運動会のプログラムは永遠だ

組み立ての基本は学年ごとに個人競技と団体競技

小学校の運動会というと、玉入れ、リズム体操、台風の目、大玉送り、騎馬戦、組み体操、徒競走、リレー・・・わりあい、どこの学校も同じ。
基本の組み立ては、各学年に個人競技と団体競技をひとつずつ、それに「表現」という演目が加わり、大玉送りのような全学年参加しての紅白別団体競技、PTA企画協賛競技、学校によっては未就学幼児競技がある。
「運動会の目的は子どもたちの成長や体育授業の進捗をみていただく場ですから、学年ごとにふさわしい競技は自ずと決まってくるわけです」取材をした小学校の校長・副校長は異口同音に答えてくれた。確かに一年生にできる競技は限られている。
でも、さあ、そこからだ。
各校運動会担当の先生たちの企画力と子どもたちの個性が現れるのは。

変化は時代と共に「表現」~ 先生、今年は何にする?

各学年でいちばん工夫するのは団体で行う身体表現の演目。だいたい一年生がリズム体操、二年生創作ダンス、三年生・四年生が民族舞踊や創作ダンス、五・六年生が民舞や組体操を行う。文部科学省の「学習指導要領」にある「表現」という体育指導のポイントのひとつだ。
各学年の先生が昨年のプログラムと照らして、曲や内容をときには子どもの意見も入れて工夫している。団体行動になれていない低学年は、アニメやNHKのみんなのうたの曲など耳慣れた曲でやる気を誘う。
三・四年生に多い民族舞踊民舞を例に取ると、古くから人気があるのが花笠音頭。これは、華やかな花笠の持つ魅力だろう。10年ほど前からみられるようになった激しい振りが魅力のよさこいソーランに、バチを持って踊る変化が魅力のエイサー、あちこちに『連』のある土地柄から阿波踊りなどが杉並区でよく見られる民舞だ。このほか、洋楽や人気の楽曲を使う年もあるという。「民舞と洋楽の創作ダンスを一年交代でプログラムに載せる」学校もあれば、「地域祭に運動会と同じ演目で出演するので民舞」という学校など、さまざま。
先生が学年ごとの発達と限界を勘案しつつ、振り付け・衣装・道具をデザインして手配するのだから、頭が下がる。

ウチの学校の自慢の競技、珍プログラム

かつてたいていの小学校にあったPTA参加の徒競走やリレーがすっかり姿を消したのはなぜでしょう?
「ねえパパ、足速かった?」
「ああ、いつも運動会じゃ一等賞だったぞ」
「ほんと? じゃあ、明日の運動会、パパが一位だね!!」
という会話があったかどうか。
運動会で保護者が走るレースが消えたのは、いい大人のケガがあまりに多かったからだそうだ。
筆者も10年ほど前、某小学校運動会観覧中に、PTA参加のリレーで転んで結構なケガをしたパパさんを目撃している。毎年、盛り上がった競技だが、それだけに出場するパパママはやる気満々で、大人げないデッドヒートを繰り返した上の事故だった。
救急車でカレは運ばれていき、その競技は翌年からなくなった。

万国旗がない運動会

暑運動会といえば、ぽんぽんあがる五色の煙花火、蒼天にはためく万国旗。
しかし、最近は花火は上がらず、万国旗のかかっていない運動会もあることにお気づきだろうか。
運動会に万国旗という習慣は、「日清戦争」で大国中国に勝利した日本が、万国旗を飾ってお祝いしたところに始まるらしい。運動会も軍事鍛錬的な要素とお祭りムードがあつたため、運動会には万国旗がつきものになった。戦後も遠くなりつつある昨今、かけていない小学校に尋ねると「何年か前からかけていないが理由はとくにない」「他校の校庭を借りて行っているので飾り付けができない」「子どもの描いた旗を飾っている」などなど理由はさまざまだ。
学校へ万国旗を販売している店舗に問い合わせたところ、「とくに小学校への納品が減ったという認識はないけれど、外国人に対する配慮ではないか?」という意見があった。
確かに、現在杉並区立小学校に通う子どもたちは国際色豊か。万国旗に表れる国は、少ないところで7~8国の連続、多くても20か国連続。一方日本が承認している国は193カ国(2008年3月現在)になる。国際化の進む小学校で、もう万国旗の世界は狭いのかもしれない。

DATA

  • 取材:富樫明美
  • 掲載日:2008年09月25日