杉並の教育ビジョン

令和時代を創る、杉並の教育

都会にありながら緑が多く、子育て世代が暮らしやすい杉並区。2018(平成30)年、2019(令和元)年と2年連続保育待機児童ゼロを発表したことも記憶に新しい。子供の成長をまち全体で支え、見守っていく姿勢は、「共に学び共に支え共に創る杉並の教育」という区の教育の基本目標(※1)からもうかがえる。
2020(令和2)年に教育改革(※2)を控えた今、杉並の子供たちは学校で何を学び、地域の中でどのように育っているのか。区の教育ビジョンや、これからの教育の在り方について、区立済美(せいび)教育センターの平﨑所長に聞いた。

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杉並区立済美教育センター(外部リンク)

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全国に先駆けた、さまざまな取り組み

「区立学校では『杉並区教育ビジョン2012』(※3)に基づき、地域と連携協働による質の高い学校づくりを着実に進めています」と平﨑所長は話す。区は全国に先駆けて、学校教育現場へのICT(※4)機器の導入や、地域人材の積極的な活用を進めてきた。また、部活動活性化事業(※5)は、部活動への外部指導員の活用に早期から取り組んでおり 、他の地域からの視察が絶えないそうだ。「井出教育長は、未来を見据えて教育の在り方を考えることが大切だと常に話しています」と平崎所長。現状を把握し、未来を見据えながら着実に取り組みを進めている杉並の教育は、全国に一歩先んずる結果につながっている。

地域の大人が大活躍、みんなで育むまちの絆

区は「いいまちはいい学校を育てる 学校づくりはまちづくり」という考えのもと、地域全体で学校教育を支えるさまざまな取り組みを展開している。その例として挙げられるのが、文部科学省が進める地域学校協働本部のモデルとなった学校支援本部(※6)の設置だ。
学校支援本部は、家庭・地域・学校の連携による教育活動を推進する任意団体として、各学校に本部室を備えている。もともとは、2002(平成14)年度に全国初の試みである学校教育コーディネーター(※7)を新設したことからスタートし、やがて、個の支援である学校教育コーディネーターから、組織として学校を支援する学校支援本部に移行、2010(平成22)年度には全区立小中学校に設置されるに至った。
学校支援本部の取り組みの1つに、キャリア教育(※8)の一環として実施する職場体験の学習や、さまざまな職種のゲストティーチャー(※9)から話を聞く授業がある。学校支援本部がコーディネートした弁護士や建築家、獣医師などから働くことの意義や生きがいなどについて話を聞き、自分の生き方について考える活動で、児童や生徒のみならず、保護者からも「子供が自分を見つめ、将来を考える機会になった」と好評である。
平﨑所長は「区は学校の教育活動を通して、家庭と地域と学校が信頼関係を育み、学校を核とした地域の絆を深めています。地域の人々が教育に関わる仕組みがあるおかげで、子供、教職員、保護者、地域が目標を共有し、子供の学びや成長を共に支える学校づくりが進んでいます。杉並区民の皆さんは、教育にとても熱心で協力的です」と、区民の教育に対する関心の高さを強く語ってくれた。

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家庭、地域、学校、行政の役割と連携を通して、子供たちの学びをまちの人々みんなで支えている(画像提供:済美教育センター)

家庭、地域、学校、行政の役割と連携を通して、子供たちの学びをまちの人々みんなで支えている(画像提供:済美教育センター)

松溪中学校の「職業の話を聞く授業」では、ゲストティーチャーとして地元で活躍する翻訳家、弁護士、アナウンサーなどが登壇(写真提供:TFF)

松溪中学校の「職業の話を聞く授業」では、ゲストティーチャーとして地元で活躍する翻訳家、弁護士、アナウンサーなどが登壇(写真提供:TFF)

杉並のICT教育

区教育委員会が、このところ特に力を注いでいるのはICT教育である。2014(平成26)年度には、全区立小中学校の普通教室にデジタル教材を活用できる固定式電子黒板が設置された。タブレットパソコンも計画的に配備し、ICT機器を効果的に活用する学習が進められている。
2018(平成30)年1月、杉並公会堂で「杉並教育ICTフォーラム」が開催され、ICTを活用した授業について天沼小学校、杉並第九小学校、馬橋小学校による実践報告があった。新学習指導要領で示されたプログラミング学習についても、学年の発達段階に応じてプログラミング的思考を育む活動や、児童が情報社会を安心・安全かつ豊かに生きるための情報モラル教育などが紹介された。また、井出教育長と放送大学の中川教授、東北大学の堀田教授による座談会も行われ、参加した800人を超える保護者や学校関係者、地域住民が、共にICT教育を考え、区の取り組みの状況や方向性を共有できる機会になった。

「(仮称)就学前教育支援センター」の開設

ICT教育に加え、現在、区教育委員会が重点を置いて進めているのは、就学前教育の充実に向けた試みだ。区では、就学前の幼児に関する相談件数がこの5年間で2倍以上に増えたという。そのために、就学前教育に対する支援を総合的に展開する拠点として、2019(令和元)年9月に、成田西地区に「(仮称)就学前教育支援センター」を開設予定である。ここでは、保育者の研修、区立子供園などへの教育的支援、幼児教育に関する調査や研究が行われるそうだ。また、これまで済美教育センターで実施してきた就学支援相談を移管するとともに、区立子供園に通う特別に支援を要する園児に対する専門家による巡回支援を行い、就学前から義務教育にわたって一貫したサポートが行えるようにしていく予定である。

地域の人々が教育に対し、大きな役割を担っている杉並区。子供たちが杉並のまちを大切に思う気持ちを育み、子供を取り巻く人々の支援の輪が未来につながっていくことを期待したい。

※1 『杉並区教育ビジョン2012(※3)推進計画(平成29~31年度)』P40参照
http://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/529/bijon2012suisinkeikaku.pdf
※2 新学習指導要領が、小学校では2020(令和2)年度、中学校では2021(令和3)年度から全面実施、高等学校では2022(令和4)年度の入学生から年次進行で実施される。また、センター試験が廃止されて大学入試共通テストに変更される
※3 『杉並区教育ビジョン2012』:2012(平成24)年に策定された、同年度から2021(令和3)年度まで10年間にわたる区の教育施策基本計画。
※4 ICT:Information and Communication Technologyの略語。情報通信技術
※5 部活動活性化事業:中学校の部活動について、教員の負担軽減のために地域の人々による外部指導員や専門事業者を活用し、学校の実情に応じた支援を行う
※6 学校支援本部:地域と一緒に学校の教育活動などを支援するために設置された、ボランティアによるネットワーク型組織
※7 学校教育コーディネーター:学校から依頼された人材・教材探しや、交渉、調整、授業の実施を担うコーディネーター
※8 キャリア教育:キャリア(経験)を活かして、現在や将来を見据えることなどを主眼として行われる教育
※9 ゲストティーチャー:学校の授業や子供会の活動、その他の団体の活動などに招かれた一般市民の指導者のこと

杉並区立成田西子供園に併設される「(仮称)就学前教育支援センター」の完成予想図(写真提供:済美教育センター)

杉並区立成田西子供園に併設される「(仮称)就学前教育支援センター」の完成予想図(写真提供:済美教育センター)

DATA

  • 出典・参考文献:

    監修:杉並区立済美教育センター

  • 取材:加藤智子
  • 撮影:写真提供:済美教育センター、TFF
  • 掲載日:2019年08月13日