株式会社 小泉

住宅設備や管材など、住まいに関するさまざまなものを扱っている(写真提供:株式会社 小泉)

住宅設備や管材など、住まいに関するさまざまなものを扱っている(写真提供:株式会社 小泉)

明治創業、日本人の住環境を見つめる荻窪の老舗企業

JR荻窪駅から東の方向を仰ぐと目に飛びこんでくる「小泉」の看板。1910(明治43)年創業、1947(昭和22)年設立の老舗企業「株式会社小泉」は、住宅設備の流通企業として発展してきた。
明治時代末期、山梨出身の小泉直哉によって創業された「小泉直哉商店」は、関東圏に数店舗の支店を持ち住宅設備の鉄鋼・管材の販売企業として一つのブランドを確立。杉並区周辺には、この流れをくむ企業がほかにもある。
初代社長に就任した長坂保氏(現社長大伯父)は、長年「小泉直哉商店」に従事し、住宅設備資材の販売事業で手腕を振るった。終戦後、住宅産業の発展と可能性を見い出し、1947(昭和22)年4月に「株式会社 小泉商店」を杉並区天沼に設立。10年後には二代目の長坂勉氏(現社長祖父)が就任し、1969(昭和44)年に「株式会社 小泉」(以下、「小泉」)と改称した。
2016(平成28)年に、現在の四代目・長坂剛(ながさか ごう)氏が社長に就任し、長きに渡り杉並区を拠点に、東北から東海にかけ広く営業展開している。

荻窪にある「株式会社 小泉」本社

荻窪にある「株式会社 小泉」本社

前身の「株式会社 小泉商店」は、現在の本社近くにあった(写真提供:株式会社 小泉)

前身の「株式会社 小泉商店」は、現在の本社近くにあった(写真提供:株式会社 小泉)

住環境を見守ってきた「住宅設備の総合商社」

戦後およそ20年間は、日本人の生活感や住環境が著しく変化した激動の時代だった。区を含む東京西部も戦火の影響から施設や住宅がどんどん改築・新築され、住宅環境も変化していった。「小泉」の取り扱い製品も、1950(昭和25)年頃は手押しポンプや水栓金具など細かな生活必需資材が主流だったが、昭和50年代には手動から自動(電動)へ、そして生きるためだけでなく快適に暮らすための製品へと変遷する。
「小泉」は、時代ごとの「住」に関するニーズを察知し、豊富な品ぞろえで市場の要望に対応することをビジネスモットーの一つとして成長してきた。「株式会社 小泉商店」の設立から70周年を迎えた2016(平成28)年以降も、「住宅設備の総合商社」として、時代の変化にいち早く対応しながら、あらゆるニーズに柔軟に対応することを心掛けている。

社外誌「泉」。バックナンバーを見ると、各時代の取り組みがうかがえる(写真提供:株式会社 小泉)

社外誌「泉」。バックナンバーを見ると、各時代の取り組みがうかがえる(写真提供:株式会社 小泉)

かつての感謝セール、研修会の様子

かつての感謝セール、研修会の様子

さまざまな形で「住」環境の向上に貢献

2021(令和3)年、「小泉」は100箇所を超える国内営業拠点の他に、中国や台湾など7箇所の海外拠点、国内関連会社8社を有する企業に成長した。2万2,000社以上の顧客を抱え、25万種類以上の商品を取り扱っている。
現社長の長坂剛氏は、これまでの軌跡について「それをやろうと決めて事業が展開したケースはほとんどなく、本業に力を入れていく中でご縁があり始まった事業が発展し、現在まで展開することができた。オーナー企業の強みである意思決定のスピードを生かしながら“快適で環境にやさしい住まいづくり”を目指し、今後もさまざまな挑戦をしていきたい」と語る。
また、高価格帯の設備機器に特化した建設事業も展開し、台湾製ユニットバス「PUDA」(プダ)とドイツ製システムキッチン「allmilmö」(アルミルモ)といった海外ブランドと提携し、15年以上にわたり日本で販売を手掛けている。
国内関連会社の1つ「株式会社田無タワー」は、2021(令和3)年に傘下となった。西東京市に地上高195mの電波塔を保有し、運営する企業だ。電波塔には防災行政無線やコミュニティエフエム放送のアンテナが付いており、通信インフラを担っているほか、地元のランドマークにもなっている。本業の住宅関連商材の卸売りとは違うアプローチで地域の住環境に深く関わる一社である。

中国にある「南通小泉機電有限公司」。主に鋳造品の製造加工を行っている(写真提供:株式会社 小泉)

中国にある「南通小泉機電有限公司」。主に鋳造品の製造加工を行っている(写真提供:株式会社 小泉)

中国での鋳造品の製造加工のきっかけは、商材としてマンホールを扱ったことだという(写真提供:株式会社 小泉)

中国での鋳造品の製造加工のきっかけは、商材としてマンホールを扱ったことだという(写真提供:株式会社 小泉)

取り扱い製品の一つ、台湾製ユニットバス「PUDA」。国内のラグジュアリーホテルなどで利用されている(写真提供:株式会社 小泉)

取り扱い製品の一つ、台湾製ユニットバス「PUDA」。国内のラグジュアリーホテルなどで利用されている(写真提供:株式会社 小泉)

「スカイタワー西東京」とも呼ばれる電波塔(田無タワー)。荻窪タウンセブンの屋上からも見える

「スカイタワー西東京」とも呼ばれる電波塔(田無タワー)。荻窪タウンセブンの屋上からも見える

新たなシステムと環境事業

2003(平成15)年、専門業者に建築設備関係の材料や消耗材などを販売する「プロストック」というプロ職人向けの店舗を開設。国内に21店舗を展開している(2021年4月現在)。年中無休で営業時間も長く、常時1万5,000種類以上のアイテムをそろえている。また、2019(令和元)年より顧客がパソコンやスマートフォンから注文できる発注システム「K-Mobile」も導入した。
近年は、災害復旧に対応した機材の開発・販売や、住宅の省エネルギー対策のためのコンサルティングなど、環境事業にも積極的に取り組んでいる。専門部署を設置し、技術面でのサポートはもちろん、補助金の活用などニーズに合った提案もしており、丁寧な対応が顧客に喜ばれているそうだ。

▼関連情報
プロストック(外部リンク)

プロの職人向け店舗「プロストック」(写真提供:株式会社 小泉)

プロの職人向け店舗「プロストック」(写真提供:株式会社 小泉)

「K-Mobile」の画面。24時間いつでも発注できる(写真提供:株式会社 小泉)

「K-Mobile」の画面。24時間いつでも発注できる(写真提供:株式会社 小泉)

「散歩をすると見えるものが違ってくる」

長坂剛氏は先代からのバトンを受け継いだ後、新事業や海外事業のほか、ITの活用などにも精力的に取り組んでいる。「創業の地である杉並区で事業を続け、100年企業を目指せることに感謝の気持ちを抱いています」。プライベートでは、朝に1時間ほど善福寺公園や大宮八幡宮の周辺など約9~10Kmを、ランニングや散歩をしているという。「先日は大宮八幡宮周辺で野生と思われるスッポンを発見しましたし、カルガモの繁殖を見かけることもあります。歩くとまた見えるものが違ってきますね。杉並は自然が多いので、歩いても走っていても楽しいエリアです」
充実した職住一体の暮らしを体現している長坂剛氏のもと、「小泉」は今後も業界のリーディングカンパニーとして、グローバルかつ多角的な事業展開を続けていくだろう。

生まれも育ちも杉並の現社長・長坂剛氏(写真提供:株式会社 小泉)

生まれも育ちも杉並の現社長・長坂剛氏(写真提供:株式会社 小泉)

DATA

  • 住所:杉並区荻窪4-32-5
  • 電話:03-3393-2511
  • FAX:03-3393-1240
  • 公式ホームページ(外部リンク):https://www.koizumig.co.jp
  • 取材:矢野ふじね
  • 撮影:矢野ふじね
    写真提供:株式会社 小泉
    再取材日:2021年06月21日
  • 掲載日:2012年06月28日
  • 情報更新日:2021年08月23日