    
本コーナーに記載する原稿著作権利は制作者に帰属します。いかなる場合も複写、転用、流用は堅くお断り申し上げます。
本コーナーに関するお問い合わせは下記までお願いします。
すぎなみ地域大学事務局
杉並区成田東4-36-13
電話03-3312-2381
|
|
 |
第一回 泉麻人さん
|
善福寺川の近くに住んでいる。もう十年余りになるけれど、日々散歩する川沿いの環境が気に入っている。ここに越してきたとき、まず澄んだ川の流れに感心した。もっとも、奥多摩あたりの谷川と比べたら、水質は遥かに劣るかもしれないが、川底をつぶさに眺めていると、時折ザリガニがもそもそと動く姿を見ることもある。夏の盛りの頃には、川の上をギンヤンマが往ったり来たりしていてることもある。ヒヨドリやムクドリ、ハクセキレイ・・・といった野鳥の数も多い。美麗なカワセミの姿も、これまで何度か目撃した。(カラスが一番多いのだけど・・・)
川沿いに、緑豊かな公園(善福寺川緑地、和田堀公園)が広がっているのもいいけれど、善福寺川の大きな魅力は、くねくねと湾曲した川筋だろう。わが家の近くはとりわけ袋状に曲がりくねった流域なので、歩いていると一瞬方向感覚を失う。これが面白い。目印にしていた高井戸の清掃工場の白い煙突が、おや?と思うような方角に出現する。下流の方に歩いていくと、カーブを切った川の先に忽然と新宿の高層ビル群が姿を現したりする。
とはいえ、かつてはこの蛇行する川筋のせいもあって、流域ではしばしば水害をこうむった・・・と聞く。和田掘池やその並びの釣り堀の池は、そもそも洪水によって生じた沼だったという。古い写真集などに記録された、護岸以前の川の景色を眺めると、ふとそんなのどかな時代にタイムスリップしてみたいものだ・・・と思ったりするけれど、まぁそれはいたしかたないことだろう。深く掘りこまれて、石積みの護岸が施されたものの、大雨が降った翌日などは岸の淵から水が湧き出している光景を見る。これも周囲に雨水を吸い込む豊かな緑地が確保されているからに違いない。
善福寺川とその周辺の緑地・・・都心にしては上出来の環境、と思っているが、少しわがままをいわせてもらいたい。たとえば、初夏の頃になると、護岸の一面にみるみる雑草が繁る。田舎の川景色のまちで気に入っているのだが、あっという間に電動ノコで刈られてします。あれはなんとも惜しい。それから、公園のなかに敷かれたアスファルトの径も、ここが下草の生えた土や砂利の路面だったらもっと風情がでるのに・・・と思うような箇所がいくつかある。無論、小虫が湧いたり、ぬかるみで靴が汚れたり・・・といった多少の不便はでてくるのだろうが、一考の余地はあると思う。
杉並区の中心を横断する善福寺川、今後いっそう、他区の人がうらやむ素晴らしい川になって欲しい。 |