中学校の今

杉並区の取組み

杉並区には、区立中学校が23校ある。「特色ある」活動から見られる、杉並区の取組みを紹介したい。特色のある活動というと、職場体験、修学旅行、駅伝、小中交流授業などさまざまある。ここでは、いくつかの活動を取り上げてみる。

三ツ星の隊員を目指そう! 中学生レスキュー隊

杉並区中学生レスキュー隊は、中学生が災害時に役立つ知識・技能を身につける活動に参加する組織で、各中学校生徒の有志によって編成されている。杉並区教育委員会事務局学校支援課の杉本さんは「中学生レスキュー隊は、中学生の防災・地域貢献意識の向上を図ることを目的に、平成17年度から編成が進められ、隊員数は、当初6校122人から24年度には、2倍を超える326人(23校)に増えました。」と語る。各校の隊員が集まる合同訓練では、AED(自動体外式除細動器)の使い方等を学び、平成24年1月には立川都民防災教育センター等への施設見学を行った。また、学校によっては、杉並区消防団合同点検や近隣の小学校の震災訓練、自校の震災救援所の訓練にも積極的に参加している。平成19~21年度には、夏に福島県南相馬市で訓練や海岸清掃などの社会貢献活動を行う合宿も行われた。 
中学生レスキュー隊の隊員には帽子とウインドブレーカーを配布。年度末の修了式では、隊員に☆印が入った修了証が渡され、隊員経験年数に応じて☆の数が増え、3年間続けた生徒には、☆印が3つ入った修了証が渡される。

実施校の一つ、杉並区立大宮中学校では、橋本校長先生、副校長先生の指導の下、現在8人のレスキュー隊員が活躍している。その中の1年生たちにインタビューをした。レスキュー隊員だった兄や友達の勧めで入った男子生徒は、活動するうちに「災害が起こった時には、ぼくが足の悪い祖父母を助けたい」と言い、また「人の役に立てる職業につきたいと思うようになった」との回答も。杉本さんは「レスキュー隊活動で前回見かけた生徒と再会できるのは、嬉しいことです。生徒たちが飽きることのないよう、事業内容に工夫を凝らしていきたい」と笑顔をみせた。

中学校レスキュー隊員・合宿

中学校レスキュー隊員・合宿

寒空の下での熱い戦い 中学校対抗駅伝大会

杉並区中学校対抗駅伝大会は、年末に行われる恒例のスポーツイベントだ。2000(平成12)年に始まり、2014(平成26)年12月14日に第15回目を迎えた。コースは都立和田堀公園陸上競技場(済美山運動場)内と荒玉水道道路を周回する全長約9km。1チーム5名が、応援に詰めかけた友達や保護者、地域の方々の声援を受けながらトラックや公道を快走する。
2014年度は杉並区内の公立・私立から男子24校、女子23校が参加。これに、招待された南相馬市の中学生チームも加わった。レースの合間には中学校の吹奏楽部や和太鼓部の演奏が行われ、競技アナウンスも放送演劇部が担当。出場する選手だけでなく、文化部の生徒たちも大会の一員として活躍している。また、前走を務める日本体育大学陸上競技部をはじめ、区内のスポーツ団体やPTA、警察署、消防署、企業など、多くのボランティアスタッフが協力しているのも大会の特徴だ。スポーツ振興課の担当者は、「中学校の活動を地域ぐるみで支えている大会です。回を重ねるごとに定着し、この大会への出場を目標にしている生徒もいます。ぜひ応援にお越しいただき、がんばる生徒たちの姿を見てもらいたい。」と語る。
どのチームも厳しい練習に耐えた成果を発揮すべく、一丸となって勝負に挑んでいた。表彰式のあと、各校の応援団から拍手で迎えられた選手たちは、みな冬晴れの空のように澄んだ笑顔であった。

たくさんの声援を受け、スタート(写真提供:スポーツ振興課)

たくさんの声援を受け、スタート(写真提供:スポーツ振興課)

仲間と力を合わせ、たすきをつなぐ(写真提供:スポーツ振興課)

仲間と力を合わせ、たすきをつなぐ(写真提供:スポーツ振興課)

過去には、青梅街道から環八、神明通り、荒玉水道を回る公道を、白バイの先導で走る大会もあった

過去には、青梅街道から環八、神明通り、荒玉水道を回る公道を、白バイの先導で走る大会もあった

13歳のハローワーク、杉並区の取り組みの特徴  職場体験学習

杉並区の区立中学校の職場体験学習は、平成17年度から連続した5日間で実施するようになった。これは東京都のモデル校として実施されたのが始まり。他区には見られない杉並区の特徴といえよう。済美教育センターの指導主事の田村さんは「職場体験学習の日数が短いと、生徒はお客様扱いになってしまいます。連続した5日間ですと生徒自身が体験を通して仕事をすることについて見えてきたり感じたりすることがあります」と語る。職場体験学習は中学2年生を中心に行われている。杉並区では『職場体験学習 プロジェクト&ワークブック』を公立学校の対象生徒全員に配布している。各学校ではワークブックを適宜利用しながら事前事後学習をする。体験先の確保は学校で行っていて、中には生徒が希望する事業所に、アポイントを取ることから始める場合もあるという。また、体験事業所は、杉並区内および近隣区市にある行政機関や民間事業所。学校と地域が一体となって行われているのも特徴といえる。事業所の中には区内で職場体験学習をして、再び地域に帰ってきてほしいとの思いがある。そこでいち早く手を挙げたのが、サミット株式会社だ。平成11年度頃から受け入れが始まり3年後には職場体験学習のマニュアルを作成して受け入れるようになった。平成23年度のアンケートで、13校の中学校で95パーセントの生徒が職場体験学習を「有意義な体験だった」と肯定しているという。今後の課題は、受け入れてくださる企業を広げていくため、区内の事業所に取り組みを周知していくことである。

体験を将来に託す「職業の話を聞く会」 キャリア教育の実践
キャリア教育とは、子どもたちが将来、社会的・職業的に自立することで自分らしい生き方の実現を目指すための教育である。小学校から始まり中学校の職場体験、高校のインターンシップへと繋がっていて総合的な学習の中でリアルな世界を体験していくのが重要とされる。

杉並区立中学校の例を取り上げる。2月上旬に行われた1年生の授業の「職業の話を聞く会」だ。初めに校長室に生徒代表者達が先生を迎えにくる。初対面の先生である。先生とは、サッカーのFC東京のコーチ、アニメ脚本家、カメラマン、IT企業、旅行会社、パン屋、スポーツ雑誌編集者の方々だ。生徒は一クラス13人ほどで、先生達はそれぞれの仕事内容をわかりやすく説明していく。その方法は、パン屋さんが作ったパンを配り試食しながら話を聞いたりマンガ脚本家が黒板を使って猫のイラストを描きどのように動かしていくのかを表現したり、パソコンを駆使して写真や図をスクリーンに映し出したりと、さまざまな工夫を凝らして授業が行われていた。また、杉並区出身のFC東京で活躍する田邊選手の話が出たり、配布されたスポーツ雑誌には「杉並区の女子サッカー事情」などが掲載されていたりして地域への思いが感じられる。一方、生徒達は熱心にメモを取ったり活発に質問したりする姿がみられた。生徒達には、職業に対する熱い思いは届いただろうか。

キャリア教育授業の様子

キャリア教育授業の様子

3割以上の中学校は私服通学

杉並区の区立中学校では23校のうち標準服指定14校、私服等9校(23年度)である。3分の1以上が私服なのはご存知だろうか。
学生服には、日本最初の詰め襟型学生服、ミッション系女学校で始まったセーラー服、乱れた服装の規律回復の期待から登場したブレザー型などがある。では、杉並区内の区立中学校での生徒の服装はどうだろう。
済美教育センターの統括指導主事の出町(いずるまち)さんによると、「各校の周年記念誌等を見ると、開校当時男子生徒に関しては、詰め襟型の服を着用している生徒が多いが女子生徒についてはセーラー服型または私服が多い。おそらく、開校時の時代背景等から、全員が揃ったものではなかったものと思われる。」という。
毎日の通学に私服は、さぞかし大変ではないか。入学式などの式典、合唱コンクールなど行事の際はどうしているのだろう。杉森中学校にお子さん(女子生徒)が通う、元服飾メーカー勤務の保護者は「気候に合った服を素材から選べ清潔な物を用意することが出来る」という。また「学校の行事では、上は襟のある白いもの下は紺または黒色で、ジーンズは不可といったおおまかな決まりがあるだけですが自然に中学生らしい服装になります。明日は○○の行事があるからこんな服装にしようといったように子どもの自主性が育ったようです」。出町さんによると、「中学生らしく、華美をさけ機能的なものを心がけ、学習環境にふさわしい服装とする」といったガイドライン等が各校で定められているとのこと。
自由な状況の中で自ら考え選ぶことで自主性が育まれているのかもしれない。

DATA

  • 取材:やーちゃん、西永福丸
  • 撮影:やーちゃん、西永福丸
  • 掲載日:2012年02月20日
  • 再取材日:2015年03月16日