すぎなみ学倶楽部 特設コンテンツ
ぼくたち、私たちが聞いた すぎなみ人 とっておき物語
えらんでね
仕事 私が「この道」を選んだ理由
転機:私の生き方を変えた、あの時
世界:世界へ視野を広げると見えてくるもの
人生:今の私につながる、ちょっと苦い思い出
社会:人とつながる、地域に生きることの意味
歴史:遠い昔の杉並のお話
特別編・杉並第五小学校 インタビュー名人になろう
全インタビュー一覧
『本との出会いが私の人生を決めた〜都心に現代の書斎を実現したライブラリアンの物語』
2.ライブラリアン人生をふりかえって
  中学、高校、大学と、当然のように本とのつきあいを続けてきた。この道で“飯が喰えるか”なぞとを心配したことは全くなく、好きな本を相手にしてこられて楽しい人生だったと思う。

本とのつきあいを仕事にして一番の思い出は、慶応義塾大学教職時代の1996年、グーテンベルクの「四十二行聖書」を購入したこと。羅針盤、火薬の発明と共にルネサンス期の3大発明とされるグーテンベルクの活版印刷術は、ヨーロッパに一大メディア革命を巻き起こした。羅針盤は航海術を飛躍的に発展させ、乗り物の歴史を変えた。火薬は人力では動かせない巨大な岩石などを破壊することで、その後に街をつくることを可能にした。羅針盤と火薬の発明は偉大だが、活字の発明もそれらと比べて遜色ない。それは手書き文字と違い、活字なら理論的には無限にコピーを作ることができるから。翻訳は必要となるが、全世界70億人の人に同じ内容の本を読ませることが可能である。グーテンベルク聖書は、その象徴ともいえる存在で、1455年頃に印刷され、世界中で現存するのは48セットのみ。購入したのはその中の1冊で、非キリスト教国、そしてアジアの国が所有する唯一の本。購入価格は7.8億円! 非常に高価なものだが、最初12億円と提示されたものを3年がかりで7.8億円にまで下げた。過去100年間にグーテンベルク聖書を購入するという体験をした人はほとんどいないし、今後経験できる人はいないと思われる。

 ライブラリアン人生で小さな苦労はあるが、基本的に好きな仕事をしているから、苦労したという思いはない。


基本的に好きな仕事をしているから苦労したという思いはない・・・

3.澁川さんにとって本とは・・・
 ライブラリアンとして、ずっと本とつきあってきた私に「あなたにとって本とは何か?」という質問は医師に「あなたにとって命とは何か?」と尋ねているようなものだが、自分自身で気に入っている表現を使えば“living with books”となる。
「森羅万象」という言葉がある。現代風にいうと「環境」、つまり日常生活者を包む身の周りにある全てのものの意で、その中には人間関係など様々な物が含まれる。人は、その森羅万象、身の周りにあるものについて知りたいという欲求を持つ。子供が「これな〜に」と問いかけながら成長していくのをみると納得できる。そして、知りたい事に対して、自分なりに得た答えが「知識」となる。その分かったことを人に伝える際に、文字、写真、絵などを用いて記録を作る。それが本であり、本は私たち人間の森羅万象に対する認知・認識の結果のテキストであると考える。

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