●子どもたちのために良質なアニメを――。
 ▲DVDは、アミューズソフトエンタテインメントから発売されており、杉並区役所の「コミュかるショップ」でも購入できる。
ひと昔前までは、小学校低学年の子どもたちの情操教育につながるような短編のアニメも数多く作られてきた。しかし、良くも悪くも「売れる」アニメしか作られなくなった昨今、そういった作品はほとんど見ることができない。
杉並アニメ振興協議会が設立されたのは、2001(平成十三)年8月。第1回目の「アニメーションフェスティバルin杉並」が好評のうちに終了した同年4月、地域での絆を継続させたいとの機運が高まり、中小のアニメーション制作プロダクションが連携したのだ。設立した以上は、協議会でなにかを作りたい、子どもたちに良質なアニメを見てもらいたい。その思いから生まれたのが、「杉並アニメ フォア チルドレン」というブランドであり、第1作目の『サヨナラ、みどりが池』であった。その売上を回収し、2作目、3作目と作り続ける予定であったが、思った以上に状況がかんばしくない――。
『サヨナラ、みどりが池』の主人公はアマガエルのケロ吉。人間の都合で、住処の池を埋め立てられてしまう間際に、みんなで知恵を絞って脱出する物語だ。アニメーションのクオリティもさることながら、テーマ曲の「かえるのマーチ」は谷川俊太郎が作詞、谷川賢作が作曲し、声優も野沢雅子をはじめ実力派が揃う豪華な作品である。 「我々は技術屋ですからね、そうみっともないものは作れないですよ」
 ▲次回作の原作本である『ココロマメ』。区役所2階の区政資料室で販売している。 中川深森著 つじにぬき絵 /すぎなみ しあわせ文庫
そう語るのは、杉並アニメ振興協議会の会長・川本征平。東京ムービーの設立メンバーとして、古くから杉並区でアニメーション業界に携わり、「ドラえもん」などの人気アニメから「アルプスの少女ハイジ」といった名作アニメまで数多くの作品の美術設定や背景、美術監督を務めた。 「まあ、作品は腐りませんから。どこから評判になるかわからないので、できるだけ品の良い作品を今後も作り続けたい」
現在、杉並アニメ振興協議会は、杉並区役所の児童課とともに次回作を制作中。3年ぶりの新作は、家族愛やいのちの大切さがテーマとなっており、7月に予定されている公開が楽しみである。 |
●他の地区や団体ともパートナーシップを築く
 ▲パラパラアニメを作成するワークショップに参加したカップルの様子。年齢や国籍を問わず、さまざまな人が楽しめる内容となっている。
杉並区が2001(平成十三)年に「アニメーションフェスティバルin杉並」を開催し、さらには2005(平成十七)年、「杉並アニメーションミュージアム」をオープンしたことによって、国をはじめ各近隣地域や都道府県でもアニメーションを産業として振興していこうという動きが強まっている。どこまでそのきっかけとなったかは不明だが、少なからぬ影響を与えたことは確かだ。
現在、杉並区産業振興課では、財団法人デジタルコンテンツ協会と連携して、中小企業診断士による中小のアニメーション制作プロダクションへの出張ヒアリングを行なうなど、中小企業の経営安定化を目指す新たな支援策を模索している。 また、杉並アニメ振興協議会の会長である川本征平は、2007(平成十九)年に昼夜間定時制となる都立荻窪高校の選択科目、「アニメーション基礎」のカリキュラム作成を担当。 「どんな子が来るかわからないけど、僕も絵を描くのが好きでずっとやってきたから。クリエイティブなことは、どんなところで才能を発揮するか未知数。楽しみです」と語っている。
ミュージアム館長の鈴木伸一も、国のアニメーション関連施設の設立計画や「ぎふ次世代アニメ研究会」(岐阜県)にも参加。今後は、他地区の各団体との連携もキーワードとなっていきそうだ。杉並区のみならず、日本全体が文化としてアニメーションを振興し、人材を育て、「アニメの杜」となり、これからも世界に誇れる作品を生み出し続けてくれることを期待したい。
(取材協力・杉並アニメ振興協議会 会長 川本征平、杉並アニメーションミュージアム 館長鈴木伸一、杉並区役所 区民生活部産業振興課田口昌実(五十音順))
|