都丸書店

進歩的知識人を育んだ老舗

高円寺にある都丸(とまる)書店は、社会・人文系の学術書を中心にした専門古書店である。
創業は1932(昭和7)年。「群馬県出身の先代が、勤めていた日本橋の百貨店、白木屋(※)を辞め、25歳で古書店を始めました」と現店主の外丸和廣(とまるかずひろ)さんは話す。開店当初は高円寺駅南口からやや離れた場所(現在のルック商店街)にあり、店名は苗字の外丸の「外」の字を東京らしく「都」に変えて付けたのだという。労働問題に関わっていた先代は、経済学や西洋思想などの学術書、特にマルクス経済学関係の洋書を多く扱い、店には進歩的な知識人が多く出入りしていたそうだ。1938(昭和13)年に現在の場所に店を移転。「先代は第二次世界大戦で招集され、その間は店を閉じて、本を群馬の親戚の家に疎開させていました。店を再開したのは終戦から数年後で、当時、空襲で被災した高円寺駅周辺はバラックがひしめき、店があった場所もバラックに占拠されていたそうです」
先代のおいにあたる外丸さんが、大学進学のため群馬県から上京し、店の上階に下宿して仕事を手伝うようになったのは1965(昭和40)年頃。その時期に、高円寺駅の高架化があり、それに合わせ現在の建物を新築した。「大学を卒業して入社した当時は、今の店舗のほかに2店あり、社員は9人もいて、学術書が飛ぶように売れました。洋書目録を作成し、社会科学系の専門書店として知られるようになると全国からも注文が入りました。顧客には一橋大学などの高名な学者も多く、大学に特別な予算申請をして高価な洋書を購入されていました」。外丸さんも洋書の買い付けに海外へ出向くこともあったという。
先代は、1997(平成9)年に89歳で亡くなるまで店の仕事を続けた。跡を継いだ外丸さんは、先代のポリシーを守りながら店を経営している。整然とした店内は、経済学、日本史などに書棚が分類され、中には100万円を超える高価な洋書も並ぶ。「昔の学者は、貴重な本物の書籍で勉強することにこだわっていた」と懐かしげに語る外丸さん。現在の営業は週4日のみだが、価値ある「1冊」を求めに来る客の期待に応え続けている。

※白木屋:呉服店として江戸時代に創業し、明治時代に百貨店の先駆けとなる。後の東急百貨店日本橋店。1999(平成11)年閉店

DATA

  • 住所:杉並区高円寺北3-1-16
  • 電話:03-3337-3690
  • FAX:03-3337-6610
  • 最寄駅: 高円寺(JR中央線/総武線) 
  • 営業時間:13:00-18:00
  • 休業:火曜・水曜・日曜
  • 取材:河合裕司
  • 撮影:河合裕司
  • 掲載日:2018年05月28日

堂々たる店構え。ガラスのショーケースの中には高価な洋書が並ぶ

堂々たる店構え。ガラスのショーケースの中には高価な洋書が並ぶ

整然とした店内。棚はジャンル別に分類されている。函(はこ)入りの本が多い

整然とした店内。棚はジャンル別に分類されている。函(はこ)入りの本が多い

店主の外丸和廣さん

店主の外丸和廣さん