かがやき荘西荻探偵局

著:東川篤哉(新潮文庫)

『謎解きはディナーのあとで』で第8回本屋大賞を受賞した東川篤哉(ひがしがわ とくや)氏の連作ミステリー短編集。2016(平成28)年に刊行された『かがやき荘アラサー探偵局』から2019(平成31)年4月に改題された。
主な登場人物は西荻窪のシェアハウス「かがやき荘」で共同生活をするアラサー女子三人組と、実業家の大家・法界院法子(ほうかいん のりこ)、法子から3人への伝令役を務める秘書の成瀬啓介。アルバイト暮らしで家賃滞納が続く3人に、法子が家賃を免除する代わりに、身内に起こった殺人事件を解決するよう頼むところからストーリーは始まる。にわか探偵として活躍することになった、リーダー格の小野寺葵、ツインテールがトレードマークの関礼菜、ボーイッシュな占部美緒、それぞれの個性が輝く一冊。

おすすめポイント

実在する杉並の場所がいくつも登場し、読む人に親しみを感じさせる。法子の住まいは「荻窪駅の南側に延びる商店街から環八通りの交差点を渡ったお屋敷町」で、かがやき荘の所在地は「西荻窪駅北口から狭い商店街の通りを進んだ女子大にほど近い住宅街の一角」という設定だ。あの辺りだろうか、この道だろうかと実際の町の様子を想像しながら読み進められるところが楽しい。発生する事件は殺人などシリアスだが、3人の言動がコミカルなので、気軽に読み進められる。続編の『ハッピーアワーは終わらない―かがやき荘西荻探偵局―』と併せてシリーズで読みたい。

西荻窪の静かな住宅街。「四角四面の二階建てコンクリート建築」と描かれているかがやき荘は、こんな住宅街の一軒がモデルだろうか

西荻窪の静かな住宅街。「四角四面の二階建てコンクリート建築」と描かれているかがやき荘は、こんな住宅街の一軒がモデルだろうか

DATA

  • 取材:雪ノ上ケイ子
  • 撮影:雪ノ上ケイ子
  • 掲載日:2020年11月02日