大石書店

戦前から高円寺の発展とともに

大石書店は、戦前から高円寺で営業する老舗古書店。「本郷の一貫堂書店で番頭まで務めた先代が、1931(昭和6)年、28歳で独立開業した店なんです」と現店主の大石功さんは話す。一貫堂書店は、古書の通信販売の草分けとして、東京だけでなく全国の顧客からの注文に応えていた。先代はそこで培った土地勘を生かし、独立の際、本郷と比べ出身地の兵庫県により近い東京西郊の高円寺に手頃な物件を見つけたという。
現在あるのは2号店のみだが、戦災で消失した1号店もあったルック商店街の通りは、開業当時、村道のようなところに店が点在する程度だったらしい。だが、周辺は人口が急増中で、軍人、医者、学者、学生などの読書人口が見込めたようだ。「終戦の年、先代は、疎開する人が本を処分するから今のうちにどんどん仕入れておくよう家族に言い残して、40過ぎで徴兵されました」。戦後に先代が復員し、再び稼業に精を出したところ、それら大量の本は飛ぶような売れ行きをみせたそうだ。昭和20年代は、戦時中の暗い時代から解放された人々の旺盛な読書欲に支えられ、仕入れたそばから売れる状態だった。また、当時のルック商店街の思い出として、大石さんは「坂の上に小さな映画館があり、映画館通りと呼ばれていました。仕事が終わると、人気スターの邦画を観に駆けつけたものです」と話す。
現在、大石さんはいつ辞めてもいいと言いつつ、娘さんと店を切り盛りしている。「私は古い人間なので、法律、経済、哲学、歴史、芸術などの学術的な本を並べたくなってしまうんですよ。娘が若い層にアピールできそうなおしゃれで手に取りやすい本も仕入れています」。文芸評論や現代思想から、ライトノベル、絵本、50円・100円均一文庫本コーナーまで、棚にぎっしりの品ぞろえ。左の写真で書棚が白っぽく見えるのは、「つねに本を最良の状態でお客さんにお渡ししたい」と、大石さんがどの本もパラフィン紙でカバーしているためだ。

DATA

  • 住所:杉並区高円寺南3-45-18
  • 電話:03-3311-6646
  • 最寄駅: 高円寺(JR中央線/総武線) 
  • 営業時間:11:30-19:30
  • 休業:日曜
  • 取材:青樹宙、TFF
  • 撮影:青樹宙、TFF
  • 掲載日:2017年06月19日

店舗外観。店の前のワゴンで掘り出し物がないかチェック

店舗外観。店の前のワゴンで掘り出し物がないかチェック

珍しい本や学術書を求めて来店する客もいる

珍しい本や学術書を求めて来店する客もいる

現店主で二代目の大石功さん

現店主で二代目の大石功さん