荻窪ルースター物語(ライブハウスのつくりかた) 

著:佐藤ヒロオ 写真:向殿政高(ポット出版)

荻窪ルースターは1997年、荻窪にできたジャズやブルース、ラテンなどを聴かせるライブハウスだ。狭い店ながらも日本のトップミュージシャンが連日熱演を繰り広げているので、音楽界に顔の広い方が始めたのかと思いきや、読んでみるとそうではない。本書には、知り合いもいない荻窪にライブハウスを立ち上げたマスターの自伝と開店してからの紆余曲折が赤裸々に綴られている。名もない小さなライブハウスが全国に知られる存在となったのにはわけがあった。開演前には初めてのお客様をも和ませる前説、休憩時間にはマジックショー、毎夕5時にお客さんに送られる空席情報などのメールマガジン。独創性と地道なサービスの積み重ねがミュージシャンやお客さんの心を捕まえ、話題となって広まって行ったのだろう。たとえ異業種であろうとも何かの参考になりそうな気がするし、自己啓発的に読むのもいい。「音楽に詳しくないお客さんや初めて来られたお客さんにもファンの方にも同じように楽しんでもらえるにはどうしたらいいのかばかりを考えています」という佐藤マスターの言葉はこの店のコンセプトを言い表しているのかもしれない。
おすすめポイント
帯には「ライブハウスはバンドを育てる場所じゃない。生演奏を楽しんでもらう飲食店なんだ」という文字があるが、店の看板も店名より「音楽食堂」の文字が目立つ。音楽ジャンル的にちょっと通好みのライブハウスかと思いがちだが、巻末にある出演者歴には音楽通でなくとも知った名前が並んでいる。食堂という気軽さで幅広いミュージシャンの演奏を提供している場所が荻窪にある。杉並公会堂にほど近い場所にオープンした2号店についても書いてあるが、ここは誰でも貸切ライブや貸切パーティーができるそうだ。

DATA

  • 取材:小泉ヒロオ 
  • 掲載日:2014年06月09日