高橋和の助さん

武士道精神を、やさしく小学生に

阿佐谷在住歴10年になる高橋さんは、広告代理店勤務。「嫁さんの実家が杉並なので近くで新居を探そうと。阿佐谷は、都心から近いにも関わらず、適度に静かでのんびりとしているところが、田舎育ちの自分に合うなあと」それから阿佐谷に暮らして10年。最近は、和の助のペンネームで、教育や地域活性のための新しいコンテンツづくりで注目されている。
道徳やマナー、礼儀といった日本古来の教えを、楽しくわかりやすく伝えるホームページ、『道徳エンターテイメント こども武士道』も和の助さんの作品。歌、ダンス、クイズ、ムービーなど、親子で一緒に遊びながら学べる武士道コンテンツが揃っている。
『こども武士道』を通じて高橋さんがいちばん伝えたいことは、「ちゃんとコミュニケーションすること」と「やりぬくこと」の大切さ。「武士に二言はない」「義を見てせざるは勇なきなり」などの言葉には、子どもの頃から身につけたい大切な教えが詰まっている。
ともすれば説教くさくなりそうな題材を、動画などのビジュアルでおもしろく伝えているのがポイント。ネットのほかに、書籍もシリーズで二冊出版している。

困ったとき、武士だったらどうするか

高橋さんは、各地で小学生対象の『武士道ワークショップ』を開いている。2011年6月25日の『2011子どもフェスティバル(阿佐谷地域区民センター)』のワークショップの一部を紹介しよう。その日集まったのは未就学児が中心。ひとりひとりの自己紹介のあと、いよいよ本題の武士道へ。
「友だちがケンカしていたら?」
「道でお金を拾ったら?」
子どもを前に呼び、質問をし、答えを待つ。ところどこでアドリブをはさみ、子どもや親を笑わせ、和の助ワールドに引き寄せていく。
子どもたちが、少しずつ集中してきたところで、何気なく質問する。
「震災の時は、どうしてた?」
「家にいた」「幼稚園で●●してた」と答える子どもたち。そしてさらに質問する。
「震災で困っている人たちに、みんなができることはあるかな?」

被災地へ。キャラクターボランティア

震災後、高橋さんは、菊千代の『着ぐるみ』を連れて被災地を訪れる『キャラクターボランティア』をはじめた。
「広告代理店として復興のためにできることを考えたんです。菊千代は有名ではないけれど、キャラクターには子どもを惹きつけ、元気づける力があるんです」
義、勇、仁、礼、名誉、忠義、克己心などの武士道の教えは、震災後の今こそ見直されるべき、日本人の原点ともいえる。
何より、やさしくユーモラスなお父さんのような高橋さんと、武士の心を持った菊千代とのコンビで、被災地の子どもたちを元気づけてほしい。

YouTubeで10万アクセス、「阿佐谷レイニーブルー」

♪あなたとはじめて逢ったのは、七夕祭りのLast day
快速が土日通過するなんて知らなかったの♪

こんな出だしではじまるポップス調の曲にあわせてアニメが流れる『阿佐ヶ谷レイニーブルー』。作詞は高橋さん。アニメソングを使った、地域活性化の新しいコンテンツづくりが、高橋さんのもうひとつの活動だ。
地域振興とアニメを組み合わせた試作品のテーマは、愛する地元、阿佐谷。YouTubeにアップされて1年半で10万アクセスを超え、2010年ビデオアワード音楽部門9作品にノミネートされた。
とはいえ、筆者のまわりの阿佐谷住民に聞いてみても、このアニメを知る人はいない。今のところ、知る人ぞ知る、名作?なのだ。

ほめていない応援ソング

「阿佐谷ってどこか残念なところがあって。そこが愛しいというか‥。決してほめていない応援ソングなんです」
YouTubeへの書き込みの多くは、かつての阿佐谷住民による「懐かしい」という声。「住んでいる頃は気づかなかったが、阿佐谷ってステキな町だったんだ‥‥」というコメントも。アニメキャラクター以外に登場するのは、リアルな飲食店や美容院、花屋, カフェなど。あの釣り堀も出てくる。そこで働く人たちも。
阿佐谷への思いを客観的に、ユーモアにくるんで伝えているからこそ、地域の良さを地域を越えて広く発信できるのかもしれない。
和の助さんによる次なるコンテンツが、楽しみだ。

高橋和の助 プロフィール
広告代理店のコンテンツプロデューサー
こどもコミュニケーションデザイナー
岩手県盛岡市出身

道徳を学べるコンテンツとして「こども武士道」を開発。2010年の『こども武士道 子育て支援広告』でキッズデザイン賞受賞。十和田市立新渡戸記念館や各地の小学校などで精力的にワークショップを展開する一方で、町おこしアニメ制作など地域コミュニケーションの活性化にも寄与している。阿佐ケ谷在住。2児の父。
YouTube阿佐ケ谷レイニーブルー

DATA

  • 取材:紙谷清子
  • 撮影:みっこ
  • 掲載日:2011年07月14日