ネオ書房

カオス(混とん)に満ちた空間の店内

カオス(混とん)に満ちた空間の店内

評論家の切通理作さんが思い出の店を継承

阿佐谷にあるネオ書房は、一見昔ながらの小さな古書店。だが、この店は2019(平成31)年に閉店した貸本屋の「ネオ書房」が、同年8月に古書店としてオープンした新しい店である。
新たな店主は切通理作(きりどおし りさく)さん。切通さんは、サントリー学芸賞を受賞した『宮崎駿の<世界>』(筑摩書房)などの著作があり、映画や若者文化についての評論家として知られる。1954(昭和29)年に創業した貸本屋の「ネオ書房」は、切通さんにとって、子供の頃によく漫画を借りた思い出深い店だった。成人後は利用する機会は減っていたが、たまたま通りがかりに「閉店セール」の表示を見て、以前から構想していた古書店をここでやろうと思い立ったという。すぐに元の店主と交渉して店舗を借りることにし、店舗の内外装だけでなく店名もそのままに引き継いだ。

松山通りにある店舗。外観は貸本屋「ネオ書房」のまま

松山通りにある店舗。外観は貸本屋「ネオ書房」のまま

駄菓子や怪獣も売るレトロな雰囲気の古書店

約22㎡の小さな店内には、両側と奥の壁に作り付けの本棚がある。多くを占めるのは映画、漫画、文芸などの本や雑誌。店の本の約7割は切通さんの蔵書で、自身の著作も並べている。また、ビデオやレコードに混じり、懐かしい怪獣の人形もところ狭しと置かれ、子供たちのための駄菓子も売られている。昭和時代を思い出す、とても懐かしさを感じる空間だ。「最初は自分の興味ある分野に絞り、個性的な品ぞろえにすることを考えた。一方で、地域の人や子供たちに喜んでもらえる店にしたいとも思った」と切通さん。開店3カ月ほどは子供客といっても親子連れだけだったが、最近は子供たち同士の来店も増えたという。

切通さんの著作や懐かしい怪獣たちも並ぶ

切通さんの著作や懐かしい怪獣たちも並ぶ

知に関するあらゆるニーズに応える古書店が夢

「新刊書店では大きくても売るのは出版社に在庫がある本だけ。一方、小さくても古本屋には制約はない。店主次第でどんな本でも扱える」と切通さんは語る。店を訪れる客からは、本についてだけでなく、時には想像もしない問い合わせを受けるそうだ。「外国人の客から日本の古い写真を探している、と尋ねられたことがある。古本屋だが、本だけでなく知に関するあらゆるニーズに応えていきたい」と笑う。
阿佐谷では新刊書店の閉店が続き、古書店の役割が増している。「散歩がてらに寄ってもらえる店にしたい」と、高い値が付く本を店の外の均一価格の棚にも紛れ込ませたりと、客を呼び込むための工夫もしている。
また、店の2階のスペースを利用して、映画の上映会やさまざまな講座も開催している。新生「ネオ書房」を舞台に、切通さんの評論家と古書店主、二足の草鞋(わらじ)での挑戦が続く。

店主の切通さんと妻の香奈子(かなこ)さん。二人で店番を行う

店主の切通さんと妻の香奈子(かなこ)さん。二人で店番を行う

映画監督・友松直之氏によるシナリオ教室の模様。講座の情報は、店のチラシや切通さんのツイッターで知らせている

映画監督・友松直之氏によるシナリオ教室の模様。講座の情報は、店のチラシや切通さんのツイッターで知らせている

DATA

  • 住所:杉並区阿佐谷北1-27-5
  • 電話:03ー3339ー6378
  • 最寄駅: 阿佐ケ谷(JR中央線/総武線) 
  • 営業時間:13:00-20:00
  • 休業:木曜
  • 公式ホームページ:https://twitter.com/risaku
  • 取材:河合裕司
  • 撮影:河合裕司
  • 掲載日:2020年01月06日