阿佐ヶ谷ロマンティクス

左からメンバーの貴志朋矢さん、有坂朋恵さん、古谷理恵さん。なじみ深い阿佐谷の街で

左からメンバーの貴志朋矢さん、有坂朋恵さん、古谷理恵さん。なじみ深い阿佐谷の街で

詩情豊かな音楽を奏でる5人組バンド

阿佐ヶ谷ロマンティクスは、有坂朋恵さん(ボーカル)、貴志朋矢さん(ギター)、本間玲さん(ベース)、古谷理恵さん(ドラムス)、堀智史さん(キーボード)の5人組バンド。 詩情豊かな音楽を奏で、ライブ活動や音楽配信サービスを通じて国内外のファンの心をつかんでいる。今回は貴志さん、有坂さん、古谷さんに、バンド名にもなっている阿佐谷で話を伺った。

バンド名の由来はビアガーデン
有坂: 早稲田大学のサークルでバンド活動をしていたメンバーで、2014(平成26)年に結成しました。卒業が近づきサークルを引退するときに、「でもまだ音楽を続けたい!」という話になったのです。
貴志: その年の春ごろから、就職活動をしながら曲を作り始めました。
古谷: リクルートスーツを着替えてライブをやっていましたね。
貴志: バンド名の「阿佐ヶ谷」は、阿佐谷ビール工房(2016年閉店)というビアガーデンでお酒を飲んでいた時に「バンドやろうか」という話になったことがきっかけで付けました。
古谷: 架空のバンド名を書き連ねるゲームをして、その中にあった名前なんですよ。

阿佐ヶ谷ロマンティクスの5人。「結成当初と少し変わりましたが、現在も大学時代のサークルメンバーで活動しています」(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

阿佐ヶ谷ロマンティクスの5人。「結成当初と少し変わりましたが、現在も大学時代のサークルメンバーで活動しています」(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

ボーカルの有坂朋恵さん

ボーカルの有坂朋恵さん

ギターの貴志朋矢さん

ギターの貴志朋矢さん

ドラムスの古谷理恵さん

ドラムスの古谷理恵さん

曲を通じて伝えたいこと

古谷: 曲は基本的に貴志が作曲していますが、他のメンバーがもってきたものを全員でこねくり回して曲にすることもあります。
貴志: 歌詞には、日常と非日常の間のような描写が多いのですが、生活の一部として聞いてもらいたい。音楽を聞きながら朝食を食べる人もいるし、通勤時の雑踏が嫌だからと聞く人もいる、各々音楽を聞くシーンは違いますよね。コロナ禍になってからは、音楽は精神安定剤のようだなと感じています。老若男女を問わず、誰かの励みや安定のきっかけになれるといいですね。
有坂: 私も、たくさんの人にそういう時間を過ごしてもらえたらうれしいな、自分たちの音楽が広まってほしいな、と思いながら歌っています。曲を聞いているときに、少しでも気持ちが前向きになるような瞬間を過ごしてもらいたい。
古谷: 普段音楽を聞かない人から「通勤時に聞いてるよ」と言われることもあるんですよ。そんな風に、音楽好きでは無い人にも聞いてもらえるといいですね。

働きながらのバンド活動
古谷: 平日は学童で働いたりもしています。周りの職員はバンドマンだということを知っていますが、子供たちにはあまり言ってません。「謎のお姉さんだよ」と言っています(笑)。
有坂: 職場で異動があり、残業が増えていますが、私は仕事以外は「バンドマンなので」というスタンスでいます。
貴志: みんな割と理解のあるところに勤めています。周囲からは「働きながらバンドは大変?」と聞かれますが、「みんなも休みの日にゴルフとか遊びに行くでしょ。自分はゴルフの代わりに音楽をしているだけ。好きだから全然大変じゃない」と話しています。

結成当時の写真。阿佐谷の川端通りで撮影(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

結成当時の写真。阿佐谷の川端通りで撮影(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

2019(令和元)年に発表した「独り言 / 焦がれ」のジャケット写真。阿佐谷で撮影(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

2019(令和元)年に発表した「独り言 / 焦がれ」のジャケット写真。阿佐谷で撮影(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

阿佐谷での日常

古谷: 阿佐谷には大学の時からよく遊びに来ていて、社会人になって住み始めました。今回のインタビュー場所でもある駅北口のバー「TABASA(タバサ)」とは、2018(平成30)年くらいから関わりがあります。最初は客として通っていましたが、店長の高原さんにバンドをやっている話をして働くことになりました。2020(令和2)年からはライブをしています。
貴志: 古谷が働くと言うので飲みに来ていたら、友達が増えました。
古谷: 居酒屋「越川」などで飲んで、「TABASA」で遊んで、「カラオケBanBan」とかに行って…、というコースがあったのです。
貴志: もっと若いころは朝5時頃まで遊んでいたね。今考えると無茶をしてたな。
有坂: 古谷が以前「更科そば店」の近くに住んでいたので、入り浸っていました。家に泊まって昼に起きておそばを食べて元気になるという感じ。
古谷: 私は「えのけんラーメン」と中華料理の「朝陽」がお気に入りです。「えのけん」ではスタミナ丼、「朝陽」では夏に冷やし中華をよく食べます。そういえば、「朝陽」で阿佐ヶ谷姉妹さんをお見掛けし、渡辺江里子さんとお話ししたこともあります。

インタビューを行った阿佐谷の「TABASA」

インタビューを行った阿佐谷の「TABASA」

古谷さんお気に入りの中華料理店「朝陽」

古谷さんお気に入りの中華料理店「朝陽」

阿佐谷の街への思い

貴志: アーティスト写真は阿佐谷でしか撮影していないんですよ。
有坂: 阿佐谷の街の中で撮りたいなあと思うことが多くて。
古谷: みんなで散歩した場所で撮影したこともあります。ブランコに乗っている写真は、私が以前住んでいた近所で撮りました。
貴志: 2015(平成27)年にリリースした「春は遠く夕焼けに」のCDジャケットは、イラストレーターの町田ヒロチカさんが、結成のきっかけとなった阿佐谷ビール工房を描いてくれました。今はもう存在しない風景が残ったことは意味があるのかなと感じています。阿佐谷も変わってなさそうで変わっていますね。
古谷: 新しい飲食店もできたと聞いて、行きたい場所も増えてきました。しばらく阿佐谷でお酒を飲んでいないので気になっています。
貴志: 現在、高架下のビーンズ阿佐ヶ谷がある場所には、阿佐ヶ谷ゴールド街(2015年閉館)や、洋食店「クロンボ」(2011年に高円寺へ移転)がありました。そこでもアーティスト写真の撮影をしました。今はきれいになったけど、さみしいな。でも、スターロード商店街がある限り変わらなさそう!?
有坂: 阿佐谷の街のごちゃっとした感じがいいねと、バンド名を付けたところもありますし。
古谷: お店はだいぶ入れ替わったけれど、阿佐谷の良い雰囲気は変わっていませんね。

ブランコに乗って撮影したアーティスト写真(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

ブランコに乗って撮影したアーティスト写真(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

閉店した阿佐谷ビール工房が描かれている「春は遠く夕焼けに」のジャケットイラスト(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

閉店した阿佐谷ビール工房が描かれている「春は遠く夕焼けに」のジャケットイラスト(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

海外活動と新たな目標

貴志: 2018(平成30)年7月にフジロックで演奏し、その年の11月には中国の上海(しゃんはい)と蘇州(そしゅう)でも演奏しました。
古谷: 日本のバンドが何グループか出演する、日本のバンドの日みたいなイベントです。海外で自分たちの音楽が聞かれている実感はなかったのですが、いざ行ってみると、口ずさんでいる人もいて、本当に聞いてくれているんだとうれしくなりました。中国語であいさつを覚えたりもしました。
貴志: 持って行ったCDも爆売れし、行列ができて、サインして、写真を撮って…、みたいな感じ。
有坂: ちやほやされました(笑)。
貴志: 最近はストリーミング配信を利用する人が多いので、どの国でどのくらい自分たちの曲が聞かれているのかわかります。ストリーミングサービスの一つ「Spotify」では、6割がアメリカ、台湾、フィリピン、インドネシアなど海外からの再生です。自分たちの音楽が、少しずつ海外でも受け入れられていると感じます。
有坂: 海外の方に聞いてもらっているのは不思議な感じ。インスタグラムで「何で私たちの音楽を知ったの?」と質問を投げかけたら、「インドネシアのジャカルタにあるカフェや百貨店で流れてた」という答えが返ってきました。曲を聞いた人が調べてストリーミングを利用してくれているのだなと感動しました。そういう人たちに会いたいなという気持ちです。
貴志: 2020(令和2)年にも台湾で演奏することがほぼ決まりかけていましたが、コロナにより中止になって残念です。
古谷: 海外から声が掛かったら、ぜひまた行きたいです。
貴志: それと、今まではインディーズのレーベルに入っていたのですが、2019(令和元)年くらいから自分たちでやってみようと製作費を自分たちで持って、流通会社を回りCDの流通をお願いしています。現在は、2022年1月にアルバムを出す準備を進めています。3年ぶりのアルバムになりますが、来年からは毎年コンスタントに出せるようにしたい。頑張ればどのくらいまで行けるのか挑戦中です!

取材を終えて
社会人としての役割をこなしながら音楽活動を続けることは簡単ではないはずだ。それでも、彼らがバンド活動について話す時はとても楽しそうだった。阿佐ヶ谷ロマンティクスの音楽への情熱や思いが記事を通して伝わるとうれしい。

阿佐ヶ谷ロマンティクス プロフィール
2014年春、早稲田大学のサークルメンバーで結成。ロックステディやレゲエといった中南米音楽の要素を、ニューミュージックやティンパンアレイといった叙情的な日本語ポップスへと落とし込んだ、バンド名の通りロマンティックなナンバーを奏でるグループ。2015年にシングル「春は遠く夕焼けに」をインディーズでリリース。国内外のフェスに出演。

プレゼントのお知らせ
※プレゼントの応募は締め切りました。たくさんのご応募、ありがとうございました。

阿佐ヶ谷ロマンティクスのセカンドアルバム「灯がともる頃には」に、貴志さん、有坂さん、古谷さんの直筆サインを入れて、バンドTシャツとセットで1名の方にプレゼントします。ご希望の方は、こちらからご応募ください。(締め切り:2021年12月12日 日曜日)。当選された方には、送り先を確認するメールを12月17日までに送信いたします。

2022年1月に発売予定のCD「大人幻想」のジャケット。3年ぶりのアルバムにメンバーの気合いも入る(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

2022年1月に発売予定のCD「大人幻想」のジャケット。3年ぶりのアルバムにメンバーの気合いも入る(写真提供:阿佐ヶ谷ロマンティクス)

コロナ禍になるまでは、練習が終わったらご飯を食べたりお酒を飲んだりコミュニケーションをとっていたという

コロナ禍になるまでは、練習が終わったらご飯を食べたりお酒を飲んだりコミュニケーションをとっていたという

3人のサイン入りCD「灯がともる頃には」と、バンドTシャツをセットで読者1名にプレゼント!

3人のサイン入りCD「灯がともる頃には」と、バンドTシャツをセットで読者1名にプレゼント!

バンドTシャツ

バンドTシャツ

DATA

  • 公式ホームページ(外部リンク):https://asagayaromantics.weebly.com/
  • 取材:みすみほ
  • 撮影:TFF、村田理恵
    取材日:2021年09月23日
  • 掲載日:2021年11月29日
  • 情報更新日:2021年12月13日