すぎなみ学倶楽部 特設コンテンツ CLOSE 閉じる
著名人に聞く 私の杉並一番
     

第1回 泉麻人さん第2回 三善里沙子さん第3回 大地丙太郎さん 第4回 長崎宏子さん第5回 押阪忍さん

本コーナーに記載する原稿著作権利は制作者に帰属します。いかなる場合も複写、転用、流用は堅くお断り申し上げます。
本コーナーに関するお問い合わせは下記までお願いします。

すぎなみ地域大学事務局
杉並区成田東4-36-13
電話03-3312-2381

 
私の杉並一番
第四回 長崎宏子 さん

京王井の頭線の久我山駅とおとなりの富士見ヶ丘駅を結ぶ線路の南側を流れる神田川沿いに、こじんまりとした遊歩道がある。自転車で通勤する方、早朝のジョギングに励む方、川を泳ぐ鯉や水辺に遊びにくる鳥を観察にやってくる幼稚園や保育園の子どもたち。それぞれが、それぞれの思いと目的を持ちながら、通る道。そこが『私の杉並一番』である。

十年前にここ杉並に住居を移してから、主人と共に運動不足解消のためにとよく出かけたウォーキングルート。互いに田舎育ちで、都会の空気はあまり吸いたくない…という思いがどこかにあったが、早朝や休日の遊歩道は不思議なくらい空気が澄んでいて、川の対面の濃い緑からは、何とも言えない香りが漂う。マイナスイオンが肌に優しい。

途中、新鮮なお野菜がずらりと並び、価格もうれしいと評判の八百屋さんがあった。寄り道をし、ついつい大量に野菜を仕入れるはめに。身軽で出かけたウォーキングなのに、なぜか帰り道は、野菜という『負荷』を体にいっぱい受けながらのウォーキングになってしまう。が、それがまた、「食べること大好き夫婦」の私たちには楽しかった。あの八百屋さんがなくなってしまったときはかなりショックだった。

週末は娘たちとの遊歩道になる。遠出をする予定もなく、だらだらと過ごす日曜日。それなら散歩にでもでかけようと向かう先はいつもこの遊歩道。自動車や暴走自転車の危険を心配する必要のないこのルートは、母親にはうれしい。

赤ん坊の頃は、ベビーカーに乗せてぶらりと。少し歩けば娘たちは決まって心地よい眠りに入ってしまう。母親であることの幸せをたっぷり感じたお散歩ルート。

長女が小学生になってからはマラソンのトレーニングルートにもなった。校内マラソン大会で「勝ちたい!」という娘。親として何ができるか考え、実行したのが朝練習。親として、それくらいの応援をしなければ。大会当日に「がんばれ〜!」と大声を張りあげる応援は、あまりに普通。普通のことはしたくないという偏屈者の私。「ママと一緒に走ろう!」 とは言え、私は水中専門アスリート。陸の上はちょっと苦手。少し走れば息が上がってしまうから情けない。途中、ウォーキングを交えながらのジョギングになってしまったが、娘と共に、学校のこと、友達のこと、いろいろな話をし、同じ目標に向かって走り、母子の絆が深まったマラソンルート。さてその練習の成果は?スポーツの厳しさを良く知っている母にも、娘の涙には、どう慰めてよいかわからなかった。「ママ、また来年も一緒に朝練習してくれる?」そう言われて「うん、うん。」と涙が出た。

今は、家族の絆を深めるおしゃべり散歩道。三姉妹の母となり、右手を次女と、左手を三女とつなぐことが多い。だから私は、時々自分から長女の手を握る。今はもう10歳に成長した長女は、少し照れる。そして私も。でも、手を握るだけで、この子の気持ちが伝わってくるような気がする。今、どんなことに悩み、どんなことをうれしいと感じているのか、わかるような気がする。そして長女もまた、私の気持ちを察しているのかもしれない。次女も三女も、危険でもないのに、やたらと母親と手をつなぎたがるのは、肌の触れ合い、気持ちを通じ合わせたい、そんな思いがあるからかもしれない。いつまでもこんなスキンシップができたらいいな…と温かな気持ちになれる散歩道。

いつか娘たちが散歩する余裕もないほどそれぞれの生活に忙しくなってしまったら、また主人と手をつないで歩きたい。そのときは、運動不足解消なんていう目的はいらない。ただ肩を並べ、ゆっくりゆったりとした足どりで、二人の人生を語りながら、杉並の季節の変化を、そして時の流れを感じたい。幸せいっぱいの散歩道にしたい。

東京なんて人がたくさんで、住みにくいところ。今も実家の両親はそう思っている。でも、杉並は違う。子どもたちとともに季節を感じることができる。静かな時が流れている。初めはなんとなく住み始めた杉並。今はもう、杉並から離れられなくなってしまった。もっともっと杉並のことを知りたい。もっともっと素敵なところがたくさんあるはず。私の知らない杉並のこと、きっと『すぎなみ学倶楽部』が教えてくれそう。みなさんも、『すぎなみ学倶楽部』に参加してみませんか?

元五輪スイマー
スポーツコンサルタント
長崎宏子



このページの先頭へ