するサイトの立ち上げ」を柱とした活動だ。「初めてのCFは勝手がわからず“ゴムボートでハワイに行こうとしている”状態でしたが、続々と救世主が現れたんです」。DOMでDJ教室を開く、なかねゆうすけさんの教え子が偶然にもCF会社のキュレーター経験があり全面的に協力してくれたり、高円寺の路上画家・岩井シゲヨシさんがイラストを提供してくれたりと、たくさんの援軍を得た。「高円寺を助けてください!#SAVE高円寺」の訴えが多くの人々の高円寺愛を呼び覚まし、結果、60日間で605人の支援者から535万円を超える支援金を集めてCFは成功。現在、商品販売サイトには協力店舗やアーティストの個性的なオリジナルグッズが並ぶ。「ぜひ購入して高円寺を応援してください」

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TO BE CONTINUED...KOENJI(外部リンク)

CF支援者へのリターンの「うちわ」。協力店の店主の高円寺への思いがビッシリと書かれている

CF支援者へのリターンの「うちわ」。協力店の店主の高円寺への思いがビッシリと書かれている

CFリターンのTシャツ。右は岩井シゲヨシさんのイラストを使用

CFリターンのTシャツ。右は岩井シゲヨシさんのイラストを使用

支援額5万円コースのリターン、高円寺在住のフォトグラファー・George Yajimaさんの撮り下ろした写真集。コロナ禍での協力店の日常が活写されている

支援額5万円コースのリターン、高円寺在住のフォトグラファー・George Yajimaさんの撮り下ろした写真集。コロナ禍での協力店の日常が活写されている

下関の浜辺で高円寺を思う

現在、白石さんは下関と高円寺に仕事と住まいを持つ「2住生活」を送っている。「下関で“きれいな場所をきれいにする会(通称きれきれ会)”という環境保護活動を立ち上げて地域創生に取り組んでいます。最近は午前4時過ぎに起床。DOMの仕事や“きれきれ会”の事務作業を行った後、6時ごろより近所の漁港でゴミ拾いをし、子供を学校に送り出してから地元企業でも働く日々です」。9のつく日には「鳴き砂ビーチうしろはま」でのビーチクリーンに参加している。
その一方で下関からもSNSを駆使して高円寺の音楽シーンに関わり続けている白石さん。「まだまだコロナで厳しい状況も続いていますが、故郷で環境問題に関わるようになり社会を見る視野が広がりました。“きれきれ会”の活動に携わりながら、高円寺の街を楽しくする新たなアイデアを練っています」と力強く語ってくれた。

取材を終えて
DOMが入居するビル屋上のハシゴを上って、高い場所から見下ろした高円寺の街。駅前の風景を背にした白石さんは街を救うヒーローのようで、ひたすらかっこよかった。バンドマンたちと和気あいあいと語らいながら、白石さんにごちそうしてもらった缶サイダーの味が忘れられない。

白石義清 プロフィール
1978年生まれ。山口県下関市出身。幼少期から阿佐谷在住。「Sound Studio DOM」オーナー店長。高円寺の音楽関係店をつなぐ「World‘s End Garden」プロジェクト発起人。「TO BE CONTINUED...KOENJI」プロジェクト代表。

新型コロナの感染者が減少した2021(令和3)年12月、久々にイベントを開催できた(写真提供:World‘s End Garden)

新型コロナの感染者が減少した2021(令和3)年12月、久々にイベントを開催できた(写真提供:World‘s End Garden)

DATA

  • 公式ホームページ(外部リンク):https://www.instagram.com/suteteikiru/
  • 取材:内藤じゅん
  • 撮影:内藤じゅん
    写真提供:World‘s End Garden
    取材日:2022年01月31日
  • 掲載日:2022年03月07日