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シアター!

著:有川浩 (メディアワークス文庫)

『図書館戦争』シリーズ(※)で大ブレイクした有川浩さんが、演劇を題材に書いた小説。
主人公の春川巧は、幼少期に人見知りを克服するために演劇ワークショップの児童コースに参加。脚本家としての才能が開花する。大学在学中に劇団「シアターフラッグ」を立ち上げて多くのファンを得たが、劇団は公演のたびに赤字を出し、とうとう300万円の負債を抱えてしまう。崖っぷちの巧が頼ったのは、兄であるサラリーマンの春川司。司は弟が演劇で生計を立てることを快く思っていないが、「2年間で劇団の収益から負債を返済し、もし返済できなかった場合には劇団を潰すこと」を条件に負債を肩代わりする。また、自ら劇団の予算や経理を厳しく管理する「鉄血宰相」として運営に加わり、巧と団員たちの劇団の立て直しが始まった。
おすすめポイント
司は子供の頃からずっと巧を心配し続け、巧は兄に甘えてきた。劇団主宰になってもどこか頼りない巧が司に「兄ちゃん」と話しかける場面は、兄弟ってこんな感じなんだろうかと暖かい気持ちになる。
西荻窪駅から15分の風呂なし築28年のアパートが巧の住居兼事務所代わりとして書かれ、また劇団の再起をかけて公演する劇場も「荻窪総合文化センター」という名称で登場。劇場が多数あり、演劇祭が開催されるほど演劇が盛んな杉並を想像させる。
2011(平成23)年には第2巻である『シアター!2』が刊行。この巻で負債は半分以下にまで減る。果たして劇団は存続できるのか?シアターフラッグ団員の人間模様や生き方の変化も含めて、続編の『シアター!3』の発売が待ち遠しい。

※『図書館戦争』シリーズ:架空の日本を舞台に繰り広げられる小説。人権侵害の表現を規制する「メディア良化法」と戦う女性図書隊員の物語。アスキー・メディアワークスより出版。2013(平成25)年映画化。

DATA

  • 取材:雪ノ上ケイ子
  • 掲載日:2015年07月21日