岩森書店

荻窪駅のホームから見える老舗古書店

荻窪駅南口からすぐ近くにある岩森書店の開店は、第二次世界大戦後の1949(昭和24)年。現店主の岩森正文さんは、「父は、父の兄と共に親類が御徒町(おかちまち)で営んでいた本の卸売り店に勤めていましたが、戦争から戻った1947(昭和22)年頃に勤めていた書店が無くなってしまったので神保町で古本の露天売りを始め、やがて荻窪のこの店を開きました。その後、親類縁者の中に書店を始めたものが何人かいます」と語る。
1955(昭和30)年生まれの岩森さんは、子供の頃、荻窪駅南口の線路沿いにバラックが立ち並んでいたのを覚えているという。都電の発着場が南口から天沼陸橋を渡り北口に移ったのが1956(昭和31)年6月のこと。中央線沿線に書店があまりなかった時代には、帰宅途中の会社員や学生が荻窪駅のホームや車内から岩森書店の明かりを見つけて、夜遅い時間でも途中下車して本を買っていくこともあったそうだ。
1975(昭和50)年に父が亡くなり、大学生だった岩森さんが急遽店を継ぐことになった。「何もわからなくて見よう見まねで苦労しました」と岩森さん。当時は近くにもう一店、別の店舗を構えていたが、1985(昭和60)年に現在のビルに建て替わった際に店を拡張し、一店に集約した。
大手古本チェーンやネットが普及する以前には、さまざまなジャンルの本を扱っていたというが、今は文芸書、歴史、美術関連の本が中心。入り口から奥へ向かう二つの通路の両側の棚に、テーマ別に分類された本がぎっしりと並び、L字型をした店舗の奥の棚には、著者のサイン入りの本を集めたコーナーや、歴代の芥川賞・直木賞作品を集めたコーナーもある。整然と並べられた書棚や、半透明のグラシン紙でカバーされた本からは、岩森さんの本を大切に扱う気持ちが伝わってくる。「本が好きな人は自分の本に愛着があり、自分の本を売る場合には大切に扱ってくれる店を選びます」と言う、岩森さんの店が本好きから支持されている理由がわかる。
岩森さんは、ネット上での古書店のネットワーク「日本の古本屋」の設立から今も運営に携わる。「岩森書店」のウエブサイトでも、新着本の情報などを発信し、全国にむけて通信販売を行っているが、ネットでの通信販売と実店舗を両方続けていくことが大切だと考えている。「店舗に足を運んでくれるお客さんとの信頼関係を築くことが大事。これからもお客さんに喜んでもらえる店でありたいですね」

DATA

  • 住所:杉並区荻窪5-30-12
  • 電話:03-3398-9392
  • 最寄駅: 荻窪(東京メトロ丸ノ内線)  荻窪(JR中央線/総武線) 
  • 営業時間:11:00-21:30
  • 休業:火曜日
  • 公式ホームページ:http://www.iwamorishoten.jp/
  • 出典・参考文献:

    『中央線古本屋合算地図』岡崎武志、古本屋ツアー・イン・ジャパン(盛林堂書房)

  • 取材:河合裕司
  • 撮影:河合裕司
  • 掲載日:2018年09月10日

荻窪駅の東京寄りのホームからよく見える

荻窪駅の東京寄りのホームからよく見える

整然と本が並ぶ店内

整然と本が並ぶ店内

店主の岩森正文さん

店主の岩森正文さん

絵本作家・スズキコージ氏デザインの包装紙。店で購入するとかけてもらえる

絵本作家・スズキコージ氏デザインの包装紙。店で購入するとかけてもらえる