中央線がなかったら 見えてくる東京の古層

編著:陣内秀信 三浦展 NTT出版

中央線がなかったら…、逆転の発想で、東京西部の、古代に至るまでの姿を、建築史家の陣内秀信さん、マーケティング・リサーチャー の三浦展さんをはじめ都市学の研究グループが学術的に解明。明治時代、中央線は各地域の当時の中心地から離れた地点にあえて通された。以降、鉄道と駅を中心に町が発展、かつての地域の姿は現代では見えにくくなっているが、本書では、鉄道敷設前の武蔵野の自然と結び付いた生活、信仰、各地域のネットワークのありようを、古層をめくるように鮮やかに甦えらせている。3D地勢図に古代、現代の地図を重ねた図版を案内に、中野、杉並、多摩とまち歩きのルポルタージュスタイルで構成。寺社仏閣、名所旧跡、地域の老舗、古老も登場。楽しみながら、杉並の新たな魅力を発見をすることができる。
おすすめポイント
中野の鷺宮八幡神社から阿佐谷を通って大宮八幡宮へ、新宿から高円寺を通って妙正寺へ、中世、近世の信仰の道を辿る。紀元前のサルデーニャ島の文明調査の手法を杉並で応用したら見事にあてはまったという陣内さん。「わが成宗周辺にとって最も重要なのは青梅街道である…」、自身が育った成宗(現在の杉並区大宮・成田東・成田西のそれぞれの一部)の解明には、ブラタモリ(テレビ番組)の解説でお馴染みの気合いの入り方だ。すぐ傍にありながら気がつかないでいたいにしえの世界に遭遇する、郷土史ファンならずとも杉並区民必読の一冊だ。

DATA

  • 取材:井上直
  • 掲載日:2013年06月17日