沖縄料理本店 きよ香

「沖縄料理本店 きよ香」2代目店主の高橋貫太郎さんと、娘のみなとさん

「沖縄料理本店 きよ香」2代目店主の高橋貫太郎さんと、娘のみなとさん

高円寺の沖縄料理店のルーツ

「沖縄料理本店 きよ香」は、現店主である高橋貫太郎さんの母、高橋淳子さんが1961(昭和36)年に開業した老舗である。淳子さんは沖縄の石垣出身。「母が高円寺で開業した理由は、沖縄の公設市場に雰囲気が似ていたからでした。当時は沖縄料理店はまだ珍しく、都内に数店しかありませんでした。その頃の沖縄はアメリカの施政下にあり、料理に用いる食材の調達に苦労していたようです。例えば、ゴーヤ料理には九州産のものを代用するなど、工夫しながら沖縄の味を再現していました」と、貫太郎さんは語る。淳子さんが作る沖縄家庭料理は高円寺の人々に愛され、沖縄料理をメジャーにしていったという。

高円寺駅北口から徒歩約1分の路地にある。目印は赤ちょうちん

高円寺駅北口から徒歩約1分の路地にある。目印は赤ちょうちん

その日のお勧め料理がカウンターに並ぶ

その日のお勧め料理がカウンターに並ぶ

守り続ける沖縄の家庭料理の味

母から受け継いだきよ香の「おふくろの味」を、開業から60年を超えた今でも、貫太郎さんが守っている。店でお勧めの沖縄家庭料理3品を教えてもらった。
「ラフティー(豚の角煮)」(990円)は、焦げるぎりぎりまで半日かけて泡盛で煮込む。軟らかく、脂身のとろけるような口当たりが楽しめる一品。「母の頃から変わらない秘伝の味付けです」と貫太郎さん。
沖縄県外ではあまりなじみのない「ナーベラー(ヘチマの味噌炒め)」(880円)は、若いヘチマを使った家庭料理。沖縄では、ヘチマは、味噌汁やチャンプルーにも用いられる便利な食材だそうだ。
そして、定番の「沖縄そば」(880円)は、豚骨とかつおでだしをとっており、濃厚な味わい。石垣のかまぼこ、スペアリブ、スパムなど、沖縄ならではの食材もトッピングされている。

サラダが彩りを添える「ラフティー(豚の角煮)」

サラダが彩りを添える「ラフティー(豚の角煮)」

「ナーベラー(ヘチマの味噌炒め)」。味噌の香りが食欲をそそる

「ナーベラー(ヘチマの味噌炒め)」。味噌の香りが食欲をそそる

沖縄文化の発信地として

コーナーテーブルや座敷では、グループ客の会話が弾む。一人でふらりと訪れて、カウンターでお勧めの料理や酒を堪能するのも、きよ香の楽しみ方だ。沖縄出身のお笑いタレントや歌手、元沖縄県知事など、ゆかりの著名人からも愛されている。「具志堅用高さん(元ボクシング世界王者)は、うちのサーターアンダギーが好物と仰っていました」
貫太郎さんは「沖縄に感謝しながら、地元高円寺にお返しがしたい」と語る。きよ香や近隣の沖縄料理店で、沖縄民謡やフォークソングのライブなど、沖縄の文化を体感できるイベントも定期的に開催している。「三線や沖縄空手も広めていきたい。今後も、沖縄文化の発信地として、高円寺の街を盛り上げていきたいと思います」

▼関連情報
すぎなみ学倶楽部 ゆかりの人々>著名人に聞く 私と杉並>具志堅用高さん

「沖縄そば」。もちっとした麺の食感も楽しい

「沖縄そば」。もちっとした麺の食感も楽しい

店内には、創業者の高橋淳子さんの写真が飾られている

店内には、創業者の高橋淳子さんの写真が飾られている

DATA

  • 住所:杉並区高円寺北3-22-2
  • 電話:03-3339-5722
  • 最寄駅: 高円寺(JR中央線/総武線) 
  • 営業時間:17:00-24:00
  • 休業:年中無休
  • 補足:ラストオーダー:食事 23:00、飲み物 23:30
  • 公式ホームページ(外部リンク):http://www.dachibin.com/kiyoka/
  • 出典・参考文献:

    『ただ、誠を尽くして浮世を渡る』高橋淳子(日本出版社)

  • 取材:せきどまさゆき
  • 撮影:せきどまさゆき
    取材日:2023年05月22日
  • 掲載日:2023年07月18日