●梅里二丁目町会の挑戦
 ▲梅里2丁目町会に住む幼稚園児が作った案内版。下には「タイガース」もつけられている。
「住んでいるまちを安心して暮らせる、犯罪のないきれいなまちにするのが、我々の念願ですから」 馬橋地区で生まれ育った梅里2丁目町会長 濱田謙一はそう話す。
2003(平成十五)年4月から行なわれた防犯パトロールによって、結束が強まった梅里2丁目町会では、2年間継続したという区切りの中で、新たな問題解決に挑戦することになる。それが、「カラス対策黄色いごみ袋」であった。
しかし、町会内の協力で担える防犯パトロールと違い、ごみ袋に関しては東京23区が定めている袋の規格基準がある。 「正直、最初にお話をいただいた時は、どうしようかな困ったなと……」 2004(平成十六)年4月、梅里2丁目町会から、カラスよけ効果があるという「黄色いごみ袋」を使用する実験をしたいので、協力して欲しいとの依頼があった当時、区の職員たちはそう思ったと話す。
「黄色いごみ袋」は、メーカーと「カラス博士」の異名を持つ宇都宮大学農学部の教授・杉田昭栄が協力して開発したもので、カラスの視覚に作用して、ごみ袋の中身を見えなくする特殊な成分を用いている。
当時は、炭酸カルシウム未含有で、しかも黄色という、東京23区推奨ごみ袋の規格外であった。それでも、東京23区清掃協議会での協議ののち、2004(平成十六)年8月から1ヵ月間だけの実験が認められた。短い期間ではあったが、実験の結果は良好。だが、メーカーのまとめでは、それが「黄色いごみ袋」の効果なのか、敏感なカラスが町会内の意気込みを感じて来なくなったのかわからないと、まだまだ慎重だった。 |
●きれいなまちにしたい――強い思いが区を動かす
▲半透明のごみ袋との比較実験時の写真
半年後、梅里2丁目町会は再び「黄色いごみ袋」が長期間使用できるよう区に働きかける。 「集積所が荒らされると、掃除当番の人がかわいそうだからね」
町会が、いろいろなカラス対策グッズの中から「黄色いごみ袋」を選んだのは、町会の予算に負担をかけず、誰もが手軽に利用できるからだった。杉田教授が以前に開発した唐辛子入りの「辛口ごみ袋」は何千円もするし、集積所に設置するカラスよけの網は当番の人の手間が掛かる。ごみは日常的に出るものだから、使い続けなくては意味がない。
第1回目の実験が終わり、「黄色いごみ袋」が使用できなくなった後も、町会内で工夫して黄色と黒のテープでネットを加工したり(町会内では「タイガース」と呼んでいた)、容器出しのフタに紐をつけて飛ばないようにしたりするなど、集積所をきれいに保ち、カラスが来ないよう努力を重ねた。
「それもね、防犯の一環なんです。空き巣なんかは、汚いまちに集まる。集積所が散らかっていたり、掲示板のポスターが風でビラビラしていたりするようなところは、狙われやすい。きれいなまちは、町会や地域の住人の結束が強そうだなと思って、やってこないんです」
町会の強い要望が区を突き動かし、2005(平成十七)年2月から8月までの半年間、町会での2度目の実験が認められた。町会長自らも調査に奮闘し、半年間全52回の定点観測を一度も休んでいない。
半年間の町会の調査では、対比被害率は黄色い袋が26%、半透明の袋が76%と黄色いごみ袋はおよそ4分の1の被害で済むという結果が出る。今後も検証を重ねる必要はあるが、おおむねカラスよけの効果は証明されることとなった。 |